初めての狩り
「この活力っていうのは何?」
「それはスタミナ。疲れたり空腹になると減少し、休んで栄養を取ると回復する」
「これは超回復の対象にならないんだ」
「そうだね。レベルが上がったり体が大きくなったりすると自然に増えていく。
50%を割ると超回復が阻害されるし、10%を割ると過労状態で体調が悪化する」
「ふうん、よく食べてよく寝ないと、きちんと育たないわけだ」
さてと、スタミナ50%超を維持しつつ、地獄のМ特訓も何とか通過した。
ハンマーだけじゃなくて、石釘とか石包丁まで地操作で作って使ったよ。
せっかくだから色々なダメージに慣れて置いた方がいいって。鬼だな、ジョーは。
「いよいよ初めての狩りをしよう。まず、成長促進、同大、同極を選択した。
外に出た前提で粘性体を判別してみると?」
外に出たとしてと。あ、まだいるな。色はオレンジ。
「ふむまだだな。じゃあここから焼いてしまおう。熱操作を選択して粘性体の温度を上げる。
さっきの石釘を持ってそれを発動体としてその先から熱波が出るイメージで」
おお、石釘を握る右手がじんわり熱いぞ。全身から力が集まって腕を伝って石釘の先から
放出されている感覚がある。間の土壁に邪魔されて伝わり難いんだけど、奴の体表の温度が
確かに上がっていってるようだ。いやがってるというか苦しがってくねってるぞ。
「できれば、体内の温度を直に上げるイメージでやってみて」
むう、これはムズイ。粘性体の気配をつかまえて、中に入り込んで放射っと。できてるかな?
あ、粘性体の体が沸騰した感じがした。ぽふ。手ごたえあり。やったか。
粘性体レベル1を倒した。次のレベルまでの経験値10%を獲得(成長促進 極)
おお、ログが流れた。何て便利なんだ。ジョーさんグッジョブ。
成長促進って何?
「成長促進で成長速度2倍。同大で5倍。同極で10倍。経験値の価値が増大する感じ」
うほ。
「じゃあ外に出よう。地操作で、壁の蓋に蝶番と取ってをつけてドアに変形させる。
そして丸盾を作って左手に装着。取ってを握ってひじの部分で固定する。右手には石包丁」
「準備完了」
「まだまだ。理力操作を選択して、体全体及び盾と包丁を覆って」
あれね、あの映画のフォースね。うにょうにょ~。あや、ムズイな。うにょうにょにょ~~。
「まあいいでしょう。最後に危機感知と危機対応の各大及び極を。これでよし。じゃあいこか」
土のドアを開けて穴から出ると、外で粘性体が丸まっていた。
石包丁ですっと切れる。なんだろ、つきたての餅よりもうちょっと柔らかい感じ。
「中に魔石があるから取り出しておいて」
コロンと白い小石をとりだして、穴の中のテーブルにぽいっと。
洞窟の入り口の光の中へいざ踏み出さん。
ギフト
理力操作/熱操作/地操作/空気操作/光操作
危機感知 同大 同極/危機対応 同大 同極
索敵/鑑定/判別
自然充填 同大 同極/自然回復 同大 同極
成長促進 同大 同極
自己確認/神知/自由設定
残23
自己確認
ハジメ 人族 5歳 レベルゼロ(次までの10%獲得済み)
称号 加護ある幼児
装備 石の丸盾+理力 石包丁+理力
基礎値 筋力2/敏捷性2/生命力2/気力2/気速2/気量1(50%)/活力70%
攻撃力 2+1(石包丁)+2(理力)=5
備考 成長して危機を乗り切ることが課題。一応の備えあり。
防御力 2+1(石丸盾)+2(理力)=5
さてと。やっと洞窟の外の世界に踏み出せた。まぶしい。
草原が広がっている。大地には緩やかに起伏がある。ところどころに丈高い草の茂みが散在し、
林もちらほらと見受けられる。広い。見渡す限り同じ風景。
空は晴れている。気候は穏やか。そよかぜが素肌に気持ちいい。
理力の覆いは、温度や触覚には影響しないようだ。
草を鑑定してみる。雑草。ん?あっちは、、、雑草。こっちも、、、雑草。
うーん、意外といい加減なのね。
「いや私ではなく、この世界の認識がそれどまりだということだよ」
ふふふ、分かってますって。ジョーは結構見栄っ張り?
