39.【無双】反乱軍三千を一刻で粉砕! 皇帝自ら先頭に立つ『最強の近衛兵』の実力
成都西方にて、反乱が発生した。
その報を宮殿で受けた廠は、即座に近衛兵を率いて出陣を決めた。
帝の親征ではあったが、状況は一刻を争う。
面倒な儀式はすべて省かれた。
これは、紅陽率いる近衛兵軍団の初陣でもある。
兵たちは赤い鎧で統一され、陽光を受けて血のように輝いていた。
紅陽が騎馬隊の先頭に立つ。
廠は紅仁の重装歩兵の先頭に立ち、槍を握りしめた。
「みんな、行くぞ!」
廠の声が響く。
「おうっ!」
力強い返答が重装歩兵の列を揺らした。
紅陽が馬腹を蹴り、近衛騎馬隊が宮殿から一気に駆け出していく。
その後を、廠率いる重装歩兵が大地を踏み鳴らしながら続いた。
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成都西方の丘陵地帯。
豪族たちが集めた反乱軍は、村々を巻き込みながら膨れ上がり、その数はすでに三千を超えていた。
その前に立ちはだかったのは、紅陽率いる近衛兵だった。
「全軍、前へ。反乱の芽は、ここで断つ」
紅陽の声は低く、しかし揺るぎなかった。
近衛兵たちは赤い鎧の盾を構え、整然と前進する。
その背後には、紅仁率いる重装歩兵が続く。
その最前列の中央に、帝・廠の姿があった。
皇帝の甲冑は、近衛兵と同じ赤を基調としながらも、胸甲と肩当てには金の縁取りが施されている。
陽光を受けて輝くその姿は、兵たちにとってまさに“旗印”そのものだった。
紅仁がちらりと廠を見る。
そこに立つのは、かつての廠ではない。
国家の命運を背負う帝そのものだった。
廠は槍を握り直し、前を見据えた。
「行くぞ。この地を乱す者は、我が手で鎮める」
その声は大きくはなかったが、近衛兵も重装歩兵も、一斉に背筋を伸ばした。
「応っ!」
大地を揺らすような声が響き、
紅陽の騎馬隊が先陣を切って駆け出す。
その後を、帝・廠を中心とした重装歩兵が力強く踏み出した。
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ついに戦だった。
宮殿内での宦官との小競り合いとは、まったく次元が違う。
規模は小さいとはいえ、軍を率いての戦。しかも、自ら騎馬隊を率いる戦である。
騎馬五百騎。重装歩兵五百。
対する反乱軍は三千以上に膨らんでいた。
数では圧倒的に劣るが、相手は寄せ集めの烏合の衆。
こちらは、この日のために調練を重ねてきた精鋭だった。
後方には、紅仁率いる重装歩兵が控えている。
その存在が、廠の背を静かに支えていた。
紅陽が馬を進め、一歩前に出る。
赤い鎧が陽光を弾き、まるで炎のように輝いた。
「我が名は、紅陽!
