プロローグ
「午前10時45分、車道の検閲所にて警備員が一名鈍器のような物で殴打された後、警備ロボットが殺害された。犯人は現在逃亡中、監視カメラの映像によるとT-26地区周辺に居るはずだ。至急現場に向かい、犯人を捕獲しろ。」
「了解です。」
T-26地区は現在は使われていない廃墟が多く、人影は殆ど無い。熱源探知を行えばすぐに犯人の居場所が割れるだろう。
「あそこか・・・」
100mほど先の古いアパートに反応があった。移動する気配は無い。
階段を一歩登るたびギシギシと軋む音がする。犯人に悟られないよう慎重に登っていかなくてはならない。
勢いよく扉を開けた。
「動くな!」
「ひっ・・!!」
犯人は怯えながら鉄パイプを振り回している。呼吸は荒く、目の焦点は定まっていない。
見るからに正常な精神状態ではなさそうだ。
「お前を警備ロボットRX-78殺害容疑で逮捕する。」
「お・・・オレに近寄るんじゃねえ・・ええ!!」
犯人の腕に注射跡が見えた
「薬物中毒者か・・・」
「おおかた、検閲時に薬物を服用しているのを恐れて警備員を襲った・・といったところか?」
「し・・知らねえ!! お・・オレは何もやってねえ!!」
「ウソをつけ、その鉄パイプに塗料が付着している。それは警備ロボットを殺害した時に付いたものだ。」
「さあ・・大人しく投降しろ!さもなくば・・・」
「こ・・ころされる・・コロサレル・・コロッ・・!ヒッイィゥワアアアアアア!!」
目の前の刑事に向かって思いきり鉄パイプを振り下ろす。恐怖心の中、犯人のわずかな理性が人殺しという罪を拒絶していた。
ああ・・また罪を重ねてしまうのか・・
全力で振り下ろした鉄パイプはもう彼自身でも止めることは出来ない。
その鉄塊が無慈悲にも彼の頭部を砕き、赤い鮮血が辺り一面を・・・・
ガキイィン!
・・・・・? 何だこの音は・・・まさか鉄パイプを外したのか・・・?
いや、鉄パイプはしっかりと刑事の頭部を捉えている。どういうことだ・・?
突然頭に衝撃が走る。
横を見るとそこには刑事の右足があった。
体が思うように動かない、なすすべも無く床に倒れこむ。
目の前に銃が突きつけられる
いや・・正確には銃に似た何かだ。
・・・驚くことに刑事の左腕が変形したもののようだ。
・・・まさか・・・この刑事は・・・・
「安心しろ、私は人間に危害を加えられないようにプログラムされている。」
「私はロボットだ。」
「私の左手には麻酔銃が内蔵されている。」
「このまま大人しく投降するか、麻酔銃で眠らされるか」
「好きな方を選べ」