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石英記―泥被りの旅人―  作者: アルグレイ
イーストアルバス
38/50

16

リッシュラウドから貴族用の上等な馬車で3日

1日の半分を移動に費やし、その速度を10キロメートルと仮定して

距離にしておそらく200から300キロほど揺らされていると街が見えてきた

街までまだ20キロほどは離れているはずなのだがハッキリと目視できる

その大きさはまさに大都会

エクセラ、リッシュラウドとは比べ物にならない


「大きいですね…」


思わずそう呟く

そしてそれを聞き逃さない同乗者


「当たり前でしょう?この街こそが我がジョベート公爵家の中心なのだから!」


子供が自慢するように胸を張るナイアス嬢

いや、子供なのだが


「いやーこの街も久しぶりだなぁ、全然変わってないなぁ」


同乗者その2のマルタはこの街に来たことがあるらしい

因みにその3はジョベート家に仕える初老のメイドである

移動中、お嬢様の世話をするために向かえの騎士団と共に来てくれたのだ

そんなメイドが静かに口を開く


「シシールト様にはまず騎士宿舎に向かってもらいます」


そこで騎士に身体検査をされるとのこと

マルタ曰く


「一流の暗殺者は胃や肛門に凶器を隠すことがあるからね」


つまりここまで来て未だに私は警戒されているのである

ナイアス嬢は父への手紙に私のことを書いている


-孤児で平民であるがそれなりに学のある人材を発見した-


私が聖女であるということは切り札である

彼女にとって、私に対して

つまり脅迫材料である

この切り札を取り除けない限り私はこのお嬢様に扱き使われる人生になる


―――



「ここでしばらく待て」


騎士宿舎で降ろされて室内に連れていかれる

尋問部屋のような部屋を想像していたがそうでもなかった

ごく普通の、少し大きな部屋

その中央に大きな机と椅子がある

部屋の一角には大きな鏡

この人生で初めて姿見を見た

…というか鏡を初めて見た


覗き込んでみる

現れたのは貧乏くさい格好をした美少女

それが自分だとは到底思えない

前世の記憶はほとんど無いがこんな美しくは無かったはずだ

きっと、おそらく、たぶん

首から下はただの少年

とてもアンバランスな見た目をしている

鏡を覗き続けていると違和感を感じる

その正体を探すために自分自身を凝視する

そしてありえないことに気付いた


「……ある、よな?」


首から下げた白濁りの水晶、イクスレイターを摘んで持ち上げる

だが鏡の中の自分の指は何も持ち上げていない

水晶そのものが鏡の中には存在しない

水晶と鏡を交互に見る

鏡を、水晶を、鏡を、水晶を、かが…

鏡の中の自分は手を下げて笑っていた

不気味な笑み

まるでこれから私を喰らわんとしているかのような猛獣のような笑い顔


「待たせたな」


後方にあった扉が開き、老齢の騎士が部屋に入ってくる


「……鏡がどうかしたのかね?」


鏡から目を離して騎士を見る

特に何もない

再び鏡を見ると

そこにはきちんと自分と同じ動きをする私

ハッキリと鏡に映る水晶


「…いえ、大きな鏡を初めて見たもので」


なにか、見てはいけないものを視た気がした

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