表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三国志の端っこで生きています  作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/84

80.中核討滅――五人の最終連携

化け物の群れの中核にたどりついた。


ひときわ巨大な影が、ゆっくりと前へ進み出てきた。


廠、曹叡、紅陽、関優、張凱。

誰もがその姿を見つめ、言葉を失った。


影は、かつて人であったものの形をわずかに残している。

だが、皮膚は黒くひび割れ、骨はねじれ、

その目だけが、異様に澄んでいた。


影が口を開いた。


「……ニン……ゲン……」


その声は、地の底から響くような低さでありながら、どこか“人の声”の名残を感じさせた。

紅陽が震える声で呟く。

「…言葉を…話している……」


影は、まるで“思い出した”かのように、次の言葉を吐いた。

「……ソン……ケン……

喰ッタ……

次ハ……

オマエラ……」

廠の背筋に冷たいものが走る。

曹叡は歯を食いしばり、叫んだ。


「貴様が、孫権を」


影はゆっくりと首を傾けた。


「……喰ラウ……

喰ラウ……

喰ラウ……

世界……

喰ラウ……」


その瞬間、周囲の異形が一斉に咆哮を上げた。

大地が震え、空気が裂ける。


----


廠は、槍を構えた。


前方にたつ“影”は、他の異形とは明らかに違う。

その存在だけで、空気が重く沈む。


紅陽が方天戟を構え、低く吠えた。

「行くぞ! 化け物に容赦はいらぬ!」


紅陽が先陣を切り、異形の群れへ突撃した。

戟が唸り、黒い肉を裂く。

その動きは、まるで炎が駆け抜けるようだった。

中核の周囲を削り取るように、異形を次々と薙ぎ払っていく。


曹叡は魏軍を率いて側面へ回り込む。


「魏軍、突撃」


魏の兵たちが雄叫びを上げ、黒い波へ突っ込んだ。

鋼の音と咆哮が交錯し、戦場が揺れる。


反対側では、関優と張凱が同時に動いた。


「張凱、右を抑えろ!」

「任せろ!」


二人は息を合わせ、異形の壁を切り裂いていく。

その動きは、まるで長年の戦友のように滑らかだった。


左右が崩れ、中央がぽっかりと開いた。


廠は、槍を握り直す。


(……ここだ)


ひときわ大きな影―敵の中核が、廠を見下ろしていた。


その目は、澄んでいるのに、底がない。

人間の形をしているのに、人間ではない。


中核が、喉の奥で何かを鳴らした。


「……オマエ……」


廠の背筋が粟立つ。


「……喰ウ……」


次の瞬間、中核が地を蹴った。


黒い残像が走り、廠の目の前に迫る。


止まれ。


中核は、しかし動きを止めない。


「何!?」


ぎりぎりのところで、影の手を躱した。


(効かないって…マジでラスボスか…ならば)


動け。



「廠!」

曹叡が叫び、剣を構えて中核へ突っ込む。

だが中核は、曹叡の斬撃を片手で受け止めた。


金属が悲鳴を上げる。


「なっ……!」


曹叡の剣が軋む。

中核は、ゆっくりと曹叡の顔を覗き込んだ。


「……オマエ……モ……喰ウ……」


紅陽が背後から方天戟を叩き込む。

「させるかぁッ!」


轟音。

中核の身体がわずかに揺れた。


だが―倒れない。


関優が叫ぶ。

「硬すぎる……!」

張凱が歯を食いしばる。

「だが、やるしかねぇ!」


五人が同時に構え直す。


----


廠は槍を構えた。

中核は、まるで廠だけを見据えているかのように、澄んだ目を細めた。


「……オマエ……」

その声は、言葉というより“意思”そのものだった。


(時間停止が使えない…だが…)


槍を握り直す。


ここまで戦ってきたんだ。



紅陽が叫ぶ。


「いくぞ、化け物」


紅陽が方天戟を振りかざし、真横から中核へ突撃した。

戟の刃が黒い皮膚に食い込み、火花が散る。


「ぬぅっ……硬い……!」


だが、その一撃で中核の動きが一瞬止まった。


その隙を逃さず、関優が左から槍を突き込む。

「紅陽、押し込め!」


刃が中核の脇腹に深く刺さる。

黒い血が飛び散り、地面を焦がした。


張凱が右から斬りかかる。

「こいつは……人間じゃねぇ! 遠慮はいらねぇ!」

三方向からの攻撃が、中核の動きを確実に鈍らせていく。


曹叡が叫ぶ。

「喰らえ!」


中核の背後から、刃を突き立てた。


廠は槍を構え、深く息を吸った。


中核の胸の中央―

黒いひび割れが、脈打つように光っている。


(あれが……核の核だ)


廠は地を蹴った。


「うおおおおおおッ!」


槍が一直線に突き出される。


中核が咆哮した。


「アアアアアアアアアアアアアアアア!」


黒い波動が爆ぜ、周囲の大地が砕ける。

だが、紅陽たちが必死に押さえ込んでいるため、中核は動けない。


廠の槍が、黒いひび割れへ―


突き刺さった。


轟音。


光が爆ぜ、黒い肉が裂ける。


中核が絶叫した。


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


廠は槍を押し込みながら叫んだ。


「ここで終わりだぁぁぁぁッ!」


曹叡が剣を振り下ろし、

紅陽が戟を叩き込み、

関優と張凱が左右から突き刺す。


五人の力が、一点に集まった。


中核の身体が、光に包まれ――


砕け散った。


黒い破片が空へ舞い上がり、朝日を浴びて消えていく。


異形たちが一斉に崩れ落ち、砂のように砕けた。


----


戦場に、静寂が戻った。


曹叡が息を吐いた。

「……勝った……のか……?」


紅陽が笑おうとしたが、その前に廠の身体が崩れた。


紅陽が駆け寄る。

だが廠は、もう意識を保てなかった。

最後に見たのは、仲間たちの顔と、朝日の光だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