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密林の支配者と21階から先

地下20階の敵は、マンティコア。

獅子の体、人の顔、蝙蝠の羽、サソリの尻尾という作りもの臭い魔物だ。

自然な進化で発生した存在とはとても思えず、意図的な操作で生み出された魔法生

物なのだろう。

火、水、土、風、4種の魔法を使う。火球、水球等の球系のみだ。

1体に寄せ集められた獅子、人、蝙蝠、サソリの全てを殺さないと、そのマンティ

コアを倒せない。1体が実質4匹分なのだ。


レベルは15から25で平均20位。

基礎数値は各4000程度で、俺とハナには及ばないが、かなり強力だ。


これが最大で4体、同時出現する。

20階には他の敵は出現せず、マンティコアだけだ。

1体で4種分なので、これだけでいいでしょうということのようだ。


地面と幹、そして枝を利用して3次元的に素早く移動する。

奴の立体軌道は素直な軌道ではない。全身ばねのような瞬発力があり、ジャンプ、

空中での4足での幹や枝への蹴り、尻尾の巻き付け、爪や尻尾の針を幹に突き刺す

ことにより、更には、空中で翼を使って空力を利用して、速度や方向を変幻自在に

操る。


最大4体でこうして翻弄しながら、こちらの意識が付いて来てないとみるや、各種の

魔法攻撃を撃って来る。

中距離で魔法を放たれたり、至近距離から魔法を纏った物理プラス魔法の前足の打

撃や翼に付いた鍵爪の切り裂き攻撃がくる。

こんな感じの俊敏な魔法戦士タイプだ。



奴ら4体を相手に無傷でいるのは難しい。普通に戦うと何発かは被弾してしまう。

奴らの攻撃の威力自体は、俺たちにはさほどの脅威ではない。

それでも当たれば痛いし、人の顔面でしてやったりみたいな表情をされるので頭に

くる。


当初は、俺とハナがそれぞれ1体を相手と決めて、各1体を確実に仕留めることに

した。

マンティコアは防御力もなかなかだが、その防御力を打ち破る威力の物理あるいは

単体攻撃魔法で攻撃して倒す。足や翼を破壊すれば恐れるに足らず。各1体屠れば、

あとは2対2の勝負で、俺たちが自力の差で圧倒できる。攻撃は当てさせない。

ただ、そうなるまでに、5~6発、下手するともっと攻撃を当てられて、むかむか

する。


攻撃を当てられないためには、4種の魔法と物理攻撃に対応した5重の防御結界を

全方位に張って戦えば足りる。でもこれはちょっと反則っぽい感じ。こちらから当

てるだけの一方的過ぎる戦いで面白くない。


防御結界の種類を徐々に減らして、最後は結界無しで。そして1対1から、1対2

と徐々に相手を増やして、最後は俺とハナのどちらかは傍観することにして1対4

、4体全部を一人でお相手つかまつる。

マンティコアは慣れれば、攻撃のバリエーションに限界があり、常にこちら有利に

戦うことができた。

それでも、一人で4体全部倒すまで、一発被弾するかどうかというスリル溢れる、

非常に有益な戦闘経験を積むことができた。

俺もハナも回避能力に磨きがかかった。

敵の動きに翻弄されずに、多彩な魔法攻撃のラッシュを潜り抜けられるようになっ

た。魔法戦に慣れることができたのは大きな収穫だ。


残念だったのは、マンティコアのあの顔。獅子のたてがみの中の野卑なおっさん顔。

もうあればっかり見て、飽き飽きむかむか、いい加減うんざりですわ。

あれが美女とかせめて美男だったら、もっと爽やかに戦えたかも知れない。

いやぁそれとも戦いにくくなるのかな?


