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森を抜けた後、何事もなく王都に到着した
門衛が声をかけてくることも無い
貴族特権によるフリーパスというやつだ
「狭い屋敷ね」
ナイアス嬢は頬杖をつき、窓を覗きながらそう呟く
確かにジョベートの実家と比べれば小さいかもしれない
しかしそれは世界最大の港と国内有数の港を比較するようなもので
つまりこれから私たちが生活する屋敷は十分すぎる程の広いのである
「この広さなら使用人が20人も必要なのが分かりますね」
事前に渡されていた名簿を見る
私が今言ったように20人の名前が書かれている
あちらにも問題が無かったのであれば私達より先に屋敷に到着しているはずだ
「何を言ってるのかしら?」
「何を、とは?」
ナイアス嬢は私に目を合わせて微笑む
いや、微笑むというのは不適切だ
殺人を楽しむ者が獲物を前にするような笑い方だ
いや見たことは無いが
「使用人は貴方だけよ、シシールト」
「……は?」
しかし私の手元には名簿がある
キチンと正式にジョベート家から雇用された20人の名前が書かれている
「料理人が5人、清掃員が8人、庭師が4人、雑用の従業員が3人よ」
それは使用人と何が違うのか?
「…何が違うのかわからないのですが?」
「使用人はあなた1人だけってことよ」
だからそれが分からないのだ
小間使いとしては変わらないのでは?
「じゃあ言わせてもらうわね。これから私自身の身の回りの世話は全てあなた1人にやってもらうから」
身の回りの世話…料理も掃除も庭の手入れも雑用もする必要が無いのに何をすればいいのか
「今日からきちんと働きなさい」
「???……はい、わかりました」
色々と知らない私はこの意味を屋敷で馬車から降りた時にようやく知ったのだった




