砂漠階層を制覇、そしてハナが!
転生7日目の朝、いつもの朝の訓練時、ウルティマを昨日の草の茎の棒状にして、
ツカハラ師との模擬戦を念頭に、ツカハラ師役に成り代わって演じてシャドーで
再現してみた。そして武器技能スキルで総合判定してみると、なんと120点。
凄い、彼もやはり常識を逸脱している。
ツカハラ流を取り入れた俺として、ウルティマを短槍や剣に持ち替えて、シャド
ー戦をしてみると、平均で95点、最高で105点。
まだまだ及ばないが、ツカハラ以前の俺に比べると長足の進歩と言える。
いやはや、先達に学ぶことは素晴らしきことなり。
朝の訓練を一巡させて、宿で朝食を摂り、迷宮へ出かける。
今日は趣向を変えて、宿の部屋から亜空間経由で直に、迷宮地下23階の階段部
屋に飛ぶ。
そしてここから迷宮攻略は快進撃。
やはり重力操作で空を飛べるのが大きく貢献する。
砂漠の各種試練が、児戯に等しい。上空からの攻略はもはやずる以外の何物でも
ない。
敵の発見と撃破も問題なくこなして、下の階層へ、下の階層へと進む。
砂漠の敵は、サボテン、蟻、蟻地獄、ミミズ、とかげ、へび、らくだ等の系列の
魔物や獣だったが、29階まではこれと言って特筆すべき敵はいなかった。
レベルは概ね階数と一致していた。29階はレベル29の敵が出る。
迷宮地下30階に到達した時、既にハナもレベル9になっており、俺達はともに、
レベル10目前だった。
30階には強敵がいた。砂怪魚というピラニア風の比較的小さな魔物で、砂の中
も空中も自由自在に泳ぎ回り、かつ、実体とエネルギー体の二つの状態に瞬時に
切り替わるという特異な存在であった。
そして100匹の群体で1体扱いで、最大10体、つまり1000匹一度に出る
のだ。
実体のピラニア野郎は、魔法耐性が高くて特に範囲魔法攻撃が効きにくい。他方
エネルギー体の方は物理無効である。奴らは状態を切り替えることにより俺たち
の攻撃を巧みに防御しつつ、実体は咬みつきでこちらの肉を齧り取り、エネルギ
ー体は直接生命力を喰らうといういやらしい攻撃を仕掛けて来る。
考え無しに戦っていては身を削られるばかりだ。
聖光領域、聖魔法の上級技だ。
俺は、この魔法を契約魔法として一度使用し、その洗練された技を魔法登録した。
新たに魔法創造で練り上げる必要はなかった。名人級の技でもう出来上がってい
るからだ。そしてそれを登録リストから使用する。
これで俺の自前の魔法として、契約上の気量提供無しで使用できる。
著作権侵害のようだが問題ない。ザースにはそんな決まりはないのだ。
周囲一帯を聖光領域化すると、砂怪魚はエネルギー体として存在できず、実体の
みでの攻撃に限定される。
それでも奴らの数が多過ぎて対処が困難なので、高速の風でシールドを作り、実
体の侵入を困難にする。
そうなると、砂怪魚は、空中からではなく、下方の砂面から浮上して襲って来る
が、個体数がかなり限定され、砂面から出る瞬間をハナが四肢で踏みつぶし、風
シールド内部にまで侵入してきた個体を俺のウルティマ双剣とハナの牙と角と尻
尾が撃ち落とす。
こうして奮闘すること10数分で、1000匹の退治が完了した。
砂怪魚1000匹を倒した
ハジメはレベル10になった
ギフト式神を得た
ハナはレベル10になった
ハナは貴人狼に進化した
ハナはギフト魔法アシストを得た
「やった、レベル10だ!ギフトも進化も来たー!!」
「きゃふん!」
31階に一歩踏み込んで足掛かりを得た後、直ぐに亜空間避難所兼訓練所へ直
行する。
レベルアップで獲得した力を検証したい。
「新しいギフトをもらえた!レベル10毎にひとつ増えるんだったね」
「そうだ。ハジメのギフトポイントは50になって選択肢がひとつ増え、新た
な力の可能性も得た」
「式神ってどんな力?」
「物質や生物に気を送り込み、ハジメの眷属として使役することができる。例
えば紙を使って蝶にする、羽を使って鳥にする、土人形をつかってゴーレムに
するとかだ」
「うわー、嬉しいような気色悪いような」
