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地下51階の強敵

転生9日目の朝、訓練前に、ハナが人型で戦う際に使うための武器を作った。


昨日地下50階で肉食巨竜を倒した時に出現した宝箱から、ミスリルの剣を入手して

いたので、俺の気結晶を使って、火、水、地、風、雷、氷、光、聖、理の9属性を

付与した魔道具剣に作り変えてみた。闇属性だけは外して置いた。

ハナの雰囲気に合わないし、なんか悪影響ありそうな気がするから。

どうも、剣自体まだ上手く使いこなせていないけど、、、まあ少しずつだね。


そして、ハナにはより原始的というか本能的な武器の方が合っているので、手拳の

威力を増すカイザーナックルを、ミスリル短剣を鋳つぶして、火と雷の属性だけ付

与して作成した。様子見で色々試すのだ。



朝食前に、もう一度地下50階で訓練。

汎用銃粒子砲の機能を実地で試射した。これは陽子や中性子を高速で飛ばすものだ。

貫通系で相当の威力がある。

俺の他の類似武器との差異としては、光操作で発するレーザー照射が光速の秒速

30万キロで熱メイン、粒子砲が秒速3000キロで物理衝撃と熱を併せ持つ、

理力弾が秒速600m即ちマッハ2で、物理衝撃メインという棲み分けだ。

ちなみに、地球での拳銃弾の初速がマッハ1、ライフル弾の初速がマッハ2程度だ。

理力弾はライフル弾と同程度だが、ライフル弾と違うのは、空気抵抗により弾速が

落ちないというところか。


話しが細かくなったが、ともかく、粒子砲の威力は凄い。

気量1の標準弾で、頑丈な恐竜型獣のどてっぱらに大穴を開ける。

反物質爆縮と異なり、威力の範囲限定はないが、その威力自体は上回っている。


出力を気量2、3と上げて行くと、威力も2倍、3倍と増大して行き、どてっぱら

の穴が大きくなると共に貫通力も高まっていく。

かなり大きな敵でも気量10もあれば十分な感じに思われた。

あ、再生対応の敵は別だけどね。


ハナの9属性剣の扱いは、うん、まあまあかな。

カイザーナックルは剣よりもうまく使っていた。

ハナは素手の拳でも通常の敵相手なら粉砕するけどね。


なお、強い敵相手だと狼型だから、武器は今のところ汎用銃しか使えない。

「狼型のときは、カチューシャタイプじゃない方がいいんじゃないかな」

「やだ」

まあ、本人の好きなようにやらせよう。


そうこうして、訓練を一巡し、再度、地下51階へ向かう際の危機感知の感触を

確かめる。

昨日感じたのよりは、随分ましにはなっている。が、それでも危機感知はあった。


俺達、昨日よりだいぶ強くなったんだけどね。

単純な数値や装備によっては、計り切れない強さを持つ相手なのかも知れない。



宿へ転移して、休憩と朝食。

「はー、緊張する。今日は大怪我したり、死んだりするかもなー」

「いったん死んでも再生はすると思うけれど、危険なようなら退却だジョ」

「そういえば、亜空間の避難所への退却は、準備はしたけど、実戦中に実行した

ことはないもんね」


「死んだらどうなるのー?」

「うーんどうかな?『ハジメよ、しんでしまうとはなさけない』とか言われるのか

もな」

「何それ?ハナはそんな事言わないよ」

ぷぷぷ、俺はハナに言ってみたい気もする。

「恐竜達を見てると、致死性のダメージを貰ってもその場で直ぐに再生して復活し

ていたから、単に怪我の程度が大きいだけくらいの感覚ではないかと思うけれど、

こればっかりは実際死んでみないと分からないジョ」



さて、そうこうするうち、いよいよ出陣!

地下50階から、危機感知の警告を感じながら、それを無視して地下51階へ降りた。



ここは?


暗闇。何もない。空気も重力も光もない。宇宙空間?


「やっと来た。待ちわびたよ。ここはシンプルな虚無空間だ。僕の趣味だよ」

チリチリと危険な雰囲気を纏うそいつが言った。


なんというか、セミの幼虫を人型にして鳥っぽい頭を乗っけたような感じで、雰囲

気は子供だ。ひらひらした布を体に数回巻き付けたような服装をしている。


「僕はセヌエフ、強者の階層である51階以降で、君達と最初にまみえることができ

て嬉しいよ」

生意気な子供だ。あ、人のことは言えないか。

「あたしはハナよ」

えと、自己紹介する必要があるのかな?

