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モニュメント

体が動かないのは、妙な波動が体表に纏わり付いているせいだ。しかも徐々に浸透してきている。

しかしながら幸いなことに、まだ魔法の発動は阻害されていない。

まずは時間操作で時間を停止させる。


周囲を見渡してみると、俺を包囲しているのは無数の念体製の竜頭だ。こいつらが妙な波動を吐き出している。

そして本体が俺に迫って来ていた。最も近い2頭は牙をむき出して噛み砕こうとしており、他の5頭はそれぞれブレスの準備に入っている。加えて鉤爪が今にも振り下ろされんばかりだ。本体は時間停止下で静止しているものの、凄い躍動感に満ちている。非常によくできた芸術作品のようだ。


さてどうするか。

まずは、発動妨害を全方位に放射する。時間停止下でも問題なく放射できた。例の波動とは相互に阻止し合う関係性のようで、最初こそ少しもたついたものの、直ぐに地力の差で、爆発的に押し込んで行くことができた。悪しき霧が掻き消されて、世界がスッキリ晴れ渡ったような心地良さがある。


妙な波動の影響が消えて、代わりに発動妨害の気が行き渡り、多数の念体竜頭は、物理攻撃以外は無力化されたようだ。

そして多頭竜本体、こいつは油断ならない奴だけに、念を入れて始末したい。

原子破壊を領域的に展開して全身の細胞を一瞬のうちに核子化し、加えて遠隔操作+選択行使+転移+断裂空間で、まるごと断裂空間内に送り込む。以前に「絶対消滅」として魔法登録していたが、ここで有効活用できた。


多頭竜の全身がぶぶっとぶれて見えたと思う間もなく、暗黒の球体とともに本体は完全に消え去った。

本体が消滅すると、周囲の念体竜頭どももフッと蠟燭の炎を吹き消すように掻き消えた。


多頭竜の脅威を退けた

創はレベル104になった

創は多頭竜スレイヤーの称号を得た

創は波動操作のギフトを得た


終わったようだ。

あ、しまった。なんか戦いが終わったら最後に一言とか聞いた気がするが。まあいいか…。

などと思っていたら念話が届く。

「さすがだな。お主の甘さに付け込んで、瀕死の力を発揮しようとしたが、見抜かれていたと見える」

え、いや、それは…。というか、それよりも、あんたまだ生きてるの!?


「ふふふ、安心せい。私はゴブレムの枷を外した新しい小さな体で復活したが、もはや地球をどうこうしようという気はない。既に地球からはかなり離れておる。復活した私の望みは、仇敵を討ち果たすことのみだ」

「そうか、それなら邪魔はしない。ただ、最後の一言というのを教えてくれないか」


「お主の敵のことだ。ゴブレム人は下っ端の一種族に過ぎん。奴らは銀河を掌握する『帝国』と称する。無数の支配種族を配下に従える帝国人というのが元締めだ。私もその正体は良く知らんのだがな。その帝国人が地球に執着している。今後も刺客は送り込まれるだろうから油断するな。ゴブレムには地球に龍がいたとだけ告げた。お主のことは伝えておらん。言いたかったのはこのことだ」


