ダーク世界
万能操作ガイドが示したのは次の3つ。
万能波動探知←(波動操作+索敵Ⅱ:/隠形)*u
有害波動無効←(万能波動探知+危機対応:/有害魔法無効)*v
重力攻撃無効強化←(危機感知+危機対応+重力操作:/有害魔法無効)*w
なるほど、ダークが隠蔽している波動を感知し、更に無効化してアクセスすると。
そしてダークの主たる攻撃手段と思われる重力攻撃に対しては特に無効を強化して備えるということか。
ふむふむ、これなら何だか行けそうな感じだぞ。
新作ギフトを入れると、現時点のスペックはこうなった。
ハジメ 人族 5歳? レベル134
称号 宇宙環境を整備する者
基礎値 オール∞
SUN値 5985億3440万
ギフト ポイント76
残3
重力攻撃無効強化/有害波動無効/
万能波動探知/物理攻撃無効/有害魔法無効/状態異常無効/
万能変化/万象操作ガイド/時空超越/連鎖/表示操作/結界操作/
圧縮/波動操作/次元操作/星格認知/転気/
超闘気/因果視/精神感応/巻き戻し/上限撤廃/
念体/索敵Ⅱ/自己確認Ⅱ/万物創造/発動妨害/
透過/遠隔操作/選択行使/分身/空間時間設定/
繭形成/ドリル弾/天翔/ギフト創造登録/式神/
再生/幽視/転写/認識領域拡張/
魔法創造登録/罠対応/理力操作/熱操作/地操作/
空気操作/光操作/水操作/聖操作/闇操作/
素粒子操作Ⅱ/電磁操作/空間操作Ⅱ/重力操作/時間操作Ⅱ/
気授受/生命力授受/危機感知究/危機対応究/
隠形/鑑定/判別
自然充填究/自然回復究/成長促進究/蘇り/武器技能/
付与/他者確認/言語対応/神知/自由設定
スキル
広範囲探知/次元転移/長距離転移/広範囲探知/
武術/闘気/不老不死/気配察知/GPS索敵 /念体索敵
冒険者カード
氏名 ハジメ ランクSSS 1級
種族 人族
年齢 5歳
レベル 134
*****
新作の3ギフトをオンにしたとたん、ブワァーンという強力な波動の流れが感じ取れた。
そしてその流れの最も濃い部分、そこが次元の境界壁が比較的薄い部分だと知れた。
次元操作から派生させた魔法である次元刀をウルティマⅡに纏わせて、境界をザクッと切り開く。
有害波動無効のギフトが効果を発揮しているのだろう、問題なく開口部へ体を滑り込ませることができた。
そこは、静謐な世界だった。
光はなく、むろん音もない。
ただ、濃厚な気配、圧倒的な重量感だけがある。
近くに質量を伴った広大な壁がどこまでも広がっている。
レーダーゾーンをどんどん広げていくと、果てしないと思われたその壁はやがて丸みを帯び、一個の球体であることが判明した。
直径は太陽の10倍程度、密度も10倍程度だ。なるほど、質量的に太陽の1万倍だ。
だから1万SUNか…、何だか適当な感じがしないでもないけど、大丈夫かな?
