粛清
枢機卿達の期待の籠った視線が痛い。
「俺は教団に属するためにここに来たんじゃないんです。聖星教の悪行を粛清する許可を人神にもらいに来たんです」
「許可も何も人神の仰る言葉はそのまま教団のルールとなります」
そうなの?まあいいや、それならば。
「暗部に行わせる犯罪行為は禁止。悪い奴らは粛清の対象とする」
「「仰せの通りに」」
「過度の集金は禁止。無理に布教することも不要。救いを求める人を救うことに集中すること」
「しかと心に刻みます」
なんだか調子が出て来たぞ。
「惑星ザースも太陽も、この世界が健全であることを望んでいる。よって人、魔、獣は融和して、内部抗争や外敵から星の安全を守るべきであり、魔と獣の無意味な排斥は禁止する」
「さすがは星の使徒。至言でございます」
枢機卿達は感激のあまり、滂沱の涙という状態だ。
「教団の悪い膿は出す。ジュピター枢機卿、暗部を粛清するにはどうすればよい?意見を述べてくれ」
「はいっ!暗部は、麻薬を扱う薬品部と、誘拐と売春を扱う職業斡旋部、武力行使を扱う警備部に分れています。薬品部と職業斡旋部は潰して、まともな者だけを集めて警備部を整備するのがよいと考えます」
「それはいい、そうしよう。じゃあさっそく始めるか。俺はこの部屋を一歩出れば、人神などではなく、一介の冒険者ハジメだぞ。よいな」
「「仰せのままに」」
まずは薬品部から。
ジュピター枢機卿に案内してもらい、彼は部屋の外で待たせておく。
ハナとプルリンを連れて、乗り込んでいく。
広い部屋にガラの悪そうなのが大勢たむろしている。
「なんだ、テメエは?」
「おれはSSSランク冒険者のハジメだ。枢機卿暗部を解体しに来た」
冒険者カードを見たら、SSSになってたよ。そう言えばSSになった後も、結構討伐したり人助け星助けをやたもんな。
ざわざわざわ。
「Sランクですら見たことがないのに、SSSだと?」
「ふかしじぇねぇのか」
「いいかよく聞け、お前たち。これからどうしたいのか正直に述べてみろ」
精神感応のギフトと闇魔法の精神操作で、真実を述べずにはいられない状態に縛る。
これはいいな。「呪縛」と名付けて魔法登録しておこう。
「俺様は教団を利用して麻薬ルートとブツを完全に掌握して麻薬王となる。機をみて教団も乗っ取ってやるぜ」
「おう。俺は親分にどこまでも付いていく。そして隙あれば親分にとって代わってやる」
トップとナンバーツーらしき、特に悪そうな奴らが宣言する。
少しましな感じの奴にしゃべらせてみる。
「わ、私は悔い改めたくて教団に来たんだ。悪いことはもうやりたくない」
「よし、お前ら、親分に賛同する奴は右へ、悔い改めたい奴は左へ寄れ」
呪縛を発動しつつ命令する。
がやがや、どたどた、薬品部の暗部どもが移動を完了した。
悔恨派は1割未満の少数派。ほとんどは親分側だ。
「さてと、悔恨派の諸君、君らの身分証明の盗賊表示は消す。追って沙汰をするからしばしここで待て」
久々に表示変更のギフトをオンにして作動させる。
まあ守護者だし、人神らしいし、魔神や獣神から好きにやれと言われてるから、このくらいはいいだろう。
「そして残りの貴様ら、貴様らはダメだ。存在を消す」
1000倍時間加速して、有無を言わさず全員の首を刎ねる。
盗賊表示のある身分証明カードを全員分回収した後、流れた血も含めて遺骸の全てを消滅させる。
「これで一段落だ。悔恨者達よ、没収するから麻薬を集めて置け。ねこばばしたりすればどうなるかは分かるな」