「うーん、やけに親切だな。なぜだ?」

「元々お主には何の恨みも無い。心躍る戦いをさせてもらったし、何よりもゴブレムの枷を外すために利用までさせてもらって、むしろ感謝しておるのだ」


「そういうものか。まあいい。望みを果たせるといいな。武運を祈っているぞ」

「ふははは、ありがとうよ。その甘さがお主の魅力か。お主はまだまだ途轍もなく強くなるだろう。変なところで躓くな。そしてしっかりと帝国を苛め抜いてくれ」

「成り行きによっては、俺の方が先にゴブレム人をやっつけてしまうかも知れないぞ」

「ああそれも構わん。敵には事欠かぬからな。ふはははは。ではさらばだ」

*****


戦いの済んだ大洋の小島に、狐人や火竜達がやって来た。エンジェル族とデーモン族には転移能力を持つ者がいるようだ。

「ご苦労さんじゃった。さすが儂が見込んだお人じゃ。ふふん!」

なぜかどや顔で鼻息を荒くしているのは狐人の長だ。

「力技でしたが。そういえば雷龍雲龍さん、やられちゃいましたね。どんな人だったんですか?」

「こんな人」

ぼふんっと、たまもが変化して、在りし日の雷龍雲龍さんの姿になる。


「おお、何と見事な姿形!もはや芸術品ですね。あ、これを使えば…」

俺は、小山のようになっている黄色と濃い灰色の粉、雷龍雲龍さんの遺灰を使って生前そっくりの式神を作ってみせた。

「わはははは。これはいい。良い見本ができたわ。ぐわっはははは」

「火竜殿、不謹慎な。笑い過ぎですぞ!」


「いやいや、これを見よ」

火竜さんが掌に載せているのは、体をぴったりとくっつけている2羽の龍鳥だ。

「これはな、雷龍雲龍の忘れ形見、というか、雷龍雲龍そのものだ。これに奴の魂が宿っている。まだ幼くて喋りもせぬがな。ほれ、お前さんの完成形が保存されたぞ。分かりやすい見本が出来たよかったな」

「ぴーぴぴぴっ」(おう、気合が入るぞな)


「その鳥には既に雷龍雲龍さんの意識が入っているのですか?」

「そうじゃ。もとの姿に戻るには数100年はかかるだろうがな」

「ぴぴぴっ」(そんなもんかの)

古代龍の復活というのはずいぶんのんびりしたものなんだなぁ。


そうだ、記憶が鮮明なうちに、あの躍動感あふれる多頭竜の姿を保存する式神も作っておこう。

奴の念体が展開していたあたりの土を使って、今にも襲い掛かって来そうな多頭竜の姿を再現する。

火竜さんはじめ、皆さんはちょっと納得がいかないご様子。

訳を説明しておこう。


「多頭竜から、かくかくしかじかな話を聞いたのです。なのでこの後も龍が標的にされる恐れがあります。そして多頭竜は刺客側にとっても厄介な存在だったようですから、ここに奴の式神を作って置くのは、敵の侵攻を察知するためにも有益だと思うのです」

「なるほどな、そうなると次に狙われるのは、最強の……、いや竜族最強の儂ということか」

「ぴーっ!ぴぴっ」(異論ありっ!)


刺客側の動きとしては、まずこの小島を観察し、次に火竜さんを狙うのが、最もありがちだろう。

敵の眼を惹くためにも、ここはひとつ、多頭竜対雷龍雲龍の戦いの場面を式神で再現、とまではいかないが、とりあえず向い合わせに設置しておこう。


頭が合計9つもあってややこしいが、それにしても見事な造形だ。

凄い芸術的なものが出来た気がするぞ!

龍のモニュメントとか名付けて名所になってもよさそうな出来栄えで、我ながら大満足!

静止していてもよし、若干動いてなおよし!


