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死合とは何ぞや?

地下30階までの攻略が快進撃だったため、時刻はまだお昼頃だ。


「職安でハナを冒険者に就職させて、ギルドで冒険者登録しなきゃだね」

「職安でハジメの登録証にあるハナの僕獣記載の抹消もするジョ」

「あたしは、ハジメの僕獣のままがいいけど」

「人型のハナは亜人だから、僕獣はちょっとまずいジョ」


「そうだな、それから冒険者への就職はそこの職安でいいけど、ギルド登録は、

他の街でやった方がいいね」

「確かにちょっと気まずいジョ」

「そうかなぁ、別にどっちでもいいけど」


ハナはおおらかなのんびり屋さんだった。

とりあえず、俺とジョーの方針で。


俺は、式神の力を使って、鳥の羽から式神の鳥を作ってみる。

おお、小鳥が生まれた。凄い。

「式鳥でいいや。お前は俺の目になること」

「ちゅん」


スパイ衛星というか、カメラ付きドローンというか、そういう役割をしてもらう。

式鳥の見たものは俺も見れる。式鳥の視線は俺の視線。


式鳥に職安前まで飛んでもらう。

ちょっと外れて人目のない場所まで式鳥を移動させてと。

ふふん、式鳥の目を通じて、きちんと視認できるので、ここへ転移できるよ。


ハナと、職安近くまで転移。成功。

職安へ行き、無事、僕獣解除と冒険者への就職を済ます。

「簡単だね」

「冒険者になるのは、レベル2以上で犯罪歴がなければそれだけでOKだジョ」


人型ハナの足慣らしとして、街を出て東の方向へ行ってみることにした。

「小さな町で人の振舞の練習をしてみよう」

「えー、大丈夫だよ。でも他の街に行くのは楽しみ」

ということで、まずは式鳥先行で、ソマーナ市の東方向の小さな村を視認して転移。


「移動が楽ちんになったね」

「透明化してから重力操作と空気操作で空を飛んでいくこともできるけど、転移の

方が楽だジョ」

「地面を思いっきり走る方が楽しいと思うけど?」

ハナ、それはお前だけだ。



さすが村だ、畑や田んぼが多い。あれ田んぼ?こっちはパンばかりだと思ってたけど。


ハナの練習風景。

「はい、質問です!」

「ハナさんどうぞ」

「食べられるものが落ちてたら、拾っていいですか?」

「。。。だめ」

「あぅ」

「はい、質問です!」

「ハナどぞ」

「珍しいものがあるので匂い嗅いでもいいですか?」

「却下!」

「はぅ」


ふう、隣の村まで練習に来てよかったよ。まじで。

目をキラキラさせて、耳としっぽをピンと立て、右手をまっすぐ上げて元気よく

はきはき質問しては、

却下されて、しょんぼりしおしお、耳も尾もぺたんと垂れ下がる。

犬耳美少女になっても、中味は子犬ハナと変わらない。


村の茶屋風の店で、一休みして、お茶と塩むすびを食べる。なに、塩むすびだと!

