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石英記―泥被りの旅人―  作者: アルグレイ
イーストアルバス
37/50

15

連日、円盤を吹き飛ばす日々が続く

マルタの要求でとにかく用意された円盤に魔力を流し

悉く吹き飛ぶ

4回目の時に工房の道具に直撃して(珍しく)マルタが悲鳴を上げた

5回目からは外で行われるようになった


「おう、今日も精が出るな!」


早朝、屋敷を通りがかる人々に声をかけられるようになった

3日目あたりになるとモーニングコール扱いにされていた

お嬢様とマルタにいい様に扱われる日々はようやく9日目

明日になればジョベート家の迎えが来るのでやっといつもの日々が戻る

マルタの実験以外は…


「いやぁ、なかなか有意義な日々だねぇ」


壊れた円盤に囲まれてマルタはそう答える


「何か意味があるように感じませんけどね」


マルタには何が見えているのか私にはまるで分らない


「いやいや、今度こそ大丈夫だから安心してくれたまえ」


そう言ってまた円盤を用意する

それに私はいつものように魔力を込め


「……弾けませんね」


今までのとは違い吹き飛ぶことも分解することも無く

安定して静かに回転する円盤が目の前にあった


「いようっし!」


マルタが喜び跳ねる


「シシールトも喜びたまえよ!これは魔道研究の、いや世界的な成功だよ!」

「はぁ…」


これが何だというのか

ただその場で回転するだけだ


「分かってないねぇ、これの応用で馬車の車輪を作ったらどうなると思う?」

「…馬がいらない?」

「正解!他にも色々あるよ、そうだね旋盤もより高性能な物が作れるようになるね紡績にも使えるはずだそれと…」

「止まってください、もう夜ですから」

「ああ、ごめんごめん、お姫様が怒るからね」


お嬢様だけではなく街の方にも迷惑がかかる


「べつにそれくらいじゃ怒らないわよ」


黙ろうとしていた私達の前にナイアス令嬢が現れた

いつもなら寝ている時間なのに


「早く寝ないと明日に響きますよ」

「これくらいでそんなことになるわけないじゃない、それよりもよシシールト」


驚いた

今の今まで公爵令嬢に名前なんて呼ばれたことが無かったので心の底から驚いた


「明日迎えが来るのは知ってるわね?」

「えっ、あ、はい、そうですね」

「シシールト、お前も同行しなさい」

「…………は?」

「このナイアス・エトワール・ジョベートが、お前を正式な使用人として雇ってあげる」


ここで断ると答えて良いものか

マルタに視線を向けると顔を青くして首を横に振っていた

なので私の答えは


「お断りいたし…」

「断るなんて言ったら聖女の正体言いふらすわよ?」


何を言ってるんだコイツは


「聖女が実は男でした。なんて広めたら大変よねぇ、王侯貴族全員を騙したなんて知られたら処刑かしら?」


ふざけるな

そもそも聖女なんて言い出したのはこいつが最初で…

あ、しまった、そういう事か


「アンタ、この屋敷に来た時点で私を連れて行く目論見だったのか?」

「そうよ、それが何か問題?」


何とか逃げる方法は無いのか


「マルタさん、どうにか…」

「マルタ、貴女にも助けてくれたご褒美を上げないとね。侯爵家がパトロンになる、なんてどうかしら?」

「よしシシールト今日から頑張ろうかお世話になります公爵令嬢!」


どうしてアンタはそうも欲望に塗れているんだ

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