10
騎士の言う通りに何も話さず
その場でただ立っているだけで話が進んでいく
馬車が王都に到着してすぐに入城
すでに多くの貴族が私達の到着を待っていた
どこかしらで必ず貴族が話しかけてくるがマルタが対応してくれるので一切声を発することも無い
私はドレスを着用している
12歳の少女が着るために仕立てられたドレス
長いスカートに長い袖で
首から下の肌を完全に隠している
ドレスの下は男物のインナーで
インナーとドレスの間にマルタが用意したパワードスーツを身に着けている
{スーツ}というには少し違うか
かなり小型化された円盤型強化関節のみで構成されているからだ
これのおかげでずっと立っていても足腰が疲れることも無い、便利だ
そんなこんなで常時無表情で貴族達の演説を聞かされる
正直もう聞き流しているので何を言っているのかも覚えていない
「むっ…?」
そんな時に頭に何か当たった
当たった何かは足元に落ちる
くしゃくしゃに丸められた紙屑だった
再び頭に紙屑が当たる
誰かに投げつけられている
「あ~、目をつけられちゃったねぇ…」
すぐ隣にいたマルタも気づいた
彼女が原因に顔を向ける
私と同じくドレスを着た少女だった
おそらく私より若い、10歳といったところか?
背中が隠れるほどの長い金髪を縦ロールにしたまさしくお嬢様、といった少女だ
ストレートにしたら腰まで届くんじゃないだろうか?
「アレ、どちら様ですか?」
マルタに小声で質問する
彼女も小声で返す
「ナイアス・エトワール・ジョベート。ジョベート家の長女だよ、知ってる?ジョベート家」
「いいえ」
「イーストアルバスで一番大きな貴族、つまり公爵だね」
「…四大貴族の1つ?」
「そう、公王はいま困ってるんだ、嫁がいなくてね」
「嫁がいない?これだけ貴族がいるのにですか?」
私達が現在立たされている場所は王城のホールだ
超巨大なオペラハウス内部のような場所に大勢の貴族がいる
その中には当然女性もいる
その数は200人は超えている
「正確には公王ではなく公太子、次期公王だね。その子の嫁に難儀しているんだ」
「公太子殿下は今幾つなんですか?」
「今は16だったかな、そんな御方の嫁になるための条件、分かるかい?」
年齢が近い
立場が近い、といったところだろうか?
「正解、それで今の四代公爵は年頃の娘が2人しかいないんだ『アイリス・ビオンデッティ・ヘルマン』と『ナイアス・エトワール・ジョベート』」
アイリス…
アイリス・ヘルマンの事だ
そういえば彼女も公爵令嬢か
「娘が嫁げば公国内での発言力が増すからね。ああ今の公王はノースアルバス公爵の直系だからそこら辺もややこしくなってる原因かな?セーデフブスタ公爵家」
「他家の公爵令嬢を嫁がせたくない?」
「そういうこと、でも今までの慣例を無視するわけにもいかないからね。それでその慣例には功績ある女性が公王の側室になった事もあったりするんだ」
「あぁ~…」
つまり紙屑を投げつけてきた公爵令嬢にとって私は立場を奪いかねない敵という事か、私は男なんだがね
「まぁ我慢してくれ、このお披露目が終わればキミという女性は消えてしまうんだから」
「そうします」
どうせこれっきりの出会いなんだから子供じみた嫌がらせなんて気にすることでもない
嵐は黙って通り過ぎるのを待つのが最善である




