【悲報】俺(皇帝)、妻への扱いがDVレベルだった
女官たちが去り、紅陽が深く頭を下げたあと。
部屋の外で、硬い金属音が響いた。
カン、カン。
紅陽が眉をひそめる。
「……この音は」
裕介は首をかしげた。
次の瞬間、扉が開いた。
「陛下」
部屋に入ってきたのは、全身を鎧で固めてはいるが、
身体つきから女だった。顔には白い仮面。
(え、今度は誰!? ていうか女!?しかも鎧!?)
紅陽が慌てて膝をつく。
「張皇后……!」
裕介は固まった。
(え…!?張飛の娘じゃん…劉禅の妻か…
なんで鎧武者みたいな恰好してんだ…それに仮面?)
張皇后――張彩(字:織)は、
仮面越しに裕介をじっと見つめた。
「ご無事と聞きましたが、生きておられたのですね」
その声は低く、抑えられているのに、裕介は思わず言葉を失う。
その後ろから、黒い装束の女が静かに現れた。
腰には細身の剣。
動きが軽い。
紅陽が小さく息を呑む。
「……かすみ」
かすみは紅陽に一瞬だけ視線を向けた。
「あの…聞いてもいいか?」
裕介は、鎧を着用した女、張皇后に言った。
「はい」
「なぜ、そんな恰好なのだ?」
織は、ゆっくりと仮面に触れた。
「陛下。 この仮面も、この鎧も、すべて陛下に、つけろと命じられたものです」
裕介は固まった。
(は?DVやん…やべえやつだな、おい、劉禅って、今俺じゃん、どうしよう…)
織は続けた。
「お前の顔は見たくないと。強い女なんだから鎧を着てろ。そう仰いました」
部屋の空気が凍りつく。
紅陽が苦しそうに目を伏せる。
かすみは怒りを隠しきれず拳を握る。
裕介は心の中で叫んだ。
(前の劉禅、最低すぎるだろ!!
なんでそんなこと言ったんだよ!!
俺が謝るしかないじゃん!!)
そして、言った。
「…俺は頭を打った。そして何もかも忘れた」
「陛下」
「皆の名前さえも」
頭を、床にこすりつける。
「どうか、俺の無礼を許してほしい」
しばしの沈黙の後、張皇后が言った。
「陛下…」
「そして…どうか、その顔を見せてほしい。鎧も、外してくれないか?」
「…では、陛下。改めて、着替えてまいります」
かすみが言うと、張皇后を連れて劉禅の居室を出ていった。
紅陽がこちらを向く。
「陛下…本当にお忘れなんですね」
「なあ…紅陽…」
「はっ」
「…俺って、クズだな」




