表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/136

剣豪登場

地下22階も砂漠だった。21階と同様、見渡す限りの砂の海だ。


階段部屋、ここに限っては滑り台部屋かな、をしっかり確認しておく。部屋と言っ

ても、床が回転扉になっているだけで、しかも砂で偽装された扉なので見た目では

判然としない。

「上から滑り降りてきたはずなのに、床面の回転扉なんだもんなー」

「迷宮は、亜空間だから、作りは何でもありだ」


さて22階の砂漠に踏み出してみると、21階よりも流砂の流れがきつい。流砂の

ベルト地帯が複雑な迷路を形作っている様相だ。ところどころには砂嵐の地帯も見

える。

「これは歩き回るのがきついなー。何か別の方法を考えないと」

「そろそろ重力操作が使えるはずだな。これを試してみよう」

重力操作、まだ使っていないギフトだ。

「レベルがまだまだ低いので、上手くは扱えないだろうけど、上空を移動するくら

いは大丈夫なはずだ」


俺もハナも超回復で地力の基礎数値が上がり過ぎて、その副作用でレベルが上がり

難くなっている。

二人だけで迷宮をここまで潜ってきても、敵が相対的に弱くなってしまって、経験

値が入りにくいからだ。

まあその分、より深く潜れるわけで、好敵手となる敵がいる深さまで潜って行けば

いいだけの話しなんだけどね。

ちなみに今は二人ともレベル8になっている。


それはさて置き、重力操作だ。

ギフトの重力操作をオンにして、自重を重くしたり軽くしたりするよう試してみる。

「なかなか難しいぞ。うわ重くて潰れるかと思った。では軽くする方向で、うんう

んこんな感じかなー、あっ!」

ピューっと上空へ向かって落ちて行く。

そう、軽くし過ぎてマイナスになっちまった。

「反重力状態にもなるわけだ」

「早く言って。。。」


そんな風にかなりみっちりと訓練を重ねた結果、俺の体と俺が触れている物の重力

を、ある程度だけれど意のままに操作できるようになった。

プラス200%マイナスに100%程度。体重を3倍にしたり、ゼロにしたり、同

じ重さの反重力状態にしたりできる。これは立体軌道で戦う時の軌道変化に凄い威

力を発揮するだろう。空中の覇者になれそうだ。



現状俺達は、重力ゼロにして、俺がハナに乗っかって、気球のごとく上空を漂って

いる。

空気操作で周囲に風を発生させてなかなかの速度で移動することが出来る。


「うーん、快適快適」

「わふーん」


「あの砂嵐の中心に魔物がいる」

大砂さそりレベル22。それがこの階層の魔物だった。



空気操作で砂嵐を中和して無風状態にすると、大砂さそりの全身が露わになった。

でかい。高さ3メートル長さ20メートルくらいか。全身の大きさに見合った巨

大で強力そうな1対のはさみと、尾部の禍々しい毒針。


地操作と空気操作系の能力を持ち、砂嵐を発生させるほか、砂の弾幕、これは俺

の理力のガトリング砲みたいな感じの攻撃、それから地味に嫌らしく流砂を発生

させて敵を引き寄せ、はさみや毒針の餌食にしようとする。


しかし俺とハナには相性の良い敵だ。外殻は硬いが、ハナの打撃はその内部にダ

メージを通すことができるし、ウルティマをハルバード、つまり先端に斧がつい

た槍の形状にして、遠心力を効かせて振るうと、外殻を切り裂いて肢やハサミを

切り飛ばすこともできる。

比較的楽に倒すことに成功し、ハナの爪の力に頼って魔石も取り出した。


そして、上空から俯瞰すると、砂嵐ですぐに奴を発見できるので、さくさく倒し

て鍵玉をゲットした。

上空から下り階段部屋を見つけて簡単にたどり着く。

いったん滑り台で地下23階に降りて、すぐに回転扉を回して地下22階に戻る。


「おっと、砂の急角度の滑り台を昇るのは結構骨だぞ」蟻地獄の蟻状態だ。。。

そこで、反重力の出番です。

滑り台の天井部分を滑り上がって、ハナときゃっきゃと楽しみながら22階に出る。

更にスポンと上空に滞空して、すぐさま22階の転移室を発見し、到着。

「重力操作、凄い。能率が段違いだ。21階で苦労したのは何だったんだ」

「苦労があったから、今のありがたさが身に沁みるんだよ」



重力操作の練習で時間をとったけれど、まだ夕飯には早い。

散歩がてら、迷宮から宿まで、お店をのぞいたりしながらぶらぶらしていると、

「ハジメー、ハナちゃん。お散歩中なの?」

私服のエリーだ。非番なんだ。


「ん?まあな」

「くぅんくぅん」

エリーはハナの頭を撫でて、耳を優しくいじりながら、こんなことを言う。

「今ね、旅の剣術師範が来ているよ。ツカハラさんていうんだけど、訓練所で剣術

指導をしてるからのぞいて見たら?」

な、なんですと!!

「行く!訓練所はどこにある?」

「ギルドの北側よ。ふふ、やっぱりそういうの好きよね。勝負したりしちゃだめ

よー」


いや、勝負するとかそういうのじゃなくて、旅の剣術師範ツカハラって、やっぱ

りアレでしょ、転生者かその関係者でしょ!これは是非会わねば!



訓練所は柵に囲われた広い空き地のようなところだった。

遠くからそっと様子を伺ってみる。

子供たちが集まっていて、その中心に40代くらいの中年の男、というかあの恰好

は武士!

ちょんまげ、羽織はかまに、2本差し。


鑑定しても、剣術師範ツカハラということ以外分からない。隠蔽か。

子供達に実地に稽古をつけているのは、弟子のボクリン。20歳くらいかな。

好青年の武士だ。

こやつらは、只者ではないぞ。超気になるんですけど!


ツカハラも弟子のボクリンもにこにこしていて、悪者の雰囲気は全くない。

近づいて、子供たちの輪に紛れて見物する。

子供たちの技量が低すぎて、判断できないが、にこにこして手ほどきしているボク

リンも、座ったままのツカハラも、その立ち居振る舞いに全く隙がない感じがする。


と、にこにこ顔のまま、ツカハラが俺に声を掛ける。

「そこの君もやってみないかね」


ボクリンが俺に歩み寄り、棒をすっと差し出す。凄く軽い。

葦とかそういうたぐいの草の茎かな。

それなりの硬度はあって振るには耐えられるけれど、当たっても痛くない。


「これを使うよ。私の体に当ててごらん。君の棒が、私の体か私の棒に当たれば君

の勝ち。私が棒を君の体に当てれば私の勝ちだ。やるかい?」

「ん、やる」

そういう稽古なのか。分かりやすいし、怪我もしなくていいな。


ギフトの武器技能に意識を払いながら、棒を構える。

さすがに強く振り過ぎると折れそうだ。

ボクリンは、自然体で悠然と立ったままでにこにこ顔だ。でも隙がない。

俺は、棒が耐えられる強度を念頭に、取り敢えずボクリンに軽く打ち掛けてみる。


おおお、これはっ!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