表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三国志の端っこで生きています  作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/84

39.【無双】反乱軍三千を一刻で粉砕! 皇帝自ら先頭に立つ『最強の近衛兵』の実力

成都西方にて、反乱が発生した。


その報を宮殿で受けた廠は、即座に近衛兵を率いて出陣を決めた。

帝の親征ではあったが、状況は一刻を争う。

面倒な儀式はすべて省かれた。


これは、紅陽率いる近衛兵軍団の初陣でもある。

兵たちは赤い鎧で統一され、陽光を受けて血のように輝いていた。


紅陽が騎馬隊の先頭に立つ。

廠は紅仁の重装歩兵の先頭に立ち、槍を握りしめた。


「みんな、行くぞ!」


廠の声が響く。


「おうっ!」


力強い返答が重装歩兵の列を揺らした。


紅陽が馬腹を蹴り、近衛騎馬隊が宮殿から一気に駆け出していく。

その後を、廠率いる重装歩兵が大地を踏み鳴らしながら続いた。



----



成都西方の丘陵地帯。

豪族たちが集めた反乱軍は、村々を巻き込みながら膨れ上がり、その数はすでに三千を超えていた。


その前に立ちはだかったのは、紅陽率いる近衛兵だった。


「全軍、前へ。反乱の芽は、ここで断つ」


紅陽の声は低く、しかし揺るぎなかった。

近衛兵たちは赤い鎧の盾を構え、整然と前進する。

その背後には、紅仁率いる重装歩兵が続く。


その最前列の中央に、帝・廠の姿があった。


皇帝の甲冑は、近衛兵と同じ赤を基調としながらも、胸甲と肩当てには金の縁取りが施されている。

陽光を受けて輝くその姿は、兵たちにとってまさに“旗印”そのものだった。


紅仁がちらりと廠を見る。

そこに立つのは、かつての廠ではない。

国家の命運を背負う帝そのものだった。


廠は槍を握り直し、前を見据えた。


「行くぞ。この地を乱す者は、我が手で鎮める」


その声は大きくはなかったが、近衛兵も重装歩兵も、一斉に背筋を伸ばした。


「応っ!」


大地を揺らすような声が響き、

紅陽の騎馬隊が先陣を切って駆け出す。

その後を、帝・廠を中心とした重装歩兵が力強く踏み出した。



----



ついに戦だった。

宮殿内での宦官との小競り合いとは、まったく次元が違う。

規模は小さいとはいえ、軍を率いての戦。しかも、自ら騎馬隊を率いる戦である。


騎馬五百騎。重装歩兵五百。

対する反乱軍は三千以上に膨らんでいた。

数では圧倒的に劣るが、相手は寄せ集めの烏合の衆。

こちらは、この日のために調練を重ねてきた精鋭だった。


後方には、紅仁率いる重装歩兵が控えている。

その存在が、廠の背を静かに支えていた。


紅陽が馬を進め、一歩前に出る。

赤い鎧が陽光を弾き、まるで炎のように輝いた。


「我が名は、紅陽!

