魔族の依頼
今回はちょっと短いです。
風邪でしょうか、ちょっと体調が良くないので、更新が少し遅れ気味になるかも知れません。
魔法陣の上を歩くと、一瞬ぐにゃりという感触があったかと思うと次の瞬間には宮殿内にいた。
つるつるに磨かれた石の床に美しいカーペットが敷かれている。
案内されるがままに重厚な木製の扉をいくつもくぐり、階段を昇ったり降りたりして、ひとしきり歩いた後、やっと、玉座の間らしき部屋にたどり着いた。
豪華な椅子に、小さな女の子が脚をぶらぶらさせながらちょこんと腰かけている。
「やあ、あなたが噂のハジメ君か。私はライル=オーガスタ。魔国の王だ。君のことはセヌエフから聞いているよ」
「はじめましてライル陛下」
「「こんにちわ」」
「ところで、食事はもう済ませたかな?」
「いえ、これからです」
「それなら、一緒に朝食にしよう」
「は、はい」
「「やったー」」
ハナとプルリンは輝くような笑顔だ。
玉座の間を出てしばらく歩いて、質素で落ち着いた雰囲気の部屋に入った。
「ここは、私の私室でな。親族や気の置けない客人との食事はここで取ることにしている」
大きなテーブルの上に既に沢山の料理が並んでいたが、追加で次々に持ち込まれる。
最初はスープからかな?あ、こらプルリン!ハナまで!
「ははは。作法など気にする必要はないぞ。好きにやってくれ」
魔王の隣の席が空席になっている。
「ん、ここか、おじい様がそろそろ来るはずなのだが」
いったん料理に手を伸ばし、次に席を見たときは、もはや空席ではなく黒ずくめの男が座っていた。
「紹介しよう。私のおじい様で魔神のジラル=オーガスタだ」
「ジラルだ。ハジメ殿らのことは聞いておる。迷宮探索のことや守護者としても活躍振りもな」
なんだか、もの凄く怖そうな人だぞ。
「儂を恐れることはないぞ。守護者ハジメ殿と事を構えるほどの怖いもの知らずではない」
いやあ、本能的に怖いんですが。
迷宮の話とか精霊族の話とか、あたり障りのないことを話していたが、話題が黒の団に及んだ。
うーん、そこ、避けてたんだけどな。
「儂はな、あ奴らが大嫌いなのだ。魔都にもおったが、殺し尽くしたら寄り付かなくなったわ」
な、なるほど、魔都が黒の団の空白地帯なのはそういうわけだったのか。
「ハジメ君が黒の団を懲らしめてくれて、私もおじい様も喜んでいるの」
「遠慮なくビシバシやってくれていいぞ」
「は、はい。最終的には司直に委ねようとは思ってますが」
「いや、司直は司直なりに、きっちりと生温く進めるだろうから、ハジメ殿はもっとこう、な」
「ハジメ君の判断で黒の団関係者を殺しちゃっていいから」
「むしろ目にしたら積極的に殺し尽くしてもらいたいのじゃ。ザース上を旅する守護者など、他におらんからのぉ」
「ええええ!まじですか!」
「大真面目。獣族の凶獣組と人族の聖星教も、黒の団を同じような奴らだから、こいつらもやっちゃって」
「凶獣組、聖星教、黒の団はザースを内側から蝕む汚物なのじゃ。守護者ハジメ殿に掃討をお願いしたい」
「ハジメ君の判断で魔族、獣族、人族のいかなる者を殺しても、魔国は一切責任は問わないよ。魔王の名において約束する」
「そもそも魔族は一切責任は問わぬ。魔神の名において約束する。というかの、守護者の判断を信用せんでどうする」
あれ?魔神と守護者って、対立はしてないのかな?
「もっとも、魔族は人数が少ないので、なるべく獣族と人族の方を積極的に殺してもらいたいがの」
あー、やっぱり。
「ジラル殿は守護者になろうとはしなかったんですか?」
「儂はな、魔族第一主義というか、魔族だけが大事でな。魔族のためになるなら獣族にも人族にも協力するが、魔族と対立するなら獣族と人族は根絶やしにしても良いと思っておる。ここが、ザース第一主義で、魔人獣の協調を唱える一派とは相容れぬのよ」
「ただね、魔族は少数精鋭だから、魔族が生きて行くには獣族も人族も必要なのよ。だから気持ちはともかく、やることは守護者とあんまり変わらないわね」
なるほど。。。
「魔族として殺害許可を出すが、獣神と人神からも許可を取り付けて置くのがよいな。獣神はバカだけど悪い奴じゃあない、人神は腹黒い奴だ。まず獣神から先に落としておくとよい」
「まあ獣大陸と人大陸でどうなろうと、魔大陸はいつでも歓迎するから安心して」
うーん、それはちょっとなー。
「獣神は凶獣組を本気で取り締まっておる。そこは魔族と同じじゃ。しかし、人神は聖星教と一面で癒着しておるからの。困ったものじゃ。なんならハジメ殿と魔族と獣族で、人神と聖星教を滅ぼすのも良いな」
「いえいえ、戦争はだめですよ!」
「ははは、さすが守護者じゃ。なんならというだけで、特にこだわりってはおらんよ」
いやー、なんか前に、人族に味方して、魔族と獣族の連合軍を打ち破ったりしましたが。。。
無条件殺害許可証などというカードをもらって、宮殿を後にした。
「これさー、どう思う?」
『悪くない。ザースのためになる。権利であって義務ではないから邪魔にはならない』
{獣神と人神に会うのが、ハジメの進むべき道だケロン}
「まず獣神からか。やっぱり紹介者がいないとだめだろうな。獣神を知っていて紹介もできそうな奴と言えば、あのお兄さんだな」