宇宙からの刺客がやって来たら、直ぐに龍の式神が反応して各所に連絡が行くように仕組んでおく。

ここはこれでOKだ。あとは…。


「火竜さん、そして皆さんにも、ひとつ提案があります。刺客対策にもなりますし、レクリエーションとしても優れている迷宮施設があるのですが」

タミル迷宮のことを話して、迷宮契約しないか聞いてみた。

「ほぉ、面白そうなところだな。儂は構わんが」


「私たちは一族の合議に図らなければなりません」

他の古代種族達は当然の反応。大勢で暮らしている人たちはそうだよね。

「迷宮側にも話を通さないといけないので、少し時間はかかりますが、俺の方でも準備を進めてみます」


古代種族の人達も勇者クラブメンバーも共に強化できて、良い話しじゃないかと思う。

この人たちが結界から出て、世の中に関わって行く第一歩になるといいな。まあ勇者クラブ自体が未だ秘密組織なんだけどね。

*****


ガーディアンズ本部で、重鎮3人に事の顛末を詳しく話す。

多頭竜が刺客として送り込まれてそれを退けたこと。

ゴブレム人や帝国の話。人間が資源として狙われている話。

それと、結界に潜んでいた、火竜、狐人、エンジェル族、デーモン族、魚人族、鬼族、雪人族、狼人、グレイ族、龍鳥、彼らを迷宮に入れたいということ。


「いやいや、よくやってくれた。重要情報も掴んでもらったな」

「人間自体を狙っておったとはのぅ。しかも今後も攻められる可能性大じゃから、対策をしっかり練らないといかんな」

「結界族と勇者が迷宮で切磋琢磨しながら、共に協力して刺客に当たるのは良策だ」

「しかし、何しろ問題が非常に大きい。関係機関にも図りつつ、継続審議としよう。なに、我々のことだ。そんなに時間は掛からんよ。明日には結論が出るだろう」

さすが、この組織は話が早いなぁ。研究機関もこんな風だといいんだけれど。


「ああそういえば、クリエが持ち込んだカービルとカービィナイトだが、あれを素材として勇者クラブの正式装備が作られることになったぞ」

「それから、悪気とエイリアンへの対策として、勇者クラブメンバーが国際警察の特殊部隊として組み込まれることになっての。指揮命令系統は今のまんまで全く変わらないが、対外的に活動しやすくするための身分ができるということじゃ。国際警察官の身分証明書は悪くないぞ」

「これで誰もあなたを妖怪呼ばわりしなくなる、かな?なると期待したい」

「ニコ…、お前にだけは言われとうないわ!」


ふーん着々と物事が進展して行ってるな。国際警察官かぁ。まあ職務質問とかされたときに威力を発揮しそうだな。控えオロウ!とか言えるかな?手渡された俺の身分証明をしげしげと眺めながら、つい妄想してしまう。

あ、これ、創でいるときは使えないや。イタタ…

*****


久々に自宅で夕飯。

といっても両親はまだ帰らないから、たまもと二人だけどね。

たまもはなんだかんだ言って、しっかりと古代種族族と人間界の橋渡しをしてるんだよなぁ。

テレビを見ながら雑誌をめくり、夕飯を食べつつお菓子も確保して、実に忙しそうだ。

「えっとね!熱心に文化を吸収しようとしてるだけで、別に欲張りなわけじゃないからね!」

「うんうん、分かってるって」

いやいや、どん欲なことも結構なことだよ。


異世界定期便第25便 日本8月2日火曜日 自室 →ザース春22日 ライザ遺跡


藤堂創 15歳 レベル104

称号 多頭竜スレイヤー

基礎値 筋力∞/敏捷性∞/生命力∞

    気力∞/気速∞/気量∞/∞


ギフト ポイント71  残7

波動操作/次元操作/星格認知/転気

超闘気/因果視/精神感応/巻き戻し/上限撤廃/ 

念体/索敵Ⅱ/自己確認Ⅱ/万物創造/発動妨害/

透過/遠隔操作/選択行使/分身/空間時間設定/

繭形成/ドリル弾/天翔/ギフト創造登録/式神/

再生/幽視/変化/転写/認識領域拡張/

魔法創造登録/罠対応/理力操作/熱操作/地操作/

空気操作/光操作/水操作/聖操作/闇操作/

素粒子操作Ⅱ/電磁操作/空間操作Ⅱ/重力操作/時間操作Ⅱ/

気授受/生命力授受/危機感知究/危機対応究/物理耐性究/

魔法耐性究/隠形/状態異常耐性究/鑑定/判別

自然充填究/自然回復究/成長促進究/蘇り/武器技能/

付与/他者確認/言語対応/神知/自由設定


スキル 武術 闘気 不老不死 気配察知 GPS索敵 念体索敵




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