反乱者ども――一人残らず叩き切る!」


大地を震わせるような雄叫び。

方天戟を高く掲げ、そのまま突き出す。


その合図と同時に、五百の騎馬隊が一斉に動いた。

蹄が地を叩き、風が裂け、赤い波が丘陵へと駆け上がる。

戦が始まった。


紅陽率いる騎馬隊が縦横無尽に戦場を駆けまわり、敵陣を切り裂くように道を開く。

方天戟の一振りで首がいくつも飛んだ。

騎馬隊の突撃だけで、すでに算を乱し始めている。

そこに、重装歩兵が突き進んでいく。

ひたすら前へ、前へ、と。

まるで巨大な壁が迫ってくるような圧力を、反乱軍はまともに受けていた。


反乱軍はあわてふためき、隊列を保つことすらできない。

叫び声が上がり、武器を取り落とす者もいる。

寄せ集めの兵たちは、騎馬の突撃と重装歩兵の圧に耐えられるはずもなかった。


「ひ、引け! 引けぇっ!」

誰かが叫ぶが、もう誰も統率していない。


紅陽の騎馬隊が再び横から切り込み、反乱軍の側面をえぐる。

そのたびに土煙が上がり、敵の列が崩れ落ちる。


紅仁率いる重装歩兵は、開かれた道を確実に踏みしめながら前進した。

槍を構え、盾を押し出し、一歩ごとに敵の心を折っていく。


「押せ! 止まるな!」

紅仁の声が響き、重装歩兵の列がさらに加速する。


反乱軍は完全に浮き足立ち、後退が後退を呼び、

ついには丘陵の斜面へと雪崩のように逃げ出した。

戦場は、もはや勝敗が決した空気に包まれていた。



----



「兄上、やりましたね」


たいして疲れた様子もない紅仁が、紅陽のもとへ歩み寄ってきた。

戦は一刻ほどで決着がついた。

追撃は、成都郊外に点在していた軍にまかせて、紅陽は近衛兵をまとめていたのだ。

近衛兵はたったの一人も失っていない。


「自慢にもならんな」


紅陽は方天戟についた返り血を布で拭いながら、淡々と言った。


「紅陽、紅仁」

「陛下」


帝の装いに身を包んだ廠が近づいてくる。

鎧の肩を軽く回しながら、少し困ったように言った。


「この鎧、重たい」

「仕方ありません。重装備ですから」


紅仁が苦笑まじりに答える。


「あとさ、俺……槍突き出して、前に歩いてただけなんだけど」

「いえ、陛下はご立派な戦ぶりでした」


紅仁が真面目に言うと、廠はますます困った顔になった。


「土埃で、なんも見えなかった」


その言葉に、紅陽がふっと笑った。


「見えなくても、前に立ってくださっただけで十分です、陛下」


廠は少しだけ照れたように肩をすくめた。



----



五丈原の本営。

魏軍の動きを探るため、幕内には地図と報告書が積み重なり、諸葛亮は静かに筆を走らせていた。

そこへ、成都方面からの伝令が駆け込んできた。


「伝令。成都西方の反乱、鎮圧されました」


幕内の空気がわずかに揺れる。

諸葛亮は筆を止め、顔を上げた。


「鎮圧?早いな」


伝令は息を整えながら続ける。


「陛下が自ら近衛兵を率いて出陣し、反乱軍は一刻ほどで総崩れに!」


魏延が思わず目を見開いた。

「陛下自らだと」

「はい。報を受けるや否や、直ちに近衛兵を率いてご出陣なされました」


その言葉に、居並ぶ将軍たちは驚きを隠せなかった。

あの劉禅が、である。

鹿狩りの折に頭を打って以来、まるで先帝のような善政ぶりを見せていることは、誰もが知っていた。

だが、戦の腕前となると話は別だ。

帝自ら槍を構え、歩兵の先頭に立ち、反乱軍を一刻で鎮圧したという報は、にわかには信じがたいものだった。


「……陛下が、そこまでとは」

誰かが小さく呟く。

幕内には、驚きと戸惑いが入り混じった沈黙が落ちた。


魏延が尋ねた。

「一刻で、三千をか?」

「はい。敵は見る間に崩れたと」

諸葛亮はしばし沈黙した。

驚きというより、静かな感嘆がその表情に浮かぶ。


「近衛兵の騎馬隊を率いるのは、近衛兵長の紅陽だ」

諸葛亮が静かに告げると、幕内にざわりと小さな波が走った。

「紅陽……?」

魏延が聞き返す。知らぬ名なのも無理はない。

諸葛亮は続けた。

「皆には伝えていなかったが、先の撤退戦で我らが飢えずに済んだのは、この紅陽が近衛兵を率いて兵糧を届けてくれたおかげだ」

廠、つまり皆にとっては劉禅、のことは言わなかった。


「なんと……」

魏延の目が大きく見開かれる。

姜維が感嘆を隠さず言った。

「一千で、三倍近い敵を破るとは」


諸葛亮はゆっくりと頷いた。

「成都が守られたのは大きい。これで、我らは背を気にせず魏軍に向き合える」


そして、地図の上の成都にそっと指を置いた。


「よく守ってくれた、廠殿」


その声は誰に向けたものでもなく、しかし確かな安堵と驚きが滲んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