表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/136

竜の一族とダークの話

月地下に転移して、山の街を探す。


ぱっと見で、ここが山の街に違いないという場所があった。

地下なのに高山。標高が高いのでほぼ岩だけの山だ。峻険な谷あいに簡素な建物が立ち並んでいる。

近付くとピスの気配がするので、直ぐに訪ね当てることができた。


「家の外も中もびっくりするほど殺風景なところだね」

「ふふ、我らは虚飾を好まないからな」

殺風景だけど、趣味は悪くない、それなりに味わいと品格を感じる。

「まあ竜酒でも飲んで、と言いたいところだが、貴様らには竜茶がよいな」

テーブルの上にはいつの間にか茶器が出現しており、入れてもらった竜茶は馥郁ふくいくたる香りの素晴らしい飲み物だった。


魔都でのできごとを話す。

「という話だったんだ。それで獣神様に会いたいと思ってさ」

「なるほど。そういうことなら竜王を通した方がいいな。声を掛けたからすぐに現れる」

「竜王と獣神ってどういう関係なのかな?」


「ふむ。竜王は俺の親父で獣神は竜族の長だな。血縁はあるんだが、古い縁過ぎて説明できん」

「獣神は獣族全体の神様なんだろう?」

「ああ。獣族は種族ごとに細分化された国に分れており、各国に国王がいる。各国は序列を激しく競っており、勝手に4方獣とか12支獣とか主張しているが、俺の知る限りでは代々竜族が獣神となっているようだ。もっとも竜族の中にも竜族と龍族があって、張り合ったりしているんだがな」


「龍族から王が出ると、国名も龍人国になってしまうのだよ。お初にお目にかかる、竜王のパーシだ」

黒い肌の大柄な紳士だ。この人は黒竜なのかな。

あ、もうひとり現れた。

「お互いにヘビ野郎とかトカゲ野郎とののしりあっていて笑止じゃがな。しかし異種族はもちろん近種族でも同族でも、互いに争い合うのはこれはもう生物の業じゃな。儂はハクリュウだ」

ハクリュウと名乗るこの人は、人型のタツノオトシゴみたいな感じだ。


「ハクリュウ殿は、別の宇宙からやってきた別種の竜人なんだ」

ピスが説明してくれる。

「竜はどこの宇宙にもおり、大体同じように支配種族になり、長命になり、繁殖力が衰えて孤高の少数民族になるのじゃよ。そして儂のように宇宙を漂う」


「人はどうですか?やっぱりどこの宇宙にもいますか?」

「ああ、どこにでも大勢おるな。人族は増える。そして一気に滅亡するか、あるいは、広く周囲の宇宙を支配する種族にまでのし上がった後に一気に滅亡して、孤高の少数だけが残り宇宙を漂うことが多いかの」

「なんか、すごくありがちで納得してしまうのが自分でも怖いです…」

「「はははは」」



「それはともかく、ハクリュウ殿はハジメに話したいことがあったのではないですか」

「そうじゃった。エルフのエレーヌに頼まれておってな、ダークのことじゃ」

「あ、お願いします!それ、ずっと気になっていたんです」

「儂も完全に理解している訳では無い。人づてに聞いた話じゃからのぅ」

「我らにも分かるように説明してもらえると有難いな」これは竜王様。


「ふむ。どこから話せばよいか…。

我々の宇宙の成り立ちからの話になるが、長い話じゃから覚悟せいよ。

ザースの属する「銀河」は直径10万光年程じゃが、銀河3から100個ほどの集合である「銀河群」が直径500万光年、銀河群が1万個ほど含まれる「銀河団」(あるいは超銀河団)が直径5億光年程度の大きさ、光の届く範囲のいわゆる「宇宙」が直径1000億光年程で、その中には銀河団が約2000万個含まれている、というところまではよいな」


