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悪気

「ニコさん、ちょっと黒ガスの調査をしてきます」

「あ、ああ」


自室へ転移する。

「で、たまも、悪気ってなんなの?」

「うむ、悪い気じゃ。谷底の穴から噴き出して来て、獣にも狐人にも取り付く。弱い者ほど取り付かれやすい。強い者は悪気を弾く」

「退治する方法はあるのか?」

「魔法じゃな。闇の魔法や呪術はダメじゃ。その他の魔法なら大体効く。強く攻撃すれば悪気と憑かれた者を諸共に滅ぼし、弱く攻撃すれば悪気のみを滅ぼせる。憑かれた者も無傷では済まぬがのぅ」


噴水池の式マーライオンで予告しておいてから、ゴビ砂漠の狐人の里に転移する。

「ようおいでなさった。たまもは励んでおるか?」

「もっちろん。それみやげじゃ。これが人族の文化の成果じゃ」

里の子供たちは、たまものおみやげのお菓子やジュースそして漫画に釘付けになっている。


「長老、悪気のことをお尋ねしたい」

「悪気ですか。遥か西の山間部から立ち上る瘴気が集まって悪さをするアレですかな」

「それです!」

詳しく聞くと、アルタイ山脈の谷からガスが噴出しており、集合してヤギ等に憑依するとのこと。

「憑依ヤギを倒すのが、里の成人の儀式となっております。稀に雪豹に憑依して大事になりますのじゃ」


さっそく長老とたまもを連れてアルタイ山脈上空に転移する。

鷲に変化して長老が悪気の谷に先導してくれる。

「ふーん、これは。噴出っていうか。。。」

谷底の岩の裂け目、砂粒の隙間等から、薄い黒ガスが広範囲にゆっくりと立ち昇っている。

そのまま上空まで昇ると偏西風に乗って、地球全体に行き渡りそうな感じだ。


「地表全体から出て来るな。これを根絶やしにするには範囲浄化なら行けそうだな」

{悪気は地球が気を生産する際の副産物だ。更には地球に魔法文化が芽生えるための必要悪でもある。だから、手を付けない方がいいケロン}

「え、そうなの?副産物ってのはまだ分かるけど、必要悪ってどういうこと?」


『免疫力が鍛えられるのは無菌状態ではなく適度な有害菌のいる環境だ。同様に、魔法力を鍛えるためには、悪気の害悪があった方がいい。そういうことだな』

「ふーん。えっと、憑依体を倒すのはいいのかな?」

{その経験を積み重ねるのが良いケロよ}


悪気は、下降気流があると降りて来て濃くなることもある。

そこにヤギが近づくと、あ、吸い込んで、憑依された。

ヤギの顔つきがいきなり凶悪になる。

「悪気が憑くと、性質が狂暴になり、体は頑強になりますのじゃ」


良いサンプルが出来た。悪気憑きヤギを理力の檻に確保して、長老を送ってから、タミル迷宮へ転移する。

「タミルさん、こいつ、悪気という憑き物が憑いたヤギなんだけど、迷宮契約できる?」

「お安い御用でおま。契約書にこいつの血を一滴たらして、これで迷宮の使役モンスター一丁上がりだす」


遊撃隊メンバーを呼び出す。

「悪気というのはかくかくしかじか。ということだから順番にこいつを倒してみろ」

魔道具に頼らずに素の弱めの魔法がちょうどいい感じだ。

大体はヤギも同時に殺してしまうが、上手く制御できるとヤギは瀕死だが生きており、治癒させて無憑依状態の健康ヤギを取り戻すこともできた。

無憑依ヤギを取り戻すには、雷魔法と聖魔法が比較的使い易いようだ。


健康ヤギが戻っても、悪気が復活すると再度憑依されてしまう。

悪気復活前にヤギを別室に隔離すると、、、悪気はアンソニーに憑依しようとした。

「ちょっ、、、なんで俺にだけ!?」

「悪気は弱い者に憑く。アンソニー、舐められてるぞ。もっと修行しないとな」

幸いアンソニーは気を乗っ取られることはなかったが、勇者が憑依されたら大変危険なことになる。


仲間が憑依された時のために、幽体で斬ることを指導したが、誰も出来なかった。

タミルさんでもダメか。

少なくとも幽体を意識できる人じゃないと、幽体を操るのは無理ということのようだ。

まあ無傷は無理だとしても、弱い勇者でもそう簡単には死なないから、勇者を瀕死に留めて悪気だけ倒せばいいか。


さて、ここらで遊撃隊に実戦活動をしてもらおうかな。

GPS索敵して見ると、世の中に悪気憑きは結構多いな。

中でも危険そうなものは、、、うん、これなんか危険だな。

NY郊外の大学構内を、悪気憑きの学生が銃を隠し持って歩いている。


遊撃隊のメンバーを伴って、大学上空に転移して滞空する。

「ドロシー、悪気憑きの気配を探知できるか?」

「はい、あそこに」

「にゃう」

ユリアも分かるようだ。


「みんなに任せるから好きなようにやってみろ」

「はい。じゃあ、みんなを連れて標的の後ろに転移します」

ドロシー主導の集団転移。

「殺してやる。。大勢道連れだ。。食堂がいいな。。この銃で。。」

男はこちらに気付かず、ぶつぶつ呟いて歩いている。


ユリアが背後から風の爪で、背中をバサーッと斬り下げる。

エンゾが理力の触手で腰のあたりを貫通させる。

アンソニーが弱めの雷で男の頭上から直撃する。

「おいおい、やり過ぎ。今のどれか一つでも十分だ。白石治療を!」

「はい」白石が素早く聖魔法の治療を施す。男はなんとか一命をとりとめた。

