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三国志の端っこで生きています  作者: 水原伊織


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13/25

偽りの皇帝、真実の愛を抱く

その夜。


織の肩が、裕介の胸元でかすかに震えていた。

裕介は、そっと腕をまわした。

触れた瞬間、織の体温が、驚くほど静かに、しかし確かに伝わってくる。


「織」


名を呼ぶ声は、思っていたよりも低く、柔らかかった。

自分の声がこんな響きを持つのかと、裕介自身が驚くほどだった。

織は胸元に額を寄せたまま、小さく息を吸う。

その呼吸が、裕介の胸の鼓動と重なり、ゆっくりと落ち着いていく。


裕介は、織の背に手を添えた。


「こんな素敵な人を、放っておくとは」


自然にこぼれたものだった。

織はゆっくりと顔を上げた。 静かな美しさを帯びている。


「陛下」

「俺が望んでいる。織、お前と共にいたい」


織の瞳が揺れ、そして彼女はそっと裕介の胸に身を預けた。


織は、裕介の手で、衣を静かに解かれた。

顔を上げると、裕介がまっすぐに自分を見ていた。

その瞳には、以前には決して持ち合わせなかった色が宿っている。

それから織は、生まれたままの姿で、寝台に横になった。


「織」


「はい」


「もう一度言う」


「はい」


「愛している」





明らかに、違う。

織は、劉禅と交わりつづけながら、そう思った。

房中術も忘れたのか、ただひたすらに、

思うがままに、交わってくるような気がした。

まるで、本当に愛する人と抱き合うかのような優しさと激しさを感じた。


「陛下」


「織」


見つめ合うと、劉禅は、優しい目をしていた。


別人だと、織は思った。

だが、それならそれでいい。

今、自分を抱いている男は、本当に自分の事を想っているような抱き方だ。あの日、劉禅の中で、何かが変わったのか。





(すげえ…めちゃくちゃ…エロい…すげえ、いい女だ)


自分の腕の中で、吐息を漏らす織を見ながら裕介は思った。


(すぐに、出ちゃうかも…でもいいか、また明日も抱けるだろ、俺皇帝だし)


裕介は、織の肩越しに静かに息を吐いた。

胸の奥に溜め込んでいた熱が、ようやく行き場を得たように、ゆっくりと身体の芯からほどけていく。


織は、かすかに身を震わせながら、彼の胸元にそっと額を寄せた。

その仕草は、言葉よりも深く、二人が分かち合った瞬間の重さを物語っていた。


裕介は、彼女の背に手を添えたまま、しばらく動けずにいた。

ただ、静かに寄り添う温度だけが、互いの境界をやわらかく溶かしていく。


(めちゃくちゃ、気持ちいい・・・この人をもう離せない)


そんな思いが、静かに胸に沈んでいった。




交合を終えた後、寝台から離れようとする織の手を劉禅がつかまえてきた。


「陛下」

「どこへ行く?」


「どこへとは、むろん、寝台でございます」

「寝台?誰のだ?」


「私の寝台でございます」

「一緒に寝ないのか?」


「一緒、ですか?」

「そうだ。一緒にここで寝ないのかを聞いている」


本当に別人かもしれない、と織は思った。

皇帝の血筋を絶やさぬため、夜は、側室が入れ替わりで交合をして、子種を受け取る。

運よく、授けられれば、その地位は安泰となる。

だから、正室であろうとなんだろうと、交合が終わったら、次の者のため寝台から直ちに離れる。


「陛下のご嫡子を賜ろうと、皆必死なのでございます」

「そうか」


しかし、劉禅は、織を離そうとしない。


「聞くが」

「はい」


「俺に子供はいるのか」

「残念ながら、今はご嫡子懐妊の報は、どの側室からもうけておりませぬ」


「織は?」


「陛下と交わるのは、今宵で2回目ございます」


それを聞いた裕介は思った。


(劉禅…お前、やっぱ、頭おかしいよ、こんな美人、俺だったら、毎日抱くぜ…

て、いうか、俺、皇帝だよな…抱き放題だよな…やべえ)


「ちなみに、側室は何人いるのだ?」


「はい。ただいまで50人は超えていると存じます」


(…どうやって、そんな数の女を相手しているんだ?!)


「陛下、この後も、控えておいででございます」


そこまで、言うと、織は寝台から離れて出て行った。





しばらく間があり、黄皓の声とともに、側室が入ってきた。


(うげえ…なんだ、こいつ…)


織とはまるで違った。抱く気もならない。形容しがたい醜さだった。

裕介はそう思った。

咄嗟に口にした。


「下がれ」


裕介は、思わずそう言っていた。


側室は一瞬だけ顔を上げたが、すぐに深く頭を垂れた。


「は、ははっ……失礼いたしました」

黄皓が慌てて間に入り、側室を下がらせる。


寝殿には、静寂だけが残った。

裕介は、胸の奥に残る織の余韻と、いま目の前にあった現実の落差に、自分でも驚くほど強い嫌悪を覚えていた。


(皇帝ってのも、楽じゃねえな)

(まあ、変えてしまえばいいか)


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