ん?ハクリュウ殿が顔を上げると、全員サッと目を逸らしたような…。

それはともかく、説明は続く。


「ひと続きの同じ空間上にあるが、空間が超光速で膨張するため、光の届かないところにある宇宙、これが隣宇宙じゃ。儂は隣宇宙の産じゃぞ。

隣宇宙はどんどん数が増えるので確実なことは言えぬが儂の知る限りでも1万はあり、実際はほぼ無限にあるはずじゃな。


そして、相の異なる空間に存する並行宇宙。異次元宇宙ともいうな。

この相の重なり連なりにもそれなりの成り立ちがあるのじゃろうが、儂が知るのは異次元宇宙もまた無限に存するということだけじゃ。

この辺の事情については、異次元宇宙の出身者に語ってもらうのがよかろうな。


それから、これら各宇宙と表裏一体の裏宇宙。これは反物質から成る双子の宇宙じゃ。

我らの宇宙をノーマル、反物質の宇宙をアンチと呼ぶ。

物質と反物質は対生成するので双子の存在なのじゃな。

我らのノーマル宇宙と対になるアンチ宇宙とでは、悠久の昔に大いなる和解が締結されて、相互不可侵となっている。

ノーマルとアンチは出会えば対消滅する性質があるため、相互不可侵は双方の利益になるからの。


そして宇宙、隣宇宙、並行宇宙、裏宇宙の全てに干渉する包括的な宇宙、それがダーク宇宙なのじゃ。」


「「ぐーぐー」」

ハナとプルリンは居眠りをしている。

「うーむ、流石の私でも半分理解するのがやっとだ」

「お、親父、半分理解したなんて見栄張ってんじゃねぇ!」

ピスが青ざめている。いや、この人はもともと青かったかな。


「肝心なのはここからじゃが、我が宇宙の質量及びエネルギーの構成割合的には、ダークエネルギーが70%、ダークマターが25%、ノーマルの質量及びエネルギーは残りのわずか5%に過ぎん。

実に95%をダーク関連が占めておることは分かっておるが、さてそのダークとは何かがさっぱり分からんのじゃな。

なぜなら、ダークには我々は干渉できず、その正体を突き止めることがそもそも出来ないからじゃ。


ダークの正体を明かしたのは、万能知系のギフトを持つ超越者の一人だという話じゃった。

それによると、ダークマターはダーク宇宙から漏れ出る重力波、ダークエネルギーはダーク宇宙から漏れ出る反重力波ということじゃ。

ダーク宇宙を支配しているのは、超重量級のダーク人であり、ダーク人は重力と反重力を自在に操作して自身の体を保ち、かつ自由に移動する。

そして他の全ての宇宙に干渉し、逆に他の宇宙からの干渉を一切許さない。

彼らはいわば全宇宙の頂点とも言える存在であると。


そして万能知の予知では、このザースを含む一体は、100年後にダークにより不活性化されて現宇宙から切り取られ、ダーク宇宙に取り込まれるとのことなのじゃ」


「なるほど。確認させていただくと、

・ダークは、無数の各種宇宙を含む全宇宙の支配者とでもいうべき、圧倒的に強力な存在である。

・ダークはこちらの宇宙に干渉できるが、こちらからはダーク宇宙に干渉出来ない。

・ダークは重力と反重力を自在に操り、その余波だけで、我が宇宙の質量及びエネルギーの95%を占める。

・ダークは他の宇宙を不活性化させて、ダーク宇宙に取り込む。

・ザースは100年後にダーク宇宙に取り込まれるという危機的状況にある。

ということでいいですか」

「そのとおりじゃ。そしてもうひとつ、ダークに対抗できる可能性を有するのがハジメ、お前さんということじゃ」


「うーん、そう言われましても………」

「我が宇宙がかつて、対となる裏のアンチ宇宙と血で血を洗う抗争を繰り広げていた時、切り札となったのが一人の超越者であり、彼の者が大いなる和解をもたらしたという。

そして彼の者が救いとなることを予知したのが、他ならぬ先の万能知系ギフトを有する超越者だということなのじゃ。

儂もだいぶ昔に、超越者の一人から話を聞いただけで、これ以上のことは分からんのじゃがな」


「「ぐーぐー」」

あ、ピスと竜王パーシさんも寝てしまった…。

「気にすることはないぞ。いつもこんな感じじゃからな。あのエレーヌでさえ眠りおったわ。ははは」

少し寂しそうな表情で、そう言って笑うハクリュウさんだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