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三国志の端っこで生きています  作者: 水原伊織


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48/84

48.正体バレ? だが関係ない! 西涼の猛将に認められた、偽物皇帝の真実の覚悟

馬休、いや、馬超の案内で、廠と紅陽は集落の奥へと進んだ。

焚き火の煙が細く立ちのぼり、薬草の匂いが風に混じる。

その静けさの中で、ふいに馬超が足を止めた。


「……陛下。元莱殿の小屋はこの先ですが、ひとつ申し上げねばなりません」


廠は眉を寄せた。


「何だ」


馬超は周囲に目を走らせ、声を潜めた。


「山賊が近くまで来ております。数は二百ほど。山の民を狙う連中でして……元莱殿を成都へ連れて行くのであれば、放置はできませぬ」


紅陽が即座に反応した。


「山賊……。この集落を襲うつもりか」


「はい。今夜か、明け方か。いずれにせよ、近い」


廠は短く息を吐いた。

孔明の容態が脳裏をよぎる。

急がねばならない。

だが。


「……山賊を放置して元莱を連れ出すわけにはいかないな」

「陛下、我ら近衛がいれば十分です。すぐに片をつけましょう」


紅陽が言うと、馬超は静かに首を振った。


「山は我らの庭。だが、山賊もまた山に慣れた者。地の利を奪うには、こちらも数が要ります。

陛下……どうか、我ら山の民の自警団と共に戦っていただけぬか」


その声音には、かつて西涼の名将として戦場を駆けた男の誇りが宿っていた。

廠はその気迫を受け止め、ゆっくりと頷いた。


「分かった。共に戦おう。元莱を成都へ連れていくためにも、ここを守る」


馬超は深く頭を下げた。


「感謝いたします。……では、準備を」


---


集落の中央にある広場に、十数名の男たちが集まっていた。

粗末な槍や弓を手にしているが、その目は鋭く、覚悟が宿っている。


馬超がみなの前に立つ。

「山賊が来る。距離からして、今夜だ」

居並ぶ自警団兵の中に、廠と紅陽は混ざっていた。

「この集落に入る前に、一本道で迎え撃つ」

「我らの配置を、お決めください」

自警団の兵士の中の一人が言った。

「半数を埋伏させる。残りは、中央に展開して迎え撃つ。数が多いようなら下がりながら、挟撃する」

指示を出し終えると、兵士達は駆け出していった。


馬超が廠と紅陽のほうにやってくる。

「陛下。あなたが“劉禅”ではないこと、わたしには分かります」

紅陽がその言葉に反応する。

「何故、そのようなことを」

「いや、紅陽、大丈夫だ」

紅陽を制すると、馬超に向かって言う。

「だと、すれば、なんとする?馬超殿」

「…ご存じでしたか」

「立ち振る舞いで、俺だって分かる。並みの武人ではない、でどうする?」

「今は問いません。この戦いが終わった後、元莱殿を成都へ送り出すことを約束しましょう」

廠は静かに頷いた。

「頼む」


----



夜が深まり、山の闇が濃くなる。

焚き火の明かりが揺れ、風が木々をざわめかせる。

その時だった。


「来たぞ!」


見張りの声が響いた。


闇の中から、粗野な笑い声と足音が迫ってくる。

山賊たちが松明を掲げ、集落へと雪崩れ込もうとしていた。


紅陽が鋭く叫ぶ。


「火を放て!」


自警団の者たちが、あらかじめ積んでおいた枯れ枝に火をつけ、山賊の進路に投げ込む。

炎が一気に広がり、山賊の足が止まった。


「今だ、射て!」


弓矢が闇を裂き、山賊の前列が崩れる。


馬超が剣を構え、廠の横に立った。


二人は前へ飛び出した。

馬超の剣が唸り、廠の槍が閃く。

紅陽は背後から的確に援護し、山賊の動きを封じていく。


山賊たちは予想外の抵抗に怯み、やがて叫び声を上げて逃げ出した。


「逃がすな」


馬超の声に、自警団の者たちが


やがて、集落に静けさが戻った。


---


馬超が廠の前に立ち、剣を鞘に仕舞う。

「…驚いた。やはり、あなたは劉禅陛下ではない。だが、おかけで誰一人欠けずに済んだ」

廠は息を整えながら言った。

「孔明のためだ」

「孔明殿が?」

「ああ…病なんだ。それで、以前孔明も針を打ってもらったって聞いてな」

「そういうことでしたか」

馬超は頷き、奥の小屋を指した。


「元莱殿は、すでに支度を整えております」

廠は紅陽と目を合わせ、静かに歩き出した。

孔明のもとへ希望を連れて帰るために。


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