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石英記―泥被りの旅人―  作者: アルグレイ
イーストアルバス
33/50

11ーR

「ねぇ、まだ屋敷につかないの?」


気に食わない

なぜ私がこんな馬車に揺らされて嫌な気分にならなければいけないの?


「現在、大街道の中間です。朝日が昇る前に到着しますよ」


付き従うメイドの2人はさっきからそればかりだ

東西南北全ての王都に繋がる大街道は深い森に挟まれているのが気に食わない

8年経ったらこんな暗い森に囲まれた王都で暮らさなければならない


「私が妃になったらこんな森全部切るなり焼くなりして真っ平にしてやるんだから!」


ジョベート家の領地が世界一だと私は自信を持って言える

だってそうだろう

宝石の生産

魔導士の数

畜産

農業

漁業

全てがバランス良く整えられた領地だ

肉と乳ばかりの南、小麦ばかりの北、貿易頼りの西とは違うのだ

そして景色が素晴らしい地平線から毎日眺める日没は美しい

なのにこの森のせいで日の出は見ることができないのが不愉快だ


「私が王妃になったらお父様に伐採をお願いするわ、そうすれば木材も大量に手に入るしさらに利益が出るわね」

「それは素晴らしい考えかと…っ!」


同じ馬車に乗っていたメイドの身体が浮いた


「きゃあああ!」


皆で悲鳴を上げる

私の身体が宙に浮く

何が起きたのかわからないままそのまま身体が馬車の扉に叩きつけられる



―――――












「……痛っ!」


痛みで目が覚めた

私は馬車の扉の上に寝ていた


「お、お嬢様、ご無事ですか?」


メイドの1人が声をかけてくる


「大丈夫なわけないでしょ、全身痛いわ…よ……?」


もう1人のメイドは逆さまになったまま動かない

首が…

首が変な方向に曲がったまま

目を見開いて動かない


「ひぃっ!」


暫くして死んでいると気が付いた


「た、助けを呼びましょう」


メイドはそう言うと外にいるはずの騎士達を呼ぶ

しかし何度呼んでも騎士達の返事は無い


「仕方ありません、とりあえず外に出ましょう」


メイドは背を伸ばし天井となった馬車の扉に手をかけ押し開く


「……あぇ?」


扉が開いた瞬間にメイドの手を誰かが掴む

そしてそのまま引き上げて…


「あ、や、いやぁぁぁぁぁ!」


私の見えないところで悲鳴を上げる


「いやぁやめてぇ!たすけてぇ!」


嫌な音が聞こえる

バキバキと何かが折れる音

ビリビリと千切れる音


「やべで!だべないでぇ!だべゃげっ!」


すぐに声がしなくなった

何が起きたのか理解した

とにかく声を出さないで

音を立てないで

ナニかが去るのを待たなければ


家畜のような荒い息遣いが聞こえる

ずっと近くにいる

怖い

音が少し遠のいたと思ったらまた近づいてくる

怖い

身体の震えが止まらない

怖くて私から何かが漏れたがそんなことは気にする暇もない

開いた扉に大きな手が

メイドを引きずり出して  した大きな手が見える

怖くて息が出来ない


「ひぃぃぃ!」


外から悲鳴が聞こえる

すると扉を掴んでいた手が離れ

ナニかは私の近くから離れた

何が起きたのか

私は助かったのか?

悲鳴の正体は何だったのか?

メイドはどうなったのか?

その疑問が私を馬車から出す

なんとか座席のでっぱりを使って扉に手を伸ばし

ようやく顔を出すことができるとそこにはメイドだった肉塊が転がっていた


「ヒッ!」


すぐに悲鳴を止める

肉塊の先にその元凶が居たからだ

魔獣だった

お父様の書斎で見たトロルと呼ばれる化け物

それの向かう先に貧相な幌馬車が止まっている

おそらくあの中の者もメイドのように…

その次は私?

私もぐちゃぐちゃにされてしまうの?

あっちが殺されている間に逃げよう

でも動いてるのが見つかったら私を追いかけてくるかもしれない

あちらを殺して満足すれば帰ってくれるかもしれない

どうすればいいの?

誰か教えてよ!

なんでこんな時に限って私の周りには誰もいないのよ!

ああ…

幌馬車の中にトロルが身体を入れた

野太い悲鳴と共に中から血が噴き出した



……………そのままトロルは動かなくなった

代わりに中から人が出てくる

大人の女性と

全身血塗れのドレスを着た少女だった

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