「色々試して、使い勝手の良い式神を使役できるようにしないとだ」
「それで、ハナの進化なんだけど、貴人狼?」
ハナは、一段と大きく美しくなった。体長2メートル、体高1.5メートル。
毛並みは銀色、耳と尻尾はややダークないぶし銀。頭部には金属光沢の銀の
角2本。
そして、その固有能力は。。。
備考 サイズ変更 念話 人化
「サイズ変更は前からのものだよね。念話とは?」
『こういうこと?』
頭の中に声が響いた。鈴の音のような声だ。
「い、今のハナがやったのか?」
『うん、たぶんこれが念話。ハジメと話をしたいと考えるとこうなる』
「精神感応の一種だね」
「俺がハナに話してるのも聞こえるのか?」
『それは前からだよ』
「いや、耳からじゃなくて頭の中に直接っていうか」
『どうかな?』
俺が声を使ってしゃべらないで、思念を送ろうとすると念話として伝わる
ことが分かった。
念話は電話のように、回線を切ったりつないだりもできる。
『あたしはいつでもつないでるから、オンオフはハジメが決めてね』
なかなか凄いことになった。
「ジョーとの頭の中の会話もあって、整理が付きにくいから、ジョーは語
尾にジョを付けること!」
「私の人格にはそぐわないが、ハジメがそうしたいなら、それでいいジョ」
「ははは、面白いや。とりあえずそれでやっててみて」
「忸怩たる思いだジョ」
おっとそれから。
「人化って何?もしかして人の姿に成れるとか?」
『たぶんそうだと思うけど、恥ずかしいからあっち向いててね』
「わ、わかった。準備できたら声掛けて」
ドキドキ。
なんか、ぽわんって音がしたような。
。。。。。まだかなあ?
「いいよ」
念話ではなく、実声だった。念話と同じ鈴の音のような声だった。
お、お、おーー!
「これがハナかー!ハナのイメージそのまんまっ!!」
人型をとったハナは、銀髪、色白、目は黒目勝ちでぱっちり、耳と尻尾はい
ぶし銀のシルバーグレー。
犬耳の美少女だ。
「かわいい?」
「うん、凄く」
「えへへ」
犬耳がピンと立って、尻尾はふさふさ振られている。
そして、うん?白いノースリーブミニ尻尾穴付きのワンピースを着ている?
「この服はどうなってんの?」
「最初からこうだったよ」
「毛皮が服に変化してるんだジョ。ハナのイメージで変更可能だジョ」
いやはや、嬉し恥ずかし、想定外で、どうしたもんかと思いつつも、
とりあえず、
俺、ハナ、ジョーの3人、実体は一人と一匹?で仲良く賑やかに食事を摂った。
「これからどうしようかね?」
「ハナのデビューを考えなきゃだジョ」
「そんな大げさなものは要らないけど、周りに変に思われなきゃそれでいいよ」
「そこが難しかったりして」
「犬から人狼族になることはあんまり無いの?」
「聞かないジョ。人狼族は、普段は人型の亜人で、満月の夜に獣化するタイプの変化をするジョ」
「うーん、まあおいおい考えよう」
「それよりあたしは、戦闘がどうなるかが気になるな」
模擬戦をやってみると、慣れていない分、人型ハナの戦闘力は落ちる。
人型でも基礎数値的なものはさほど変わらないし、爪と角部分の獣気による攻撃もできる。
ただいかんせん、体の使い方が異なるので人型での戦闘にはかなりの慣れが必要と思われた。
「あたしとしては、犬型の方が戦闘向きと思う。4本脚は安定するし、牙は使い易いし」
「人型なら武器防具が装備できるけど、俺のウルティマみたいな特別なの以外は、
今の俺たちのスペックに影響を与える装備はそうそうないからなー」
「当面は、本気で戦う時は犬型だジョ」
そして、ハナのギフトの魔法アシスト。
「これはハナの獣気で、ハジメの魔法をアシストして、効果を上げるものだジョ」
「わ、嬉しい!あたしにぴったり」
迷宮の砂漠で試してみたところ、現状で、ハナが獣気量の10%を使うと俺の魔
法の効果は約2倍に、50%を使うと10倍に、90%を使うと100倍にアップした。
「これは大きな魔法を使うここぞという場面で活きるね」
「早く実戦で使ってみたーい」
色々楽しみなのであった。




