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石英記―泥被りの旅人―  作者: アルグレイ
幼年期の終わり
4/45

日々を忙しなく生きていると時間の経過は早いもので

気がつけば10歳になっていた

あくまで推定であって正確な年齢は分からないままだ

ここまで来たらおそらく一生分からないままであろう


「おはようございます」


恒例となった酒場への出勤

だが私はこの時既に洗濯は行わなくなっていた


「おう、裏に台車は用意しといた」


ここの酒場のマスターは他よりも勤勉だ

まだ太陽が出ていない時間から仕込みを始めていることが多い

この街での孤児の扱いが変わりつつあった

理由は私らしい

「孤児でも丁寧に教えれば使い物になる奴はいる」

そういう認識になりつつあった

時々私が感謝されることもあったがそれは間違いだ

私は自分のために行動しているのであって他人の事などどうでもいいのだから

洗濯も私より幼い孤児に仕事を譲った結果だ

私は10歳になる間にそれなりに力がついた

ならばより収入の大きな仕事を見つけようとした結果である


酒場の裏に荒い木材で作られた台車があった、目的のものだ

これを引いて今日の目的地、街外れの東側に向かう


「おう、泥小僧」

「牛乳、取りに来ました」


家畜の糞尿と湿ったりカビの生えた牧草のすえた臭いが鼻に刺さる


「手伝います」

「重いぞ大丈夫か?」

「1個づつなら問題ありません」


牛乳が入った水瓶は重い

心配してくれる農夫が脚を引きずっている

先日この水瓶を落として足の指の骨を砕いてしまったのだ

油断すると大けがをする仕事

リスクが大きく洗濯よりも儲かる仕事である


「よし、縛ったぞ」

「ありがとうございます」


農夫が台車に水瓶を縄で固定する

その間に私は台車を引く準備をする


「では失礼します」

「気を付けてな」


そうして農夫に別れを告げて再び酒場に向かう



―――



詳しいことは分からないが私には前世の記憶がある

名前、年齢、性別

すべて失っているがふとしたきっかけで何かを思い出す時がある

先日も井戸から水を掬っている時に思い出した

(水道が無いって不便だな)

そんな考えが頭に浮かんで疑問に思った

水道なんてモノを知らないのに何故それが鮮明にイメージできたのか

夜の暗がりを見て思った

(蛍光灯一つないとはなんて不便なんだ)

そんな物当然知らない

街の大人に聞いてもそんな単語聞いたこともないと言う


自分の前世は食事、衣服、住居、教育、夜灯りに不便の無い人物だったらしい

どこぞの貴族か王族か

まぁそんなこと口にすれば頭のおかしい人間だと思われるだろう

今まで作ってきた大人達からの好感がすべて失うのは間違いない

黙っているべきである

そもそもケイコウトウもスイドウもどうやって作るのかわからないのだから何の意味もない

出来れば早く役に立つ、応用できる記憶が戻ってくれることを願う


「おう、おかえり」


そんなことを考えながら歩いていたらすぐに酒場に到着した

予定よりも早い

街はまだ人通りが少ない


「ほれ、本日の駄賃だ」

「ありがとうございます」


銅貨50枚が支払われた

次の仕事に向かわなければ

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