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三国志の端っこで生きています  作者: 水原伊織


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草原に描かれた円(えん) ―― 眠れる皇帝

草原の奥へ進むにつれ、風の音が変わった。

ざわめきが弱まり、代わりに、どこか湿った土の匂いが混じる。


「……隊長、こちらに来てください」


遠くで声がした。

紅陽は反射的に駆け出す。

兵の声には、ただ事ではない緊張があった。


草をかき分けた先。

そこだけ、草が円形に倒れている。

まるで何かが落ちたように。


兵がひざまずき、震える声で言った。


「陛下です」


紅陽の胸が一瞬、冷たくなる。

倒れた草の中央に、劉禅が横たわっていた。

顔色は悪くない。

だが、目を閉じ、呼びかけにも反応しない。


紅陽は膝をつき、劉禅の肩に手を添えた。


「陛下……聞こえますか」


返事はない。

ただ、かすかに胸が上下している。

生きている。

その事実に、紅陽は短く息を吐いた。


「外傷は、ないな。落馬か、それとも」


兵が周囲を見回し、低く言う。


「担架を持て。陛下を宮へ戻す」


そう命じた。



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