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「労働環境の改善を要求します」
3カ月後に私は音を上げた
「え~、まだまだ試したい形式があるんだよ?」
悲鳴を上げているのは私だけではない
「なんで俺まで駆り出されてんだ…」
お目付け役としてラングルまで私の巻き添えになっている
これは本当に申し訳ないと思う
しかし文句を言う事は許されるはずだ
日の出と共に起床して
朝食や準備を終えたらギルドの向かい
依頼を受け
終わったら夕食までひたすらマルタが作った試作品のテスト
「ちゃんと2人に給料払ってるんだからその分は働いてもらわないと」
マルタがテストする試作パワードスーツを選び
ラングルがそれを私に装着して
私はマルタの言う通りに動く
言葉にすると簡単そうだが運動量が酷い
汗が全身から垂れ流しで乾く暇すらない状況が続くのだ
10歳にさせる事ではないのだ
ブラックとか以前に児童虐待なのだ
しかしこの世界に虐待なんて概念は存在しないので意味が無い
子供は親の所有物なのが当たり前の世界だ
「そんなに疲れたなら今日は終わろうか。ある程度溜まったデータを纏めなきゃだし」
そう言ってマルタは運動場に置かれた机に座り執筆を始める
現在私とラングルは大きな屋敷の敷地内にいる
ベルトルート家、貴族の別荘だ
「よし、外れたぞシシールト」
「ありがとうございます」
ラングルが私からパワードスーツを引き剥がしてくれる
「じゃあ夕食を作ってきます」
「ああ、頼んだ」
「美味しいのよろしくね~」
この3カ月で夕食を作るのは私の役目になってしまった
ラングルは干し肉しか食わない
マルタは食事なんて作らない
何より別荘なのに
貴族の屋敷なのにここの住人はマルタ1人だけ
屋敷は立派&頑丈なのだが全く手入れされておらず埃や蜘蛛の巣が酷い
何故こんな状況なのか聞いてみれば
「使用人雇う金があるなら研究に使うからさ!」
である
彼女がここに住み着いて最初に行ったのは使用人の解雇と実家へ送り返す事だった
「何をしてるんだか私は…」
文句が口から出るが収入は良い
毎日金貨1枚が支払われる
金貨1枚で銀貨100枚
銀貨1枚で銅貨100枚
そして銅貨30枚で平民の1日の食事
大儲けである
ただし最初の1カ月は色々と支出が多かった
食事の用意とは言うが別に料理をするわけではない
市場で買ってきた物を保存して
必要な量を切ったり温めたり盛り付けたりするだけだ
その為の包丁とか保管庫とか薪とかが一切なかったのがこの屋敷
本当にゴーレム研究しかしていないのだあの女
保管庫から3人分の黒パンを取り出す
その際に何かが部屋の隙間に落ちているのを見つけた
「…紙?」
引っ張ってみるとそれなりの大きさで厚みのある紙だった
言うなれば画用紙
2人の人物が描かれている
片方は分かる、マルタだ
もう片方は、子供だ
「おーい、薪でも切れたかい?」
「いえ、これが落ちてました」
結構待たせたのかマルタが様子を見に来た
そんな彼女に拾った画用紙を見せる
「…あー、何処にもないと思ったらそんなところにあったのかぁ」
――――
それは今から10年前
流れの画家に書いてもらった人物画
描いてもらったのは私と弟
そして弟が最後に自分の足で立っていた日を記した絵
それは奇病だった
ある日突然弟は四肢に力が入らなくなった
日を追うごとに弟の手足には力が無くなっていく
誰もその原因は分からない
分からないから探した
治療は不可能と判断した
ならば手足を補佐するナニかを作ればよい
そうして私は何人もの使用人を殺した
殺すつもりは無かったが結果的に殺したのだから同じだ
だが私は貴族であり
使用人は平民である
なので罪には問われることは無く
だが体裁が悪いため私は実家を追い出された
その先で解決の手掛かりを得たのは皮肉な話だ
これはそれだけの話だ




