表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三国志の端っこで生きています  作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/25

武人の残り火

部屋の外に出た紅陽は、廊下の薄暗がりでひとつ息を吐いた。

その表情は、先ほどまでの忠誠一色の顔とは少し違っていた。


(陛下の記憶が曖昧か)


紅陽は静かに目を閉じる。


(ならば今こそ、宮中を蝕む宦官どもを、黄皓を排除する好機かもしれぬ)


紅陽は、劉禅を守るために剣を振るってきた。

だが、守るだけでは足りないと、ずっと思っていた。



黄皓を中心とする宦官達が劉禅に取り入り、

宮中の権力を欲しいがままにしていた。

政務を取り仕切る蔣琬は、内政だけで精一杯で宮中や後宮のことまでは手が回らない。

それに、劉禅に諫言できるのは、今となっては諸葛亮だけだった。

諸葛亮が北伐のため、ずっと遠征に出ている隙を狙った形だった。


紅陽率いる近衛兵の規模が小さくなった。

かつて宮中に数百名はいた近衛兵たちは、危険ではない、という理由で、宦官達の手によって、日ごとに縮小されていく。

その分が、毎日の遊興費に使われていくのだ。


じわじわと腐り始めていく宮中。

なんとかしなければ、と思っている最中なのだ。


(陛下は宦官の甘言で狂わされている)


だが。

今の陛下は、記憶が曖昧だ。政治の細部も、宮中の力関係も、誰を信じ、誰を疑うべきかも分からない。


(今から私が導けばよい)


紅陽は拳を握りしめた。


紅陽は、近衛兵ではなく、いつか将軍として戦場に立ちたいという願いをずっと持っていた。

そのために来る日も来る日も、鍛錬に明け暮れたのだ。


近衛兵長になったのは、成り行きだった。

元々は、張飛将軍の麾下にいた。


かつての劉備軍が荊州から益州を制圧した後、蜀を建国した。

その後で、漢中を制圧し、漢中と荊州からの同時攻撃で洛陽まで攻め滅ぼすつもりだった。


だが、呉軍と身内の裏切りにあい荊州にいた関羽が討ち取られた。

怒りに狂った、劉備と張飛は、荊州から一気に呉にいる孫権を討ち果たそうとしていた。


その際、張皇后と劉備の息子である劉禅を娶わせた。

紅陽は、張飛将軍に、娘を頼めるのは、お前しかいないと言われて、共に宮殿入りしたのだ。


劉禅は、優しくはあったが、暗愚だった。

それに、張皇后のようなはっきりとした物言いを嫌い、今では遠ざけているのだ。


ここから機転を利かせれば、戦場に出るのも夢ではない。

それに、張皇后には、かすみをつけている。

何かあっても宦官ごときでは太刀打ちできないはずだ。


紅陽はゆっくりと目を開け、劉禅のいる部屋の方へ視線を向けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