とにかくそんなこんなで、必要以上に戦闘を繰り返し、午前中いっぱい地下20階

でマンティコアと戯れ続けたのでした。



昼は例によって、亜空間を利用して、昼ごはんを食べて、休憩し、午後はいよいよ

地下21階へ。




階段を下りて、扉を開けるとそこは砂漠だった。


「うわー、広々としている。空が高い。周りは遮るものの無い砂の海だ、どうなっ

てんの?」

「迷宮は、上下が階段でつながっているとは言え、所詮は亜空間、どのようにでも

設定は可能だ」

いやー、これ迷宮ですか?確かに迷ったり遭難したりしそうだけど。

「1キロ四方なんてもんじゃないね」

「隔壁がないのはどう解釈すべきか」

「わふん?」


とりあえず歩き始めてみた。

歩けども歩けども、砂の海。わずかに砂丘のうねりがあるばかり。

日差しを遮るものはない。風は強く、砂面に風紋を描いて吹き過ぎて行く。

砂が不自然に流れている。意図的な流砂のベルト地帯という感じだ。

気付かずにその流れに乗っかってると、方向感覚と距離感が狂ってしまう。

普通は遭難するわこれ。

上階からの階段部屋がかろうじてマップに表示されているので、何とかそれを目印

に位置感覚を保つ。


「ふーむ、これはどうやらぐるぐる回ってるぞ」

そうなのだ。曲がって歩いているわけではない。流砂でいつの間にか曲がってしま

ったのでもない。

空間の端と端が繋がっていて、結果、まっすぐ歩き続けるとぐるぐる回ってしまう

のだ。


まだ敵とのエンカウントは無い。レーダーゾーン内には今のところ入って来ない。

索敵マップには光点がついたり消えたりしている。これは何なんだ?

「俺たちの体力が衰弱するのを待っているのかな」

「倒れた振りをして誘ってみようか」

「わぉん」


ということで死んだふり。こんなので通じるのか?と思ったら。

たくさん集まってきた。イリュージョンという奴だ。レベル21固定だ。

くるぞ、半径5メートルのレーダーゾーン内に入った。なに?物質ではない。魔気

だけの存在のようだ。

エネルギー体というか幽体というか。


動きは早いな、そしてふっと消えて、ふっと現れる。どうやら亜空間と実空間を出

入りしているようだ。

こいつが付近をかすめたり、体を通り抜けると、打撃も痛みもないけれど、なにか

切なげな儚げなキュンとするような感じがする。これは恋?

いやいや、気と生命力を少しずつ吸い取られているぞ。


俺もハナも気量も生命力もたっぷりあるので、すぐにどうこういう話ではない。

しかし、イリュージョンは物質ではないので物理攻撃が効かない。

「どうしたものかな。動きが早くてしかもすぐに消えるので、距離をおいて魔法を

撃ってもあたらない」

「それならウルティマに魔法を纏わせてズバッと」

効いた。ウルティマ版、炎の剣で一撃だった。


残りのイリュージョン達のエネルギー反応が強くなり、動きが活発になった。

怒ったのか?

しかし向かって来てくれると迎撃できるのでむしろ楽だ。

ズバッと。火と聖の魔法が効く。他はダメ。でも効果限定な分、ダメージは大きい

ようで、ほとんど一撃だ。

イリュージョンは砂の中も平気で通り抜けるので、砂面の下からも攻撃がくる。

俺のレーダーゾーンは下にも効く球状なので、問題ない。


即席で聖剣を作ってハナにも持たせる。口に横ぐわえしてズパッ。ハナかっこいい、

忍犬みたい。

ハナは下からの攻撃には、む、勘で対応できているようだ。動物的勘という奴だろ

うか。


おお、イリュージョンが合体して大きくなって行く。そんなこともできるのか。

しかし逆に隙あり。

合体のために動きが鈍くなり亜空間にも逃げないので良い的になった。聖なる光の

範囲攻撃でジュワーっと蒸発。

 イリュージョン レベル21 50体を倒した。

ふう。こ奴は向かってこない方が怖いな。


こんなことを数回。やがて、イリュージョンが消えたあとに残された宝箱から、鍵

が埋め込まれた玉が出て来た。

「これが地下22階の階段部屋への鍵なんだろうな」

そうだった。鍵玉を握ると、転移室の場所と下り階段が出現し、その位置が分かっ

た。しかし遠いし、なぜかそこになかなか近づけない。

「下り階段部屋、動いてるじゃん」


走るか。しばし走ると少しずつ近づく。ところが休んでいるとまた遠ざかる。

「どうやら流砂の中に階段があって、ともに移動しているようだ」

その流砂のベルトを見つけられなければ、力技で近づくしかない。


「これは、スタミナ勝負だ。勝負かけよう」

活力の指輪を使って、気をスタミナに変換しながら走り続ければ、なんとかなりそ

うだ。

「ハナは素で行けるか?」

「わん!」

ハナはスタミナあるもんなー。


それーっ、だだだだっ。

はぁはぁはぁ、何とかたどり着いたっと。

砂面の穴に飛び込むと、そこは急角度の砂の滑り台になっており、22階に滑り出

された。



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