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冒険者ギルドでよくあるアレ

冒険者ギルドへ入って、まずは依頼書掲示板へ向かう。

Cランクで受けられる討伐依頼を10枚選び出した。

次にカウンターへ。朝とおなじ受付嬢だ。肩をすくめていた若いお姉さんだ。


「依頼達成の報告と、新たな依頼を」

できるだけ言葉少な目にしてカードと依頼書を渡す。

「朝の坊やね。え、達成?」

なんか嫌な予感。カードを裏返してみてえええええ!と驚き、もう一度表を見て、

「なんでランクCなの?朝はランクEだったでしょ?Eでも偉いなぁって思った

んだから!」

お姉さん、声が大きいよ。周りがざわざわしている気配ありあり。

「自動的にランクアップした」

「そ、そうよね。ごめんなさい。処理しますから少々お待ちくださいね」


カードと依頼書を持って奥の部屋へ移動するお姉さん。一人で待つのがつらい。

「え、半日で2ランクアップ?ありえねー」

「あのガキ、一人で犬連れて地下5階に行った奴だろ」

「誰が裏にいるんだ?」

何か、色々言われてる。ああいたたまれない。


「はい、お待たせ。報酬は金貨12枚と銀貨6枚よ。

分かってると思うけど、魔石や素材は表の店で売れるわよ。売れなかったときはち

ょっと値は下がるけどギルドでも買い取りをやっているからね。

昇級は、、、し、審査にもう少し時間がかかるからしばらく保留になりますです。」

分かり易く動揺してる。俺が怪し過ぎるのでストップがかかったんだろうなぁ。別

にいいけど。

「ん、分かった」

さて、受け取るものを受け取ってさっさと行きますか。126万円相当。うん悪く

ない。というか、うはうは?


「おい、ちょっと待て。どういうイカサマなんだ。説明してみろ」

立ちはだかる巨漢。ああ、来たよ。やっぱりこうなるのね。。。


他者確認

バルガン 人族 32歳 レベル18

称号 やっとこさランクC

職業 冒険者

装備 革の胸当て ブーツ

基礎値 筋力990/敏捷性720/生命力1200/気力10/気速5/気量10/活力55

攻撃力 900

防御力 1100+5(革の胸当て)=1105

備考 なりたてランクC ルーシーに見直してもらうのが目標


ふむ、苦節うん年でCにランクが上がったわけだ。

ルーシーさんからは、、、評価低いんだ。。。

俺の話はシャクにさわるよね。

気持ちはわかるよ。でもね、色々事情があってさ、でも言えない。

「討伐したら自動的にランクアップした」さっきもこれ言いました。嘘じゃないよ。


「ああん!このクソガキ、ふざけやがって。ガキでも不正は許さねぇ。ぶっ飛ばす」

怒らせてしまいました。


「おいおいバルガン、せめて略式の決闘ってことにしろよ」

髭のおやじが止めに入る。って止めてねぇよ。


表の広場まで出る。ギャラリーがずらりだよ。皆さん、ひそひそざわざわニヤニヤ

してますが、総意としては『かわいそうだけれど、不正はきちんと正さないと』です

ね。聞こえてますよ。


困ったけれど、これはやらないと収まりが付かない流れだよね。

ガツンと一度、いつかはやらなきゃならない、と思う。

それが今になっただけ。

幸い頑丈そうな奴が相手でよかったけど、どう手加減しようかなぁ。


などと考えていると、髭おやじが困ったような顔で俺を見ながら言った。

「ちゃんと加減しろよ」

あれ、分かってらっしゃる?俺は思わず、

「もちろんそのつもりだ」って答えちゃった。


そしたら、一瞬の間を置いたのち、どっとギャラリーが沸いた。あ、受けてる。

髭おやじもバルガンも笑ってるぞ。

あ、さっきの髭おやじのセリフは、バルガンに言ったのか。

『困ったガキだ。バルガンよ、相手はこんなちびなんだから手加減しろよ』

こういうつもりだったのね。言葉少ないと誤解されるぞ。人のこと言えないけど。


ああでも、場の雰囲気がぐんと柔らかくなった。

これは俺の好感度を上げるいいチャンスだ。


できるだけ派手でギャラリーを満足させる立ち回り。それでいてバルガンに怪我を

させず、俺の実力を広くアピールして、何の不正もないことを分かってもらう。

うう、要求水準高いけど、このミッション、達成してやろうじゃないの。挑戦受け

て立つぜ!


