起床
――僕は自分のベッドで寝ていた。手足はしっかりとあり、身体も動かせる。それでも、夢と同じくらい汗をかいていた。
ほんの僅かな睡眠時間だったのに、あまりにも鮮明すぎる悪夢だった。だが、さっきまで覚えていた夢の詳細が思い出せない。一秒にも満たない時間で忘れてしまったのだ。それでも、巨大な蜘蛛が出てきたということだけは、はっきりと覚えている。
本当に最悪な蜘蛛だった。存在そのものが受け入れられない。北崎が夢に出てきたようなものだ。
……いや、本当に北崎なのだろうか。
今日は奴のせいで、不快で最低な気分になった。それは間違いない。北崎のことは一年の頃からずっと嫌いで、今日に限らず常に不快に思っていた。
でもよく考えると、今日は何か不快の性質が違うのだ。
北崎との関係が変わった、二日前のことを思い返す。
あの時はものすごく怖くて不快だった。でも、怖いと感じたのはあの日が初めてなのに、不快感は以前の延長、さっきの悪夢みたいな感じだったのだ。とにかく嫌で、北崎を追い返そうとした。
今、北崎をあの蜘蛛のように追い払いたいと言えるのだろうか。
眠る前までは、何を考えていた?
一日中ずっと、北崎に対する疑問で頭が埋め尽くされていた。遠ざけたいだけなら、こんなに考え込むはずがない。遠ざけてしまったら、永久に答えは出ない。そうか、僕の気持ちは……。
今の自分は、知りたいのだ。
知りたいのに北崎のことがわからない。だから最悪な気分になっている。この知りたい気持ちが、不快感の正体だ。ただ遠ざけたく、存在していることが不快だった今までとは違う。
ベッドから起き上がり、ポケットから取り出したメモを見つめる。
散らかった思考は、最初より整理された。だけど、まだ何か自分の中で引っかかっている。
それも何か知りたい。そう、とても知りたいのだ。
わからないことはたくさんあるが、これだけははっきりわかった。
僕は初めて、他人に強い興味を持っている。