銃を取り上げて、意識のない男を芝生の上に転がして置く。


「よし完了だ。今ので若者が多数死亡する銃乱射事件をひとつ未然に防いだぞ。ユリアとエンゾとアンソニーは、攻撃の連携をしっかり考えて適度に攻撃するようにな」

「「「イエッサー(にゃっ)!」」」


もうひとつやって見よう。

今度は高速道路の上に転移した。

「ドロシー分かるか?」

「はい、あのトラック」

運転手が悪気憑きだ。

「トラック自体が走る凶器だから気を付けろよ」


「はい。荷台に集団転移します」

荷台からエンゾが、理力で悪気憑男を縛る。

その後、ドロシーがアンソニーと運転席に転移して、アンソニーがトラックを運転する。

ドロシーが縛られた男とともに荷台に戻ると、白石が聖光剣で悪気を斬る。

その間、ユリアは影空間を通って運転席に入り込み、爆発物を咥えて荷台に持ち込む。

ドロシーがそれを転移で捨てに行こうとするが、それを制して、俺は収納空間付きポーチを渡す。

「この中に収納できるか?」

「こうですね?」魔道具なので気力さえ込めればドロシーでも問題なく使える。

「危険物はこの中に収納しろ。大きいモノも入る。中は時間が流れていない。取り出すのは俺に任せてくれ」


うんいい感じだ。

「トラックを利用した爆弾テロ事件を未然に防いだぞ。上出来だ」

ドロシーの探知と転移。エンゾの理力。アンソニーの弱い魔法。ユリアは風、闇移動、鋭敏。白石の聖魔法と治癒。いいチームじゃないか。攻撃されてもエンゾの盾、白石の結界がある。


トラックを路肩に止めて、全員でNY本部に転移する。

執務室でスティーブとニコに、悪気に関する諸々と、遊撃隊が悪気対策チームとして機能することを説明する。

「なるほど。事情は理解した。見事な成果だな。各国の警察に情報を流す。警察からの救援要請に対応できる体制を整えて置こう。遊撃隊はその一番手だな。頼むぞ」

「「「イエッサー(にゃっ)!」」」

「ドロシーを副隊長に任命する。俺が不在の時はリーダー役を頼む」

「はいっ」


悪気に対して適切な対策をとった

創はレベル79になった


おっ、評価されたぞ。

その後、タミル迷宮で、皆さんに悪気関連のあれこれを説明。

タミルさんたらビデオ撮影してて、講義動画として編集するとのことだった。


悪気をもう少し集めてもっと強い動物とか魔物に憑依させれば、強いモンスターがゲット出来そうだな。

でも、悪気がまとまると憑依能力が強化されるかとか、その辺の研究を先行させないと危険だ。

とにかく、武器持ちや魔法持ちが憑依されたら大変だからな。


そして、リーさんは幽体攻撃が出来た。

彼には、各支部のリーダーを始めとする勇者クラブメンバーに対する幽体攻撃の指導をお願いした。

リーさんは、真面目だし粘り強いから、きっと成果を上げてくれることだろう。

*****


今日は迷宮での訓練をやる暇が無かったなぁ。

自室に転移して、たまもと夕食を取りながら、今日のことを振り返る。

「悪気って、たまも達にも憑くのか?」

「うむ。心が不安定になっている里の者にも憑く。憑き狐という危険な状態になるのじゃ」

「え、狐憑きじゃなくて、憑き狐。。。」

「悪気の憑いた狐人が人族に色々悪さをしたことも過去にはあった。嘆かわしい限りじゃ」


「悪気って昔からあったんだ」

「そうじゃ。ただ、ここ10年程で悪気の濃度が跳ね上がっていると、じい様が話しておった」

うーんそう言えば、無差別テロとかそういう事件が増えたのはここ10年くらいだったかな?

必要悪が増えたということは、魔法の素地が出来つつあるということで、良いことなのかな?

俺には良く分からない。

{長ーい目で見るケロよ}


階下のリビングに電話がかなり掛かってきている。

基本的に電話には出ない俺だが、さすがに気になって見に行った。留守電の数が凄いぞ。

あ!忘れてた。例の報道解禁は確か昨日だったはず!?その反響か?


ここのところ、テレビも新聞も見てないし、両親とも顔を合わせてない。

何より藤堂創として行動していないからすっかり忘れてたぞ。

ネットで調べてみたら、結構話題になっている。

賛否両論というか、1賛99否くらいか?

半信半疑じゃなくて、1信99疑。


悪質なジョークだ、話題作りとしては悪趣味に過ぎる、五輪への冒涜だ、日本の威信が地に落ちる、この人物は実在しない、実在する藤堂創とは別人だ、薬物疑惑、ロボット疑惑、等々。

閲覧を続けると気分が悪くなって来た。

まあね、身体能力が向上したのが普通のやり方じゃないことは確かだけど、ちゃんと身体能力で勝負するんだからいいじゃないか。

傍観者は好きなだけ否定して、疑って、非難してればいい。

そんなことは俺には一切関係ない、気にしない。

全種目に出場して、きっちり勝つ。それだけだ。


「勝てるから出てくれと言われて出るだけなのに、えらく大袈裟じゃの。黙って見てればいいものをのぉ。門外漢が無駄に騒いでなんとする」

そうだそうだ。たまも、良いこと言う!

ちょっと気分が落ち着いたぞ。さて、寝るか。



異世界定期便第21便 日本 7月31日日曜日 自室 → ザース 春20日 魔大陸港街







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