「我はダルデュリーヘン・ディムド・ハータルス。我が間近に現れし偉大なる小さきものよ、貴方はいったい何者か?」
頭の中に割れ鐘のような大音声が響き渡る。
状態異常無効(精神操作を含む)が効いていてダメージは無いけれど、この声だけでも相当なものだ。
相手の出方が分からないので、とりあえず3次元固定の結界を張り巡らせた。
「俺はハジメ。壁の向こう側の世界からこちらへやって来ました。貴方はダーク人ですね」
「ハ・ジメ………」
ダーク人のダルデュリーええと、ややこしいからダルでいいや、ダルさんは何故か激しく動揺している。
「いきなりで申し訳ありませんが、貴方達は、我々の世界を破壊しようとしていますね」
ダルさんの返事の脳内音声については、音量を調整しておこう。
「貴殿が3次元固定を行うまでの短い時間で、少し貴殿のことを覗かせてもらった。いかにも。貴殿の惑星を含むあの銀河は収穫の対象となるだろう。もっとも私は反対しているのだがね」
「反対ってどういうことですか?」
「私はダーク人としては少々風変りでね。貴殿らの言葉で言うと、趣味人とか学究肌というところだ。私は君達の小さい世界に強い興味と愛情を抱いている。我々とは異なる、光と希望と愛とドラマに満ちた夢の世界に」
ダルさんは…、これは、オタクという奴だな。
俺達の世界を美化し過ぎだと思うけど。
「いや、我々ダークの世界はご承知とは思うが、暗く不活性で変化の乏しい力だけの世界なのだ。ダーク人にとっては力が全てであり、その力の根源は質量だ。自分たちの力を維持するためだけに、質量を求めて数十億年も生きる。そのための部族単位の軍事組織、それがダークの社会の全てだ。実に単調で下らない」
うわ、考えを読まれてしまうようだぞ。
「ふふ、私は風変りだと言っただろう。私の力は破壊ではなく探知に特化しているからね」
まあいいか、ダルさんは戦う気が無い様だし。
「そうなのだ。私はむしろ私の夢の世界、い、いや君達の大切な世界を守りたいんだ。君達の銀河を含むこの空域は私個人の所有空域で、私は君達の煌びやかな生活と進歩と相互関係のドラマを見続けることが生きがいなのだよ、戦って滅ぼすなんてとんでもない」
「それならば、なぜ収穫の対象となってしまうんですか?」
「それは部族間紛争のせいなんだ。恥ずかしながらダーク人は部族間紛争というパワーゲームが大好きで。他になにも心躍ることが無いからだと思うんだがね。なんせダークには文化というものが無い。力の追及、権力の追及ばかりに血眼になって…」
うわ、これは話が長くなりそうだぞ。
「ああ、すまない、ついね。話を戻すと、新興のアプアッタルスという部族があって、こいつらは多少の犠牲は厭わない突出した戦闘性向を有している。狂気としか言いようのない要求を他部族に突き付けて勢力を伸ばしている連中なんだ。私の属するポランテュフ族は強力な名門の一派だが、アプアッタルス族はポランテュフ族に因縁を付けて、ここの領有空域を明け渡さないと武力衝突も辞さないと要求してきている」
「強力な名門の一族なら新興勢力の要求など拒絶すればいいじゃないですか」
「それがね、拒絶は可能ではあるが得策ではないのだよ。武力衝突となった場合、アプアッタルスが兵士5000の損耗、ポランテュフは兵士10000民間人20000の損耗と試算されている」
「それぞれ人口はどれ位なのですか?」
「アプアッタルスは10億、ポランテュフは200兆くらいだ」
「そんなに。それなら1万や2万の犠牲はたいした問題ではないんじゃあ?」
「いやそれは君達の感覚だ。我らダーク人の寿命はとてつもなく長い。そしてその長い時間を通じて蓄積してきた一人のダーク人の質量の大きさ貴重さがいかほどのものか想像できるだろう。我々ダーク人にとって一人の命が失われるということは、君達には想像できないほど重大な問題なのだよ。ダーク人は命を保つために力を追い求め、組織の権力を追い求めるんだ。そして磨かれ抜いた力のバランス感覚により、要求と割譲はしばしばみられても、実際の武力衝突は滅多に起こらないんだよ」
「犠牲を厭わず勢力を広げようとするアプアッタルスは異端なんですね」
「ああ基地外集団さ。ただ冷静な計算に基づいた狂気なんだがね。そういうわけで、ポランテュフはアプアッタルスの狂気に付き合うことなく、僅かな領有空域の割譲を決断するのはある意味当然なんだ」
「でもですね、そんなんで収穫される俺達は全然納得できませんよ。それこそ種族存亡が掛かっています」
「分かってる。私も夢の世界を失いたくないから自分の存在を掛けてここで頑張ってたわけさ。でも奴らが実際に実力行使に出て来たら、さすがの私も明け渡さざるを得ない。む!」
え?ダルさんの放射する波動の雰囲気が変わった。
「まずいな、貴殿の偉大なる力の片鱗に奴らが気付いた。兵士10体がここに来るぞ。貴殿の結界を出来る限り広げておいた方がいい」
ええぇ!戦闘民族の兵士が来る!?これはきな臭いことになりそうだ。




