快進撃
早い早い!
俺とハナ合作の強制大煉獄は、迷宮地下30代階層との相性が抜群によかった。
各階層、魔法一発、敵を全滅させ、見渡す限りの溶岩の海、その後ガラス質の平地
が創造されるいうワンパターンで、面白いように先へ先へと進む。
煉獄後に生存できる敵が一匹もいない。
個別戦闘は、新階層に侵入した直後上空に滞空している際に、アンデッドのドラゴ
ン1体が飛来したその1回だけだった。
アンデッドドラゴンは俺の聖光奔流の一発で撃破。
直後に気量を回復した俺に、ハナが魔法アシストを合わせ、強制大煉獄を一発発射
して、終了。
なんとまあ、簡単なお仕事と申しますか。
この調子で地下40階まで快進撃を続け、地下40階を攻略し終わった時、
ハジメはレベル20になった
ハジメはギフト再生を得た
ハジメはアンデッド悪夢の天敵の称号を得た
ハナはレベル20になった
ハナはギフト天翔を得た
「やったやったー」
ハナが嬉しがってぴょんぴょん跳ねる。
ハナは見た目こそ10歳程度だが、なんせまだ生後2か月にもならない子犬とい
うか子狼。
まだまだ幼く、言葉が操れるだけでも凄いのだ。
精神年齢が15歳の俺からすれば、幼い妹的存在なのだ。
そのハナが最近よく言うのは、
「ハナはハジメのお姉ちゃんになるんだからね」
はぁ、俺の見た目が5歳だからなあ。困ったもんだ。
「ハジメも新しいギフトおめでとうだジョ。これでギフトポイントも51だジョ」
「新しいギフトの再生って何?自然回復や蘇りとはどう違うのかな?」
「自然回復は、時間経過に伴ってハジメの生命力を回復させるもので、四肢欠損
などは対応できないジョ。再生は、ほぼ瞬間的に全ダメージをゼロにするもので、
四肢欠損にも対応するジョ。自然回復は、ハジメが意思が消失してしまうと停止
するけれど、再生はハジメのDNAさえ残っていればもとどおりのハジメに戻れ
るジョ。そして、蘇りは、再生不能の完全死亡状態と判定された時に、発動され
るものだジョ」
「なるほど、俺は随分死に難くなったもんだなー。蘇りは、一度限りで、しかも
完全再現が必ずしも保障されるものじゃないけどね。
心配なのはハナだよな。ハナもギフトが再生だったらよかったかなあ」
「ハナは次に再生が貰えるように頑張る」
「良い子にしていれば貰えるかも知れないね」
「うん!」
「ところでハナの天翔って、どんなギフトなんだろう?」
「こんなんかなあ?」
ハナは普通に空中を歩いていた。
「おお、そういうことか。天を翔ける。どこまで行けるのかな?」
周囲を驚かすとアレなので、俺ともどもハナを透明化してから、
ハナに乗っかって、空中散歩してみた。
結果、どこまでも行ける。成層圏近くまで行って、空気が薄いので下りてきた。
「うっわー、凄い凄い。凄い楽しい!」
ハナは3次元的存在になった。鳥類以上に、空で普通に振舞える。
「なんかね、世の中が分厚くなったよ」
「人型でも天翔を発動できるのかな?」
「できるー、おんなじー」
あ、ハナ、人型で天翔使う時は、スカートはNGね。特にミニは。
空中散歩で夕焼けを見ながら、夕飯食べて、亜空間で夜の訓練を一通りやって、
本日はこれで終了。
「今日も充実の一日だった。死合で感謝されたし、迷宮で無双の快進撃したし、
ギフトも貰ったし」
「一日でこんなにレベルアップしたのは凄いことだジョ」
冒険者ランクはいつの間にかAになっていた。
異世界7日めの夜時点のスペックはこんな感じ。
レベルアップが連続したので凄い数値になっている。
ハジメ 人族 5歳 レベル20
称号 迷宮の申し子
職業 冒険者
装備 上質ローブ 軽快靴
基礎値 筋力1.2億/敏捷性1.2億/生命力39億/気力2.9億/気速2.9億/気量191億/活力7800
攻撃力 1.2億+2.9億(理力)=4.1億
防御力 1.2億+2.9億(理力)=4.1億
備考 アンデッド悪夢の天敵
冒険者カード
氏名 ハジメ ランクA 8級
種族 人族
年齢 5歳
レベル 20
ギフト ハジメ ポイント51
式神 再生 を追加
ハナ 獣族 貴人狼(進化種) 1か月 レベル20
称号 迷宮の申し子にしてハジメの相棒
職業 冒険者
装備 なし
基礎値 筋力3億/敏捷性4億/生命力20億/獣力1億/獣気速1億/獣気量10億/活力20万
攻撃力 3億プラスα
防御力 3億プラスα
備考 サイズ変更化 念話 人化
ハナ ギフト
魔法アシスト 天翔
翌朝、訓練を一巡させて、はる屋で朝食をとりつつ、思い付きで提案する。
「あのさ、旅に出てみない?」
「いいと思うジョ。迷宮への出入りはどこからでも自由だし、移動手段もバッチリだジョ」
「うんいいと思う。ハナも得意だよ」
ハナ、お前、本当は旅のことを分かってないな。
「この街も悪くはないけど、やっぱりこの世界を色々見て回りたいもんなー」
「それいい!色々見て回るー」
ということで、旅に出ることにして、はる屋を引き払う。
「色々お世話になりました。これからこの街を出ます」
「あら残念ね。また来て下さいね」
「また来ます」
「領主館はどこにあるのですか?」
「領主様のソマール別邸は、北の高級住宅地中心部の一番大きな屋敷よ。本邸は、
ソマールからずっと南にある領都セダイムにあるのよ」
ウギス領主殿の正式な呼び出しを待たずに出発してしまうので、メッセージを残
して行こう。
冒険者ギルドのエリーと魔道具屋のンボダフ店主にもお手紙を出して置こう。
『旅に出ます。世の中を色々見てきます。そのうち戻ります。ハジメ』
式鳥に3通の手紙を届けるよう命じる。
さてと、迷宮探索の再開だ。
転移で迷宮地下40階の階段部屋へ飛び、階下へ降りる。
と、地下41階は、山、川、草原、林、森が広がる自然豊かな世界だった。
山は標高1000mはある。
植生はちょっと原始の世界っぽい感じだ。うん、恐竜類が闊歩しているし、
翼竜も飛んでいる。
ここも一見無限に広がって見えるが、これまで同様に端々が繋がった閉鎖空間だ。
ただし、一辺1キロではなく、10キロ程もある。
広さは一気に100倍ということだ。
敵のレベルは41固定。30階代と比べると、敵個体がそれぞれ巨大で、階層全
体の個体数も多い。
さて、ここでも強制大煉獄が通用するか試してみるとしよう。