「あー、久々のおむすびは美味いわー」

「パンも美味しいけど、これも美味しいね。どっちも美味しい」

「んー、この味はちょっと子供には分からないかなー」

「えー、あたしの方がハジメよりお姉さんに見えるよ」


そうなのだ。俺は見た目5歳くらい、ハナは見た目10歳くらいなのだ。

やばい、この差はこの先、開いて行くばかりかも知れぬ。



「はぁ、死合とはな」

「ベサクのコメ作りも、お終いかのう」

むむ、何か気になる話。

あ、ハナ、耳を立ててそっち方向に向けたら、顔がこっち向きでも聞いてるのが

バレバレ。

もはやしょうがない。尋ねてみよう。


「あの、となり街から初めてこの村に来たんですけど、米作り終わっちゃうんですか」

「ここベサク村は、ソマーナと同じウギス領国に属しておるんじゃが、隣国のボ

ハゼ領国から死合を仕掛けられてのう。負け死合がほぼ決まりじゃから、領主替

えになってしまうのじゃ」

「ボハゼ領主は米嫌いでな、麦に耕作替えさせれることになるのよ」


ここでジョー先生の脳内講義。

「武力で領土争いに決着をつけるための、戦争に代る方法が死合。代表を6人ず

つ出して、6人対6人で戦う。侵略側が6人の名簿と預託金を積んで死合を申し

込む。

防衛側は勝てば預託金をもらい、負ければ領土を奪われる。領主の身内を1人領

国民を二人入れることが条件で、残りの3人は冒険者の助っ人でもいいんだジョ」

「なぜ、試合じゃなくて死合なの?」

「殺しても罪にならないからだジョ」

「そんな野蛮な」

「戦争よりもましな平和的な方法だジョ。それに戦闘不能にすればいいので必ず

しも殺す必要はないし、双方いつでも降参できるのだジョ。戦力差が大きければ

戦いにはならないジョ」


村人に続けて尋ねる。

「死合はいつあるんですか?」

「今日これからじゃ。役場の前の広場で行われる。領主様も来ておるじゃろう」


急いで行ってみた。

死合が始まる直前だった。

状況をまとめるとこんな感じ。

・ボハゼ側強い。領主の甥中級魔法使い、冒険者上級魔法使いB1人、

冒険者戦士C2人、騎士2人。

・ウギス側弱い。領主の5女初級魔法使い、村の自警団員1人、農夫1人。

・ウギス側、開始直後に降参するもよう。領主5女、12歳、激しくビビってる。

・聴衆もあきらめムード。


だめじゃん!ベサク村、米作頑張らないと!負けちゃだめだよ。


そして俺としては異例の積極性を示すことに。


ウギス領主に直談判に行く。

「ウギス様、俺はランクB冒険者のハジメです。超新星なんて言われてます。

俺も参加しますから頑張りましょう」

「ほお、君が噂のハジメ君か。いやしかしな、君が参加しても6対4、無理だろうて」

「このハナも参加します。俺同様、見た目に反してなかなかやります」

「うん、ハナ強いよ」

「しかしなぁ」

「開始後形勢不利だったり、誰かが負傷するようだったら、その時は降参して下さい。ダメ元ですよ」

「そうだな。ダメ元ならやってみようか」


急遽参加することになった。

こっそり尋ねる。

「ハナ、人型でもあいつら相手なら問題ないよな」

「うん、全っ然ダイジョブ」

だよね。


一方こちらは、

「お父様、危なくなったらすぐに降参して下さいね。遅くならないで下さいね」

5女12歳、初級水魔法使いアリッサ嬢は涙目。俺をキッと睨んでいる。

こいつさえ出しゃばらなきゃって思ってる。絶対思ってる。


「お嬢様、開始直後に水球ウォーターボールを相手魔法使いに飛ばして下さい。

できれば2発。俺は、奴らの呪文を妨害して魔法を使えないようにしますから。

万が一、お嬢様のところに魔法が飛んで来たら撃ち落として命中させないから大丈

夫ですよ」

と安心させてみるが、信用されてないなー。5歳児が何を言うって顔してる。


敵側の様子は、

「がはははは。爺い二人に娘っ子一人かと思ったら、更に丸腰の娘っ子一人と幼児

を追加だとよ。舐めとるのか。見苦しいにもほどがある。これはちょっとお仕置き

しないとだな」

と、ボハゼ領主の甥。小太りあばた面の30前の小憎らしい感じの男だ。


この野郎。お仕置きするのはこっちだ。


ボハゼ領主は、どっしりとした50前後の堂々たる体躯の男。終始無言。



死合会場の観衆は、しんみりどんよりしている。ムードは最悪。

「おいたわしや」などと呟くのが聞こえる。


中央ラインを挟んで、ライン近くにボハゼ前衛4人、後方10mにボハゼ後衛魔法使い2名、

ラインこちら側5mにウギス前衛ハナ、10m離れて自警団員と農夫、更に10m後方に俺とお嬢。

思いっきり、ウギスが引いてます。。。



とその時「死合開始!」審判員の声が掛かる。


俺は左右あらぬ方向に風の矢を各2発計4発。これはリモート誘導で敵魔法使い2名の喉を狙ったもの。


ランクBさんは上級魔法、領主甥は中級魔法の詠唱をしていると思われる。

俺には何を言ってるかわからないけど。

勝ち誇った様子で自信たっぷりに詠唱している。


こちらのお嬢は水魔法初級の水球を唱え終わる。初級の詠唱は短いんだよね。

ふらふらと小さな水球が飛翔する。


おっと、前衛では、ボハゼ側4人が前進して押し上げて来たぞ。更に高速で距離を

詰めるのはハナだ。

ウギス前衛自警団員と農夫の2名は落ち着いている。いや、硬直しているのか。。。


これが開始直後の様子。


次の瞬間には。


俺の風の矢が、大きく弧を描いて、敵魔法使い2名を想定外の角度から襲い、

2名の喉に命中。

甥転倒、B氏踏みとどまるも詠唱は中断。

ハナ素早く軽武装の2名に接敵し、拳を1人の顔面に、手刀をもう一人の後頭

部に叩き込み、各昏倒させて無力化。続けてやや後方の重武装の2名に迫る。

お嬢の水球はふらふらと飛翔を続ける。

農夫と自警団員は固まっている。


そして数秒後。

お嬢の水球が転倒していた甥に命中、甥昏倒。ランクB氏は水球を杖でたたき

落とす。

ハナは重装備1名に足を掛けて転ばし、もう1名を背負い投げで投げ飛ばす。

更にハナは、持参していた革紐で、鎧が重くてのそのそしている重武装者2名を

素早く拘束し、無力化する。紐の結び目は俺があらかじめ結んでおいたのだ。

そして俺は、例によって、頭上に巨大火球を出現させて、ゴゴゴゴと重低音を

響かせたまま待機。

農夫と自警団員は固まっている。


「参った。それまでだ」ボハゼ領主が宣言した。


ここまで開始から20秒程度。





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