アースガルズでの一件
アースガルズ
アース神族が支配し、巨大な王国を築いた土地。
虹の橋ビフレストと言うただ一つの入り口を作り、それ以外からは一切の侵入を許さない強固な壁がそびえ立っている。
「おぉ〜ヘイムダルさん。久しぶりっすね」
「…ん?ヘラクレスか?」
ビフレストの番人は向かってくる男女を呼び止めた。
ヘイムダル。
アースガルズへと続く虹の橋を守る光の神である。
「…そこの女は誰だ?」
「……あ、ツクヨミです。どうも」
「ツクヨミだと…?」
ツクヨミ、と言う名前を聞いて私を見下すヘイムダルさん。
それにしても大きい。
思ったより大きい。
巨大。
ヘイムダルさん巨大!!
100mはありそうな身長!!
もう顔が見えねぇ!!
「日の本の神か……日の本?」
「どうしたんすか?」
「いや……あれ?まって、俺がおかしいのかな?」
「?」
「あのさ、ヘラクレス。こいつをどうしたくて連れてきたの?」
私に指を向けるヘイムダルさん。
「そりゃ……アースガルズの見学?」
「……ダメじゃね?」
「ダメなんすか?」
「ダメだろ」
「何で」
「そりゃ…冷戦状態だし」
「どこと」
「日本と」
「……あれ?そうだっけ?」
「この脳筋!!!ヴァルキリー!!であえであえぃ!!敵軍の将だ!!ひっとらえろ!!!」
「あるぇ?」
謎のやり取りの末、天にも届く様な大声をヘイムダルが発した瞬間、私の元に鎧をきた天使の様な女性達が降りてきた。
「この者で?」
「そうだ」
「では、失礼して」
「あるぇ?」
私は、何故か捉えられてしまった。
「え?なんで?何で捉えられたし」
「ヘイムダル様の御命令なので」
「回答になってないんだけど」
美しい顔を一つも歪めず、私の四肢を固めてゆくヴァルキリーさん。
未だ頭が追いついていない。
「ヘイムダルさん。ツクヨミさんをどうするつもりなんすか?」
「そりゃぁ…オーディン様に差し出して○○して○○したあと○○する」
「エグッ……」
まずい…私の知らぬ間にどんどんやばい会話が繰り広げられてる気がする。
私は何とか抜け出そうと、体に力を入れる。
「ん、ん…締まりませんね……」
「……ツクヨミあざーすっ」
ここに来て始めてツクヨミに感謝する私。
神と兵士くらいの力量差があるからな。これはいける。
「なんかヤバそうなので、失礼して」
「……あ」
表情が一切変わらないヴァルキリーさんを振りほどいて、空に向かって大ジャンプをする私。
アースガルズもうちょっと見て見たかったけど、まぁしょうがないだろ。死んだら終わり。
地面がどんどん小さくなって行き、上を見上げる。
すると私の顔面に茶色い何かが迫っていた。
「ッ!シャッオラッ!!!」
気合とスキルでそれを回避し、私の寿命を縮めたそいつを睨む。
「ん?枝……っていうほど小さく無いなぁ」
そこにはもはや枝と言っていいのか分からないほ巨大な木製の物があった。
それが伸びる先をながめてみると、ヘイムダルさんがチリくらいに見える巨大な大樹がそびえ立っていた。
「これが……世界樹ユグドラシル……」
深い緑が圧倒的な存在感を放ち、私の体をチリチリと焼くような気がした。
体が硬直し、空中で一つも身動きが取らなくなってしまう。
……空中?
「あ」
私の体は、重力に全く逆らうこと無く、地上に向かって落ちて行った。
さて、今度の投稿はいつになるやら。