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異世界転生してやっぱ中世ヨーロッパっぽいなって思ってたら近世ヨーロッパに転生してました…  作者: あああ


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25/25

第25話 警備代

石炭輸送でのギルドの噂は、一夜にして街中に広まった。


 ギルドの雇ったゴロツキを一瞬で蹴散らしたアラマサ自警団の知名度は、恐怖とともに、奇妙な期待を街にもたらしていた。


「……地方長官からの許可証はある。だがマサト、本当にやるのか? これじゃあまるで、スラムの胴元と同じじゃないか」


 工房の執務室で、ジャンが不安げに書類を握りしめていた。

 俺が提示したのは、工房周辺の商店や飲食店に対する個別警備契約の提案書だ。


「ジャン、今の衛兵がこの界隈の治安を守れていると思うか?」


「……いや。あいつら、小銭を握らされたらギルドの嫌がらせも見て見ぬふりだ」


「だろ? ならば、俺たちが守る。街灯を整備し、夜回りを出し、不審者を排除する。その代わり、売り上げの数パーセントを警備維持費として受け取る。……これは略奪じゃない、正当なビジネスだ」


 俺は冷めた紅茶を啜りながら続けた。


「信頼は金で買えるし、安心は暴力で担保できる。それがこの世界のルールだろ?」


 数日後。俺とジャン、それに数人の自警団員を連れて、近隣の商店街を回った。

 かつては俺たちを成金の小僧と白眼視していた店主たちが、今は怯えと期待が混じった顔で俺たちを見ている。


「パン屋の親父さん。最近、ギルドの連中がアラマサと取引するなって嫌がらせに来てるらしいじゃないか」


 俺が声をかけると、恰幅のいい店主が肩を震わせた。

「……ああ。看板を壊されたり、ゴミを投げ込まれたりしてな。衛兵に言っても職人の喧嘩だって笑われるだけだ」


「なら、今日からこれを店先に貼ってくれ」


 俺は「A」と「M」を組み合わせたアラマサの紋章が刻まれた、小さな鉄板を差し出した。


「これを置いている店に手を出した奴は、アラマサ自警団が全力で排除する。その代わり、月々の利益の15パーセントを貰う。……どうだ、安い保険だろ?」


 店主は少しの間躊躇したが、背後に控えるレオたちのライフルの威圧感、そして何より「守ってくれる」という確約に抗えなかった。


「……分かった。頼むよ、アラマサの旦那」



 その日から、アラマサの紋章は街のあちこちで見られるようになった。


 自警団は約束通り、路地にたむろする不審者を力ずくで追い出し、夜道に街灯を設置した。アラマサの管轄内だけは、夜でも女子供がある適度歩ける区域が何ヶ所か出てくるようになった。


 地域住民の信頼は、現金なものだ。

 最初はショバ代取りと蔑んでいた連中も、実際に治安が良くなり、商売が安定し始めると、自警団に感謝の品を届けるようにさえなった。


「マサト……街の連中、俺たちを『アラマサ様』って呼び始めたぞ」

 パトロールから戻ったジャンが、複雑な表情で報告してくる。


「いい傾向だ。これで、この界隈の人間はギルドよりも俺たちの言葉を信じるようになる」


 俺は窓の外で、紺色のコートを着て胸を張って歩く自警団たちの姿を見つめた。

 

 富、武力、そして民衆の支持。ここに来てそれなりの時間が経ったが、俺はこのアランソンという土地に、いつの間にか愛着を持ち始めていた。

 民衆の不満を取り除き、生活の基盤を整える。そうすれば、せめてこのアランソンだけでも革命の火に焼かれず、地獄にならずに済むのではないか。

 そんなことを祈ってしまう、今日この頃であった。


【お知らせ】

いつも作品を読んでいただき、ありがとうございます。私事ですが、少し体調を崩してしまい、今後の投稿頻度が落ちるかもしれません。

楽しみにしてくださっている皆様にはご迷惑をおかけしますが、何卒ご容赦いただけますと幸いです。

回復次第、また元気に更新していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。皆様も、どうぞ体調管理にはお気をつけてお過ごしください

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