不快感
速歩きで帰ったので、一本早い電車にギリギリ乗れた。そのせいで、「今日はいつもより早いね」と母親に言われるくらいの時間に帰宅してしまったのだ。
自分の部屋へ行き、鍵をかける。
ベッド、机、椅子、本棚、備え付けのタンス、それだけが出迎えてくれた。整理整頓されたというよりも、まるで僕自身を現しているかのように、何もない部屋だ。余計な物だけではなく、本来必要な物すらないのだろう。
ポケットから、グシャグシャになった持っていてはいけない物を出す。広げてみると、書いてある文字は普通に読めた。
北崎、あいつは一体何だ? 何でこんなメモを渡した? 何で僕は捨てなかった? 何で硝子羽のアゲハが飛んでるんだ? 何で北崎は蝶になるんだ? 蝶になる証拠って何だ? あの日は、怖かった。だけど、何で北崎を見送ってしまった?
おかしいことはたくさん起きたのに、今日の涙が一番頭から離れない。あれは絶対に心から泣いていない。そう確信した。だが、考えていくうちにどんどん自信がなくなっていく。
初めて硝子羽のアゲハを見た日に似ている。しばらくは頭がおかしくなった、僕が間違っていたのではと悩んでいた。
北崎のせいで、思考がグチャグチャに散らかってしまう。こんな、不快で最低な気分は初めてだ。
もう何も考えたくない。
メモをポケットに戻し、制服のままベッドに寝転んだ。




