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残党一掃と迷宮の拡充と謎の憑き物

7月31日日曜日。朝の訓練。

今日は、魔法は物理力など一部の力が使えない前提、悪い方向に重力や時間が変化した前提などの厳しい条件を自ら課した上での戦闘訓練を行った。

それと力の精密制御。殺さずに確実に制圧できるようにしたい。


どんな過酷な条件下でも、どんな無茶な要求でも、求められる結果を出したいと思うから。


あとは各種魔法のおさらいと、念体でタイセーを再現して棒術の模擬戦をしたりした。

あの3匹とはまた会えるかな?


訓練を終えて自室に戻ると、たまもがPCで遊んでいた。

手を3本にして、キーボードとマウスを自在に操作している。

「あ、もう!この、このっ!」シューティング関係のゲームをしているようだ。

後ろから見ていると、尻尾と耳が右に左に大活躍するかのごとくに動きまくっているのが可笑しい。

「やだっ、キャー!」

ふふ、やられたな。尻尾がぼわっと膨らんでるぞ。

たまもの留学の成果も順調に上がっている。うんうん。

*****


朝食後に、NY本部へ飛ぶ。俺の頭上には、隠れたまも付き。


重鎮3名揃い踏み。

「念体ウイルスじゃが、だいぶ広がったの」

「ええ、巨艦?らしいものも12個めになりましたね」

「これは、直径10キロもある球体の構造物で、人口小惑星とでもいうべきものだな。この中には、実にさまざまな種族が居る」

「まるで動物園」


{月基地と木星船団基地は早めに潰すケロン。人口小惑星は放置がお勧めケロよ}

「で、どうしますか?月基地と木星船団基地は早めに潰すのがいいと思うのですが」

「儂もそう思う。その二つは地球侵略のための基地じゃからの」

「ああ私も賛成だ。人口小惑星の方は、どうも多種族連合のネットワーク拠点のようなものらしいから、下手に手を出すとやぶ蛇になりかねんな」

「賛成」


「じゃあ早速やりますね」

念のため、現地へ観測用ウイルスを一匹ずつ転移で送り込む。

まず月の裏側の地下基地。

全体を絶対零度にして、生命反応も機器反応も消えたことを確認してから、まるごと収納する。

いつか何かに役立つかも知れないからな。


次に木星の裏側。

同じく全船団を絶対零度にして、生命反応も機器反応も消えたことを確認して、まるごと収納する。


奴ら、何の用心も対策もとっていなかったようで、抵抗一切なし。

簡単なお仕事だった。


太陽系内の#を一掃した

創はレベル75になった

創はレベル76になった

創はレベル77になった

創はレベル78になった


4レベルアップか。簡単な割にはまあまあだったな。遠隔地任務だからかな?


ガーディアンズ本部のモニター画面は、暗転して中央に「入力信号なし」となっている。

新しい観測ウイルスからの映像に切り替えると、そこには何もない月面と木星表面が映っているだけだった。


「ほ?もう終わったのかえ?」

「ええ。遠隔操作で始末しました。抵抗はありませんでした」

「ふむ。実感は無いが。。。ひとまずめでたしめでたし、かな?」

職員達は、ぽかんとしている。


やばい。また失敗したかも。もっと演出が必要だったのかな?

まあそういうめんどうなのは、いいや、もう!

*****


その後は、タミル迷宮に転移する。

「タミルさん、お土産がありますよ。はいこれ」

「そらおおきに。本やね。これ何語やのん?」

あ、そっか、読めないよね。

「入手経路は聞かないで下さいよ。謎の秘本、『迷宮拡張キット』です」

「うほ!ごっつい怪しげな本でんなー!」


本の指示通りに、迷宮の核の近くで、『袋綴じ広げるだけ魔法陣』を6つ、6角形に配置して気を流し込むと、中心にエネルギー渦が出現し、そこから迷宮の核に向って、放電現象のように気が注ぎ込まれる。


「すご!これは、ほんまもんですな!!」

迷宮の各階は広くなり、天井も高くなり、階層は地下50階までに増えた。


そうだ、いいこと思いついた。

万物創造で英語翻訳本を作る。

「まだありますよ。お土産その2、じゃん!」

「うは!今度は禍々しい挿絵の本。あ、英語や!『迷宮用モンスター召喚術初級編』!?」

「もひとつありますよ。これが最後『迷宮用モンスター召喚中級編』です」

「えらいすんまへんなー。これで充実のモンスター揃えになりまっせ!!」


初級編で100種類、中級編で50種類のモンスターが、迷宮契約込みで召喚できるらしい。

試しに、初級編から豚人系魔物オークと植物系魔物トレント、中級編から豚鬼系魔物オーガと大木系魔物エントを召喚してみた。

見事成功!