あの大きな葉っぱの植物はどうだろう。毒いも。うむむ。
「これは過熱すれば食べられる。後で掘ろう」
索敵してみると近くに黄色点が二つ。ひとつはそこの茂みの中だ。
角うさぎ レベル1
「獣だ。素早い。角の頭突きと後足の蹴りに注意」
盾を構え、包丁を振り上げてみたけれど、重い。だめじゃん、5歳児の筋力。
しかし角うさぎは、しゅたっと逃げた。まさに脱兎。
ふっふっふ、フォースの威力じゃな。って逃がしちゃだめじゃん。
もう一つの黄色点は、くぼみの石のあたり。あれ?この石が敵だ。
陸ガメ レベル1
「これも獣だ。鈍重だけれど、かみつかれると手足くらいは簡単に持っていかれるぞ」
甲羅の長さが50㎝。頭としっぽを入れると一メートルはある。歯がすごい。顔が怖い。
近づいてみるとシュっと息を吐いて威嚇してくる。怖いよお。
しかし泣き言は言ってられない。いまの俺には好都合な相手だ。
後ろに回り込んで尻尾に切りつける。硬ったいけれど傷が付く。赤い血がにじむ。
「まず尻尾。切断したら次は後ろ脚を攻撃だ。頭に気をつけろ」
カメが尻尾をしゅんと振った直後にその根元に切りつける。頭の方向には盾を突き出して、
反対側から包丁攻撃だ。尻尾の打撃にも要注意だ。振り切って反転する直前がチャンスだ。
これを10回ほど繰り返して、やっと尻尾がちぎれた。鑑定すると
陸ガメ レベル1 生命力95% 流血中
だー、まだまだじゃん。尻尾の切断面から血がだらーっと流れている。グロい。
次は後ろ脚なんだけど、位置的に頭に近いので尻尾よりも切りつけるのが難しい。
何度かフェイントを掛けつつ、やっと一本を無力化。腱が切れたようでブラブラになった。
甲羅の回転が鈍くなり、もう片方は前よりもだいぶ簡単に無力化した。
さて頭。
「熱操作で行こう。今度は炎を出してみて」
全身の力を包丁の先に集めて、よし熱くなってきたぞ。
「火炎放出!」思わず叫んじゃった。
ぶおぉっと炎が出る。火炎放射器のようだ。ってそのものか。
陸ガメはブシュッと悲鳴を上げて前脚と顔を甲羅に引っ込めた。
頭部が焼けただれてたんぱく質の焦げる匂いがただよう。目が白くなっている。
陸ガメ レベル1 生命力10% 失血中 視力嗅覚喪失
おっと、俺も目の前が暗くなって吐き気がしてきたぞ。火炎放射はここまでだ。
包丁を甲羅の穴から亀の頭部に突き入れること10数回。
陸ガメ レベル1を倒した
動物虐待者の称号を得た
変な称号も獲得しちゃったけど、とりあえずやったね。
硬い甲羅の中の魔石は諦めて、ちぎれたしっぽと後ろ脚の一本を切り離して確保した。
その時、首のうしろにぞわりと嫌な感触が走った。
「危機感知 素早く洞窟にもどれ」
盾と包丁を放置して、尻尾と脚を持ったままたたーっと洞窟に向かって走る。
「上空に強敵。北の林方向からも複数的が接近中」
あわわ、やばい。
「危機対応 加速モードに入る」
うわ、なんか世界が粘っこくなったぞ、心臓の音がどっくんどっくんと、ん音が遅い。
ていうか、俺が早くなったんだ。走りながら索敵マップを見ると上空から赤い点、王鷹が
接近してきているが、俺が穴に飛び込む方が早そうだ。林からの赤点は草原狼か。
俺が洞窟に飛び込んだ時点で王鷹はくるんと方向転換し、草原狼達の方向をチラ見して
上空へ飛び去って行った。
俺は土蓋改め土ドアをしっかりしめて急いで閂を作ってがっちり下した。
ハアハア。活力残り30%。危機対応は活力を使って加速するのか。
狼達は陸ガメの死体をがつがつとあさって、満腹して立ち去ったようだ。
はぁぁ、地操作で石櫛をつくり、カメの尻尾と脚にぶっ刺して、熱操作であぶって食べた。
うまい~~、カメさんありがとう。
腹がくちくなったし、くったくたに疲れたしで、まだ夕暮れ前だけどもう瞼が
くっつきそう。おこちゃまは早寝なのよ。
眠い目をこすりながら聖操作を選択して、破邪結界を作った後に、さらさら砂のベッドで
横になり瞬時に眠りに落ちるのであった。これが異界初日。
ハジメ レベルゼロ 次レベルまでの経験値の20%獲得済。