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石英記―泥被りの旅人―  作者: アルグレイ
イーストアルバス
43/50

21

「腕が落ちたなマルタ、見えているぞ」


廊下の角で師を待っていた

魔術で風を纏い、あらゆる気配を消していたつもりだったのだがあっさりと気づかれてしまった


「えぇ~、そんなに落ちてますかねぇ…」

「生徒だったら補講するレベルだ、ゴーレム研究にかまけすぎだな」


そう言いながら私の横に並び、共に廊下を歩く


「授業は終わりで?」

「基本的な事は教えたし確認した、次からは彼に合わせた指導をしていく」

「なるほど、で、どうでした?才能があった…とは言えないでしょうが、なかなかに特殊な資質でしょ?」


師は歩みを止めず顔を少し下げて軽い溜息を吐く


「一点を除けば凡人も凡人だ。だがお前にはその一点が輝いて見えたのだろう」

「出力関係ですか?」

「そうだな。これは私が今考えた完全な造語だが、魔力孔…とでも言おうか」

「魔力孔、魔力の穴ということで?」

「魔力とは肉体の何処から生まれ、何処から出て行くのかが今だ判明していない。それはお前も知っているだろう」

「はい、一番有力なのは魂が魔力を産み、魂から放つという説でしたか?」


そしてこの説に追従する説が

「魔力とは生命力、寿命ではないのか」という考え

つまり魔術を多用する貴族は早死にしているのではないか?という考えが少なくない


「まぁお前が危惧するようなことは無かろう。いくつもの戦場で魔術を使いまくったワシも、権力維持のために魔術に傾倒している貴族も、大勢大往生している奴が多い」

「勝手に考えを読まないでほしいものですねぇ」

「お前の表情が読みやすいのが悪い」


師はケラケラと笑う

笑いながら鞄からとある物を取り出した

魔獣の脂で作った四角い固形物、無属性魔導士の力を計る物だ


「見ろ、貫通している」

「貫通…はしていますが、これは特に珍しいことではないのでは?」


もっと凄い状態はリンハウの計測で見たことがある

あの時は完全な筒状になる程の出力だった


「これが彼の特異性だ、彼は魔力を放出するための孔が極めて小さい」

「ああ、だから魔力孔なんて言い出したんですね」

「そうだ、今までこんな者は居なかった、誰も彼もが魔力の総量を考えていたからな、私を含めて」


放つ魔力の量で出力を決めつけていた

それで今まで正しかったのだから

だが彼は違う


「量で判断するなら彼の素質は最低値だ」

「…出力ならば?」

「同じ魔力量と比較するなら…そうだな、一流魔導士の4倍、いや6倍は出力効率が良い」


なんてこった

一流魔導士

つまり貴族に匹敵する魔導士としての資質が彼には有るという事だぞヒャッホイ

まぁ、極めてニッチな使い道になるのだろうが

これは色々と研究のステージが上がるに違いない、むしろ今現在色々と思いついてきた


「嬉しそうなのは結構だが、彼は平民だぞ?」

「だからこそです」

「何が「だからこそ」だ、彼は次期王妃の使用人として扱われているそうではないか、役目が終われば口封じに消されるぞ?」

「ええ確かにそうでしょう、でもそれ以外に{使い道}があるなら彼の安全は保障されますから。その点、きちんと公爵殿に確認済みです」

「お前の実験に使うのか?」

「ええ、徹底的に試して見せます。何年かかるでしょうね?5年かな?10年?その間に色々学んでしまえばいいのですよ」

「…役目が終わったらどうする?」

「幾ら貴族でも罪の無い人間を殺すことはできません」


正確には

出来るが他派閥に付け入る隙を与えるため行わない

であるが


「やるとするなら自由にした後…」

「犯罪や事故の犠牲者になる、か」


そうすれば{不幸な出来事}で処理される

貴族達も悲しむ素振りをしてそれで終わり

逆に言えば力があれば

事故や事件、それに見せかけた暗殺を振り切れば生き残るチャンスがある


「彼の過去を確認したが、本当に不幸な人生だな」

「生きているなら幸運ですよ」

「貴族の戯言に巻き込んだお前が言っていい言葉ではないよ」

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