「お、俺はハジメ」


「知ってる。僕、君達のこと気に入ってるんだ。この先何度か戦いたいと思ってる

から、こんなところで僕に殺されるような真似をして、がっかりさせないでくれよ」

「あんたは、あたしとハジメがこれから倒しちゃうからこれっきりよ!」

「ふー、君達は何にも分かってないね。ここは迷宮。僕は迷宮側だから仮にここで

倒されても、ぴんぴんして復活するよ。君達は迷宮の力での復活はできないけどね」

はぁ?なんだかよく分からないことを言ってるぞ。


「俺たちはお前を倒して先へ進むからもう会うことは無いと思うけど」

「いやいや、だ、か、ら。ここからは強者の階層だから、僕も何回かは登場するよ。

ここは51階だから制約も大きいけど、もっと下で会ったらもっと強いから。

51階の僕がホントの僕だと思うなよ」


どうも、今51階に出場しているけれど、死んでも復活し、今後下の階でもっと強

くなって、今回の記憶を所持するセヌエフ個人として、再戦すると言いたいようだ。


「何だかよく分からないけど、倒される覚悟をしているようだから、こっちは遠慮

なく行くぞ!」


汎用銃ハンドガンタイプで粒子砲を撃った。

軽くかわされる。この弾速を躱すのか。


間合いを詰めよう。まっすぐ突っ込む。足場のない虚無空間なので前方に重力場を

作って自分を引き寄せながら前進する。

ハナは詰めながら側面に回り込んでいる。狼型をとって、天翔を発動している。


俺は前進しながら反重力爆縮弾を撃つ。セヌエフはすっと体を前に進めて反重力弾

の焦点を外す。むぅ、敵ながらいい判断だ。反重力弾は、2線が交わらないと威力

がゼロなのだ。それなら、反重力弾の焦点を手前にずらしながら数発徐々に出力を

上げて撃ち込む。ハナが側面から粒子砲を薙ぐように掃射する。いいぞハナ!


セヌエフが消えた。と思ったら俺たちの頭上に転移している。

「まだまだだねえ。もっと強くなってもらわないと」

こんのぉ、大きなお世話だ!


奴に光操作のレーザーを撃ち込む。これも身をひるがえして回避された。

光速を回避できるはずがないので、レーザーを撃ち出す前に、その射線を察知して

いるということだ。


奴の周囲一体を火炎の霧で包んでやろうとしたが、魔法の発動を阻害された。

阻害を排除しながら再度発動、今度は成功した、と思ったら火炎霧の領域外に転移

している。

奴の行動の速さについて行けない。

発動の遅い魔法はダメだ。強制大煉獄なんてダメダメだ。


ハナは側面や背後に移動しつつ攻撃するが、それらもあっさりと躱されている。



「そろそろこっちからも行くぞ」

セヌエフの両手に鞭が出現した。左右で色違いだ。雷と氷の属性の鞭だ。

鞭が繰り出される、速い、特に先端部の速さは尋常じゃない。

しかし、こっちだってそれくらいなら回避できる。

そして、鞭の基点となっている奴に向かってレーザー照射。

ハナも同じことを考えて粒子砲を撃っている。


む、危機感知!そして危機対応。世界が止まったようなこの感じ。

目の前に雷の鞭の先端部がゆっくりと迫ってきている。え、これは何だ!

基点となるセヌエフの姿は先ほどまでとは、別の地点にある。


振るっている際中の鞭ごと転移したんだ。

そして本体はこちらの攻撃を回避し、奴の鞭は速度を保ったまま俺の目の前に転移

したということか。

攻防一体の巧みなというか、極めて厄介な転移だ。


加速モードで何とか致命傷は回避するが、右耳の上半分が千切れた。

魔法耐性極を発動しているのに電撃でくらくらする。

まともにヒットすると非常にまずい。

時間操作で少し周囲の時間の流れが遅くなっていると思うが、それでこれだ。

時間操作をもっと意図的に発動できればいいのに。


あ、ハナの左足の一部が氷の鞭でもって行かれた。


『ハナ大丈夫か?』

念話で聞く。

『なにが?』

気が付いていない。集中仕切っているな。ハナは高速でジグザグに回避しながら

汎用銃を乱射している。

足の欠損部はもう既に再生されている。

俺の耳に触ってみたら、そこも再生していた。


セヌエフの鞭の攻撃は速い。そして攻防一体の巧みな転移によって、ただでさえ速

い鞭の軌道が読めず、こちらの体の至近に突如現れるため、完全に回避するのが困

難だ。

俺もハナも少しずつ体を削られて、その都度再生で対応している状態だ。

天翔を発動して機敏なハナよりも、足場の不安定な俺の方が危うい。

かろうじて危機対応発動でかわすが、何発かは喰らってしまっている。



ここまで手合わせした感じでは、気の力も含めた身体能力的には俺とハナがセヌエ

フを上回っていると思う。個々の攻撃の威力も俺達が上だと思う。

なのに2人掛かりでも旗色は悪い。

これは、奴の転移の巧みさと、俺たちの攻撃が読まれてしまっていることによる。


「どうする?いったん引いて出直す手もあるジョ」

「いや、まだやれる。もっと色々試してみたい」


そうだ。手詰まりだけど、こっちも追い詰められているわけではない。

まずは、俺の移動をもっとましにしたい。


重力操作だけでなく、空気操作も併せてみた。真空状態の虚空に、空気を発生させ

て体を移動させる。できた。空気は早々と散逸してしまうが、真空中でも空気を

利用して移動できる。むしろ抵抗が無くて速いくらいだ。空気ごと運ぶというよ

り、空気の圧力で体を押す感じだ。

そういえば宇宙飛行士はエア噴射で船外移動していたな。


そして俺だって空間操作ができるのだから、戦闘中にも転移できるはずだ。

次にこれをやってみよう。


俺の転移は、未熟で発動までもたもたしてしまうが、重力操作や空気操作で動きつ

つ、それにプラスする形で転移を発動してみた。

うん、セヌエフほどのキレはないが、確かに俺の動きは前より良くなったぞ。


「ふふん、少しは考えて来たな」

ちっくしょう、奴はまだまだ余裕だ。


でもいいのだ、実力差を素直に認めて、胸を借りて稽古させてもらおう。

一応だけど命を懸けて。

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