「「はいぃぃ!!」」
うん、良い返事だ。
薬品部を後にして、次は職業斡旋部。
全く同様に処置する。ここでも悔恨者は1割未満。まあ全滅でないだけましか。
「悔恨者達よ。もとのところへ戻すから子供たちや女性達の束縛を解け、丁寧に扱えよ。ハナとプルリンは保護活動を監督してやってくれ」
「「はいぃぃ!!」」
「はーい」「うんわかった」
最後は警備部。
ここはさすがに武闘派がそろっている。なかなかの迫力だ。
「なんだ、お前は?」
前の二つと同じ展開で話が進む。
おや?今度は悔恨派が結構多いぞ。3割はいる。
麻薬や誘拐と違って、警備はそれ自体はまともな仕事だからかな。
やはり環境が人を作るようだ。
ダメ組の首を刎ねてカードを集め、残骸を消滅させて綺麗にしてから、残った奴らに話をする。
「お前達は今日からは名実ともに犯罪者ではない。教団のための聖騎士団となり、警備その他の荒事に従事する。聖騎士団の名に恥じぬよう、品良く勤めるのだぞ!」
「「イエッサー!!」」
跪いて恭順の礼をとっているジュピター枢機卿を立たせて、今後の処置をお願いする。
「薬品部と職業斡旋部の悔恨組も合流させて、聖騎士団の組織構成をお願いします」
「はっ。承知致しました」
新米騎士団員がこぞって感謝の言葉を口にする。
ざわざわざわ。
「人神様ありがとうございます」
「人神様にご拝顔できるなんて」
「教団に入って良かったー」
「こらお前たち!俺は一介の冒険者ハジメだ」
ざわざわざわ。
「さすが人神様ともなるとSSSランク冒険者なんだな」
「まぶしい、いずれにしても雲の上のお方だ」
これはダメかも知れない。枢機卿が恭順の礼をとっているのがまずい。
「ジュピター殿、あとは頼みます」
さっさと逃げ出すことにする。
聖星教の粛清を成し遂げた
ハジメはレベル130になった
連鎖のギフトを得た
さっきので、きちんと粛清できたんだ。
レベルが10もアップした。
結構評価が高かったな。
ハジメ 5歳? レベル130
称号 宇宙環境を整備する者
基礎値 オール∞
SUN値 58
ギフト ポイント74
残6
連鎖/表示操作/結界操作
圧縮/波動操作/次元操作/星格認知/転気/
超闘気/因果視/精神感応/巻き戻し/上限撤廃/
念体/索敵Ⅱ/自己確認Ⅱ/万物創造/発動妨害/
透過/遠隔操作/選択行使/分身/空間時間設定/
繭形成/ドリル弾/天翔/ギフト創造登録/式神/
再生/幽視/変化/転写/認識領域拡張/
魔法創造登録/罠対応/理力操作/熱操作/地操作/
空気操作/光操作/水操作/聖操作/闇操作/
素粒子操作Ⅱ/電磁操作/空間操作Ⅱ/重力操作/時間操作Ⅱ/
気授受/生命力授受/危機感知究/危機対応究/物理耐性究/
魔法耐性究/隠形/状態異常耐性究/鑑定/判別
自然充填究/自然回復究/成長促進究/蘇り/武器技能/
付与/他者確認/言語対応/神知/自由設定
スキル
広範囲探知/次元転移/長距離転移/広範囲探知/
武術/闘気/不老不死/気配察知/GPS索敵 /念体索敵
冒険者カード
氏名 ハジメ ランクSSS 1級
種族 人族
年齢 5歳
レベル 130
あれ、午前中に1SUNだったはずなのに、58SUNになってる。
レベルが10アップしたせいかな。
ライザ遺跡で夕飯食べて、今日の出来事をみんなでワイワイ話し合った。
俺が人神扱いされたことは、なぜか大受け。
みんな、そこ、笑うとこですか?
異世界定期便第26便 ザース春23日ライザ遺跡 → 日本自室8/2火曜日




