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超能力と学園生活①

四月。

入園、入学、入社──人によっては環境が激変する時期。

草木も芽吹き、柔らかに花開く──そんな季節。



抜けるような青い空に浮かぶ白い綿雲。

日光を反射してキラキラ光る川の水面。

道の脇で満開に咲き誇る桜の木々。

そんな美しいもの達に囲まれた、新しい学校に続く並木道を歩く。心なしか、目に映るもの全てが昨日よりもずっと美しく見えた。


それも当然。今日から私、玉置花奈は中学生になるのだ。


中学校と言えば、楽しい部活動に可愛い制服。小学校にはなかった要素が満載だ。先輩との関わり合いなんかも小学校よりずっと多いはず。そりゃもうテンションも上がるってもんでしょう!

実際、今朝真新しい制服に袖を通した時、声が出ないほどの興奮感が私を襲った。目に見える、中学生になった証。気合いを入れていつもよりおしゃれもしてみたら、鏡に写った自分を見た時、まるで生まれ変わったような気分になった。

そう、私は今日から中学生!中学生らしく、大人っぽく、おしとやかに!!目指せ、優雅な楽しい中学校生活──


「おっ、花奈じゃん!おはよう!!」


後ろから聞こえた声に、ピタリと足が止まる。

………気のせいだね。うん、気のせいだ。私の理想をぶち壊しかねない存在が早くも現れたなんて、気のせいだ。

止まった足を無理矢理動かして、先を急ぐ。さて、早く行かなきゃ。


「おい、花奈~!!無視すんなよ!」


と思ったら、前に回られて行く先を塞がれた。

こうされては仕方ないので、なんとか奴ではないことを祈りながら顔を上げる。

ふわふわの銀髪に、吸い込まれそうなほど深い紫の瞳、男子にしては華奢な体つき、そして私とお揃いの制服。

………間違いない。


「はぁ~………」

「え?何でテンション急降下!?」


そこにいたのは、間違いなく佐倉知春──私の幼馴染みだった。

知春は幼稚園から一緒で家もお隣さんという、典型的な幼馴染みだ。

スポーツ万能で見た目いいから女の子にはモテてたけど……中身は信じられないくらいのバカ。具体的に言うと、ボウリングで「あの棒を倒せばいいんだよ」と教えたら、ボールを押して転がして、でも途中で転んで大泣きするようなバカだった。お隣さんでもなかったら一生関わりたくなかったタイプの人間だ。

だからせめて中学校は離れたかったんだけど……残念ながら同じになってしまった。

私は深い深~い溜め息を吐いたあと、知春に人差し指を突きつける。


「あんたねぇ!いきなり話しかけないでくれますか!?お陰で私の華麗な語りが台無しなんですが!?」

「何が!?華麗な語りって上に書いてやるやつか!?お前あれ半分以上嘘だろ!声が出ないほどとか言ってるけど、お前あの時『キタコレェエエエ!』って叫んでただろ!うちまで聞こえてたぞ!あと声かけただけなのに無視された挙げ句盛大に溜め息吐かれて怒られた俺の気持ち考えてくんない!?」


顔を真っ赤にして怒る知春。

言われてみれば、いくら相手が知春だからといっても少し失礼だったかもしれない。

ぜえぜえと息を切らす知春の肩に手を置き、努めて冷静に謝る。


「ごめんね、知春………折角の中学校生活最初の日に初っぱなから知春と会ってしまったことが凄くショックで………」

「傷口に塩塗り込まれた!!ソレ何の謝罪!?折角の中学校生活最初の日から俺は心を折られたんですけど!?」


今度は膝を抱えて泣き始めた。

思わず背中を蹴りたくなる衝動に駆られたけど、流石にそれは可哀想だ。おしとやかで優しい私は、膝を腰の高さまで上げたところで思い留まった。

かといって慰めるのも面倒なので、知春を置いてとっとと歩き出──と思ったら、知春もついてきた。

足を踏み抜いて歩けないようにしてやろうかと思っていると、知春が話しかけてきた。


「なあ、花奈。俺ら同じクラスになれるかな」

「………さあ?なんとなく、違うクラスになる気がするけど」

「なんでそう思うんだよー」

「ごめんただの願望」

「酷いっ!」


とは言っても事実なのだから仕方ない。

何故かは分からないが、知春とはずっっと同じクラスだった。

幼稚園は勿論小学校もだ。ただの一度も違うクラスになったことはなく、元から仲も悪くなかったから幼稚園3年間も小学校6年間もずっと一緒にいた。

だからこそ!だからこそ離れたいんだよ!!!