おれは指をくいくいさせて、バルガンにだけ聞こえるように小声で「こい」と告げる。

「っのやろう!」

バルガンが俺の顔面めがけて横殴りに張り手を飛ばしてくる。

俺はその手首をつかんで、張り手の勢いを活かしたまま斜め下方に引き、同時に踏

み出したバルガンの脚に俺の脚を掛けて固定して支点にする。

バルガンは横倒しになりながらゴロゴロ派手に地面を転がる。


と、すぐさま立ち上がって両手を前に上げて掴みかかってくる。

「うがあぁ」

顔真っ赤、激怒してますね。俺を掴み倒してのしかかるつもりだな。

俺は奴の手をかいくぐって俺の背面を奴の腹にあて、胸倉をつかんで斜め下前方に

引く。

今度は俺の頭と肩を支点に倒立状態となった奴の背中を、理力の第三の腕で鷲掴み

にしてポイッと前方に投げ出す。バルガンは縦方向に伝ぐり返りながらごろごろと

数メートル転がり、ギャラリーにぶつかって止まる。

これ、見た目派手だけど衝撃は少ないナイスなパフォーマンスなんだよね。


再び立ち上がるバルガン。今度は無言。顔色はむしろ青白い。あ、走り寄りながら

剣を抜いた。

袈裟懸けの斬撃。む、刃じゃない、みねだ。考えてはいるんだ。でも当たれば鎖

骨折れるよ。

俺は今度はちょっと強引に、理力の腕4本を使ってバルガンを大の字に固定して上

空に持ち上げ、背中から地面に大の字のまま叩きつける。手加減はしているよ。こ

の間、聴衆からは俺がバルガンを両手で高く差し上げ、更にジャンプした上で、奴

を地面に仰向けに叩きつけたように見えているはず。バルガンは何が起きたか理解

不能に違いない。


そこで俺は殺気を全開にして、バルガンと聴衆を身動きできず言葉も発せずという

状態に固めた上で、すっと右手を差しあげ、上空に直径5メートルくらいの火球を

作り上げる。あ、無詠唱でやっちゃった。

熱量も大きさも十分。バルガンは地べたから目を大きく見開いて火球を直視する。

バルガンも聴衆も、表皮が焦げそうな熱さを感じている。

バルガンは火球に撃たれれば一瞬で炭化することが十分理解できるはずだ。


ごくり。皆、息を飲む瞬間。

火球からはゴゴゴと僅かな音が響く。


静寂が1秒、2秒、そこで俺は一言。

「降参しろ」


一拍おいて、バルガンが

「こ、降参だ」


「これで納得したか」



くぅー、決まったぁ!


さあ颯爽と立ち去ろうと思ったその時、

「くぅん!」

あ、ハナちゃんいたの。しっぽふりふり、お顔キラキラ。

きちんとミニマムサイズになってるのは芸が細かいけど、ちょっと間が悪かったよ、

とほほ。

でも聴衆は、どよどよ沸いている。立ち回りは好印象だったもよう。

ささ、ここには長居は無用。


おれは、あせあせとハナの綱をとって、そそくさーっとその場をあとにするのだっ

た。

そして歩き出してから、あ、宿引き払ってた。まずった。頼むこっちの方向に宿あ

りますようにと祈る。

うろうろしたり戻ったりしたら、かっこ悪いもんね。


幸いよさげな宿があったよ。前よりかなり高級な感じ。『本陣 はる屋』か。

「この犬と一緒の部屋に泊まりたいんだけど」

「可愛いワンちゃんね。大丈夫ですよ、特別料金になりますが」

1泊2食付きで、金貨1枚。高いけどまあいいや、お金たくさんあるし。



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