「やっぱりホンマモンの魔物はエライ迫力ありまんなー」


そうなのだ。特にオーガとエントはでかくて怖い。おまけに臭い。

それでも迷宮契約があるから、迷宮契約者同士ということで友好的だ。

それが、「挑戦する」と宣言したとたん、ガーッと襲い掛かってくる。

倒すと消えて、階を出ると復活する。

いいぞ!大成功だ。


「これで上層階も中層階も充実しよりましたでー」

敵種類も増えたし、階層毎の強さ調整もばっちりだ。

それに天井が高くなって、大型モンスターが心置きなく行動できるようになったのがいいな。

*****


迷宮作りで遊んでいたら、本部から呼び出された。


「どうかしましたか?」

「ちょっと気になる犯罪者がいてね、見てくれないか」

「どの辺が気になるんです?」

「銃が効かなくて警察が手を焼いたらしい。ニコが捕まえたんだがね。ここの地下に確保してある」


地下留置場まで行ってみた。

鉄格子と金網で隔離された牢の中に、見るからに異様な形相の男がいた。

しかし、鑑定してみると、意外なことに普通の人間だった。

ジョン=スミス 人 31歳 レベル3

「ニコさん、こいつですか」

「ああ。こいつ、痛覚と再生力が異常だ」

ニコがいきなり銃を取り出して、異様な男に向けて発砲した。

銃弾は男の掌を貫通して、背後の壁に立てかけられたマットにバスっとめり込んだ。


男は銃撃も貫通傷も特に気に掛ける様子がない。そして出血はすぐに止まり貫通傷が急激に治癒して行く。

「軽めの物理攻撃だとこんな感じ」

「物理耐性、痛覚無効、そして再生ですか」


男が俺に掴みかかろうとしてくるので、理力で縛ると、ちゃんと縛れた。

小さな火球をぶつけてみると、熱がって苦しんでいる。

「魔法は効きますね」

「ああ。魔法で捕獲した。それと強い物理攻撃だと殺せる。銃弾も連発すると効く」


「こいつは何なんですか?人間っぽいですが?」

「普通の人間に、何かが憑いてる」

憑依?精神感応で男の心を覗いてみる。

『憎い、、殺す、、、人間殺す、、憎い』どす黒い意識が、断片的に強く固定されて、ループしている。

これは単純な精神操作ではない。なので精神感応でどうにかできるようなものではない。

他者鑑定してみると気の部分が黒く塗りつぶされていた。

男の気が奪われて他のものにすり替わった感じだ。

筋力5/敏捷性3/生命力6/気力●/気速◆/気量▼/活力4


脳内協議をしてみる。

「ジョーこいつのこと分かるか?」

『正体は不明だ。ただ気を吸気で吸い出せそうだな』

{自分に取り込まずに、他の物に授気するケロン}

[幽体アストラルたいの刃で黒い気だけを斬れそうです]


よし、やってみよう。

まずは、遠隔操作で男から吸気し、目の前の空間に授気して見る。

気量はごくわずかだ。1~2程度。男の気量はゼロになり、失神状態でばったり倒れる。

授気した空間には、黒っぽい煙かガスのような、小さめの握りこぶし大の塊が漂っている。


「こいつが憑依していたモノか」

ニコさんがそう呟くと、黒ガスはそちらの方向に進もうとするが、果たせずキュッと縮んで反転する。

「なんですかこれ?悪霊ですか?」

俺がそう言うと、黒ガスが俺の方を向く。なにか探られるような感触がして、ピリッと来た。

黒ガスはその瞬間、ギュゥっとかなり縮んで、ぽんっと50センチ程弾き飛ばされる。

【うげぇ。ひでぇ目にあっちまった】とでも言いたそうな感じだ。


次に黒ガスは、倒れている男ジョン=スミスに、すぅーと近づいていって、鼻からするっと体内に入り込む。

と、男がむくりと起き上がり、凶暴な顔で俺を睨みつける。


では引き続き、次の実験だ。

ウルティマⅡを短剣にして、その剣先に幽体を集めて伸ばし、剣状に保つ。

その幽体の剣身で、男の体を頭の先から縦に真っ二つに斬り下げる。

傍から見ると、男の近くで短剣を素振りしているように見えるはずだ。

肉体に直接触れていないので、傷つけることはない。


しかし「グワッ!」と大きく叫んで体を硬直させた後、男が再び倒れる。

失神してはいるが、表情は穏やかになっている。

無事、憑依していた黒ガスだけを斬ることに成功したようだ。

筋力5/敏捷性3/生命力6/気力1/気速1/気量0/活力4



「ニコさん、あれは悪霊ですか?」

「霊ではないと思う」

「銃弾連発だとどうなったんですか?」

「憑依された人間もろとも死ぬ」


「まとめると、

・正体は黒いガス。

・人間に憑依して、気を喰い尽くして乗っ取る。

・弱い人間に憑依する。強者には憑依できないようだ。

・人間に悪意を持っている。

・魔法及び強い物理攻撃が効くが、憑依している人間も傷つける。

・吸記で吸い出すことができる。

・幽体で、憑依された人体を傷付けず、黒ガスだけを退治できる。

こんな感じですかね」


失神している男に授気してやると、意識を取り戻した。自身の気が戻っている。

筋力5/敏捷性3/生命力6/気力1/気速1/気量2/活力4


「あれ?ここはどこですか?」

ふむ、まさに憑き物が落ちたというところか。



{アレのことをたまもに聞いてみるといい}

へ?

念話でたまもに繋ぐ。

「たまも、見てた?」

「うむ。あたしはあいつを知ってる。あれは悪気じゃ」

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