反乱者ども――一人残らず叩き切る!」
大地を震わせるような雄叫び。
方天戟を高く掲げ、そのまま突き出す。
その合図と同時に、五百の騎馬隊が一斉に動いた。
蹄が地を叩き、風が裂け、赤い波が丘陵へと駆け上がる。
戦が始まった。
紅陽率いる騎馬隊が縦横無尽に戦場を駆けまわり、敵陣を切り裂くように道を開く。
方天戟の一振りで首がいくつも飛んだ。
騎馬隊の突撃だけで、すでに算を乱し始めている。
そこに、重装歩兵が突き進んでいく。
ひたすら前へ、前へ、と。
まるで巨大な壁が迫ってくるような圧力を、反乱軍はまともに受けていた。
反乱軍はあわてふためき、隊列を保つことすらできない。
叫び声が上がり、武器を取り落とす者もいる。
寄せ集めの兵たちは、騎馬の突撃と重装歩兵の圧に耐えられるはずもなかった。
「ひ、引け! 引けぇっ!」
誰かが叫ぶが、もう誰も統率していない。
紅陽の騎馬隊が再び横から切り込み、反乱軍の側面をえぐる。
そのたびに土煙が上がり、敵の列が崩れ落ちる。
紅仁率いる重装歩兵は、開かれた道を確実に踏みしめながら前進した。
槍を構え、盾を押し出し、一歩ごとに敵の心を折っていく。
「押せ! 止まるな!」
紅仁の声が響き、重装歩兵の列がさらに加速する。
反乱軍は完全に浮き足立ち、後退が後退を呼び、
ついには丘陵の斜面へと雪崩のように逃げ出した。
戦場は、もはや勝敗が決した空気に包まれていた。
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「兄上、やりましたね」
たいして疲れた様子もない紅仁が、紅陽のもとへ歩み寄ってきた。
戦は一刻ほどで決着がついた。
追撃は、成都郊外に点在していた軍にまかせて、紅陽は近衛兵をまとめていたのだ。
近衛兵はたったの一人も失っていない。
「自慢にもならんな」
紅陽は方天戟についた返り血を布で拭いながら、淡々と言った。
「紅陽、紅仁」
「陛下」
帝の装いに身を包んだ廠が近づいてくる。
鎧の肩を軽く回しながら、少し困ったように言った。
「この鎧、重たい」
「仕方ありません。重装備ですから」
紅仁が苦笑まじりに答える。
「あとさ、俺……槍突き出して、前に歩いてただけなんだけど」
「いえ、陛下はご立派な戦ぶりでした」
紅仁が真面目に言うと、廠はますます困った顔になった。
「土埃で、なんも見えなかった」
その言葉に、紅陽がふっと笑った。
「見えなくても、前に立ってくださっただけで十分です、陛下」
廠は少しだけ照れたように肩をすくめた。
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五丈原の本営。
魏軍の動きを探るため、幕内には地図と報告書が積み重なり、諸葛亮は静かに筆を走らせていた。
そこへ、成都方面からの伝令が駆け込んできた。
「伝令。成都西方の反乱、鎮圧されました」
幕内の空気がわずかに揺れる。
諸葛亮は筆を止め、顔を上げた。
「鎮圧?早いな」
伝令は息を整えながら続ける。
「陛下が自ら近衛兵を率いて出陣し、反乱軍は一刻ほどで総崩れに!」
魏延が思わず目を見開いた。
「陛下自らだと」
「はい。報を受けるや否や、直ちに近衛兵を率いてご出陣なされました」
その言葉に、居並ぶ将軍たちは驚きを隠せなかった。
あの劉禅が、である。
鹿狩りの折に頭を打って以来、まるで先帝のような善政ぶりを見せていることは、誰もが知っていた。
だが、戦の腕前となると話は別だ。
帝自ら槍を構え、歩兵の先頭に立ち、反乱軍を一刻で鎮圧したという報は、にわかには信じがたいものだった。
「……陛下が、そこまでとは」
誰かが小さく呟く。
幕内には、驚きと戸惑いが入り混じった沈黙が落ちた。
魏延が尋ねた。
「一刻で、三千をか?」
「はい。敵は見る間に崩れたと」
諸葛亮はしばし沈黙した。
驚きというより、静かな感嘆がその表情に浮かぶ。
「近衛兵の騎馬隊を率いるのは、近衛兵長の紅陽だ」
諸葛亮が静かに告げると、幕内にざわりと小さな波が走った。
「紅陽……?」
魏延が聞き返す。知らぬ名なのも無理はない。
諸葛亮は続けた。
「皆には伝えていなかったが、先の撤退戦で我らが飢えずに済んだのは、この紅陽が近衛兵を率いて兵糧を届けてくれたおかげだ」
廠、つまり皆にとっては劉禅、のことは言わなかった。
「なんと……」
魏延の目が大きく見開かれる。
姜維が感嘆を隠さず言った。
「一千で、三倍近い敵を破るとは」
諸葛亮はゆっくりと頷いた。
「成都が守られたのは大きい。これで、我らは背を気にせず魏軍に向き合える」
そして、地図の上の成都にそっと指を置いた。
「よく守ってくれた、廠殿」
その声は誰に向けたものでもなく、しかし確かな安堵と驚きが滲んでいた。




