2006/6/15〜26 連絡待ち
奈々美が病院に運ばれてから、担任の先生と一緒に相談室まできた。小さめのテーブル、向かい合わせのソファー、本棚には心理学系と思われる本が置いてある。
僕と担任は向かい合って座った。
「北崎さん、救急車の中で意識を取り戻したみたいだよ」
その言葉に安心している自分がいる。羽化の最終段階に入って意識を失っただけであり、直感的に大丈夫だと思っていたが、意外と自分の気持ちがわからないものだ。
「良かったです。報告、ありがとうございます」
担任は怒るわけでもなく、穏やかな口調で言った。
「今日は何があったのか教えてほしいんだけど」
「北崎さんと別れたのを僕のせいにされて、あの人達に呼び出されました」
それから、質問をのらりくらりと答えている。早く終わらないかとうんざりし始めた時だ。
コンコン。
ドアをノックする音が聞こえてきた。
僕の担任がどうぞと言うと、レンヤが担任と一緒に入ってきたのだ。
レンヤの担任が言う。
「あの場にいた女子達は、ショックが酷くて早退して……だから彼だけをつれて来ました」
虚な目のレンヤが弱々しい声で言う。
「……暴力振るおうとして、ごめんなさい」
「彼も反省しているから、どうか許してほしいんだ」
なんだ。そんなことを言いに来たのか。
「許すも何も関係ない人達なんで、今後も関わるつもりはないから大丈夫ですよ」
言葉を選ぶのが面倒になり、つい本当のことを言ってしまった。先生達は怒り始める。何も答えたくないので黙っていると、レンヤが大きな声で言った。
「先生、やめてください! これでいいです! オレもこんなヤバい奴らと関わりたくないです!」
彼は相談室から走り去ってしまった。レンヤの担任が追う。
「先生、もう話は終わりですよね? 失礼します」
僕もソファーを立ち、相談室を後にした。
この事件が起きてから、あからさまに避けられるようになった。クラスメイトはもちろん、学校中から嫌な視線だけを感じる。
そして、奈々美はあの日から学校に来ていない。
電話をしても電源が入っていないし、念の為ホームページも見ているが更新されないのだ。
丘で羽化できるか不安な日々を過ごしていたが、倒れて十日以上した日の夜、ついに奈々美から電話が来た。
「今夜、羽化するよ」
その一言を残して、携帯電話からツーという音だけが聞こえた。