………というか、お互い行く中学校が分かった時からずっと聞きたかったんだけど。


「アンタなんで私と同じ学校にしたの?」

「そりゃ花奈と同じ学校に──」

「3秒やる。神への祈りを済ませろ」

「嘘!!嘘です!!ごめんなさい!てかお前どっからその鋏出したの!?」

「ごちゃごちゃうるさい。ハイさーん、にーい──」

「ごめんなさいごめんなさい!!ちゃんと言います!」


次気持ち悪いこと言ったら思いっきり殴ってやる。


「別に花奈と同じ学校に行きたいからってだけじゃねーよ。俺も元々行きたかったの」

「ふーん。よくアンタが受かったわね」


私達が今日から通うことになるのは、私立若草学園。

中等部から大学までエスカレーターで、偏差値もそれなりに高い全寮制の学園だ。最近校舎を新しくしたから綺麗だし、制服もかなり可愛いから県内でも三本の指に入るほどの人気校だという。それだけに倍率もかなり高いんだけど………よくこんなアホの申し子が入れたな。私でもかなり勉強しなきゃいけなかったのに。


「花奈こそ、なんで俺と同じ学校にしたんだよ」

「………私には私の理由があるの」

「ふーん?」


知春は訝しげの私の顔を覗きこむ。しかし無表情に飽きたのか、すぐにやめた。

重苦しい雰囲気が漂う。すると、沈黙を嫌う……要するに騒がしい知春が、新しい話題を提供してきた。


「若草ってAからFまであるんだっけ?」

「さっきそう言ったでしょ」


どれだけ頭の緩いバカなんだろうか。

でも、そんなバカのお陰で雰囲気が少し軽くなった。


「AからFまでで………確か、特進クラスとかなかったか?」

「Aが特進。その他は区別はなかったと思うけど」

「1クラスだけ特進なんて、変な学校だよなー」


そう。若草は結構な人気校だけど、少しだけおかしいところがあった。

6クラス中A組だけが特進で、人数も10人ほど。特進の基準もよく分からないとか。

普通に考えたら学力だけど………10人だけっていうのも気になる。

まあパンフレットなんかを見る限り、その他はおかしいところのないごく普通のありきたりな学園だったから心配はいらないだろうけど。


「花奈は何組になると思う?」

「さあ。A組以外のどこかじゃない?」

「俺はA組になっちゃうかなー」

「アンタが特進になれるような学園なら私は即刻退学届を出す」

「さっきからなんなのその辛辣さ!」


他愛もない話をしている内に、学園が見えてきた。

新しい学校への高揚感で、自然と足も速くなる。


「おっ、あれが学校かな──ってはええよ花奈!!普段足遅いくせになにその速さ!!」

「いやそんな新しい学校が楽しみだとか知春から一刻も早く離れたいとかそんなんじゃなくて」

「後半は嘘であってほしい!」


まるで競歩のように二人でせかせか歩く。

たどり着いた正門では、先生方が私達と同じ新入生らしい人に何かの紙を渡していた。

私も先生に寄っていって、話しかける。


「すみません……ハア……………紙を………ハァハァ……………一枚…………下さい……………ハア」

「どっ、どうぞ……………」


速く歩きすぎて体力を消耗したので息を荒げながら話しかけると、眼鏡をかけたいかにも理系っぽい先生が怯えながら渡してくれた。


「あー…………すみませんアイツ、体力がミジンコ並のくせに速く歩きすぎちゃって。一応怪しい奴では………………ないと思うんで、気にしないで下さい」

「は、はあ……………」


私より一瞬遅れて着いた知春が、フォローにならないフォローをしてくれていた。あとでゆっくりとお礼をしよう。


「で、この紙はなんだろうな」

「クラス分けの紙に決まってんでしょバカじゃないの脳ミソミジンコ並なの?」

「何その急な罵倒の嵐!俺なんかしたっけ!?」


10秒くらい前の自分の行動を思い出してほしい。

知春の抗議をBGMに名簿を見る。A組は絶対ないから飛ばして………。玉置花奈、玉置花奈……………っと。


「あった!」

「おー。何組だった?」

「C」

「えっ………………マジか」


知春ががくっと膝から崩れ落ちる。どうやら違うクラスのようだ。もう一度名簿を見て、今度は知春の名前を探す。ようやく見つけた『佐倉知春』の4文字は、予想外の場所に鎮座していた。


「えぇ!? 知春がA組!?」


知春は力なく頷く。

A組ってことは………10人しかいない特進の中に知春が入ったってこと!?

知春が特進なんて、どんなイカサマを使ったらそうなるんだろう。この学校の特進の基準が本気で謎だ。この学校は大丈夫なんだろうか。


「奇跡って起きるもんなのねぇ………………」

「失礼だな!……………あーあ、花奈と違うクラスか………」

「いいんじゃない、そろそろ離れても。ずっと一緒だった訳だし」

「そーかい………」


実際私は嬉しいし、なんて言おうものから泣き出してしまいそうなのでここから先は伏せる。

入学式が行われる講堂に行こうとしたら知春が膝を抱え始めたので、蹴りを入れて強制的に引っ張る。同じクラスになれなかったくらいで何やってんだか。

講堂に着く頃には大分シャッキリしてしたので手をはなす。入学式開始時刻が近いため、座席はあらかた埋まっていた。

新入生同士顔を合わせるのは初めてだからか、人数の割には静かだ。


「Aはあっちだから……………一旦お別れだな」

「そうね……………じゃ、バイバイ」

「おう」


別々の方向へ歩き出すと、急に胸が苦しくなった。緊張しているのだろうか。


(大丈夫、大丈夫……………)


不安を振り払うように胸の辺りを強く握って、C組の席へ歩き出した。

なんか終わり方めちゃくちゃになりましたね←

文章力は頑張って強化します。

ここまで読んで下さった方々、ありがとうございました。

次の話も随時更新していきますので、ぜひ読んで下さい。

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