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暗い
閃光に包まれたと思えば私は暗闇にいる
目を開いているのか
上下どちらに向いているのか
そもそも立っているのか寝ているかもわからない
右手には僅かな隙間がある
何か分からないかと手首を動かして周囲を探る
ふと何かに指が触れると鼓動を感じた
それが何かすぐにわかった
ゴーレムの一部に触れたのだ
そのまま指からゴーレムに魔力を流し込む
ゴーレムは魔力に従って私から離れていく
そうして空間が広がっていくと小さな光が見えた
外だ
ゴーレムを操って光に向かって空間を広げていく
その度に木材が割れる音
石が崩れる音が聞こえる
空が見えた
真っ青な空が見えた
まだ日は落ちていない
人が通れるほどになった隙間からゴーレムを使って自身を引き上げる
息苦しさから解放されて視界もはっきりとしてくる
「……………?」
周囲を見渡す
私は街にいたはずである
5年間出たことがない街が目の前に広がっているはずである
「………おい……………」
人々の声が聞こえるはずである
「…か……誰か……」
目の前には{ }が転がっている
上半身が炭化しているがさっきまで目の前で5体のゴーレムを操っていたはずである
振り向くと{ }が転がっている
頭が無いけどその姿は見間違うはずがない
さっきまで一緒に処理作業をしていたはずである
風が吹く
吊り下がった瓦礫が音を立てるだけでどこからも人の声が聞こえない
「誰か!誰かいないのか!」
まだ飛竜がいるはずなのに迂闊にも大声で叫んだ
だが幸いな事に飛竜が私の視界に入ることは無かった
「おい!おい!誰か!」
私は全身切り傷だらけだが五体満足である
痛みは不思議と感じない
それよりも状況を確認しないといけない
そうだ、北区に行こう
何か分かるかもしれない
何一つ無事な建物は無いがここだけかもしれない
他の場所に行けばまだ人が居てきっと復旧作業をしているはずだ
バードゥルに{ }が死んでしまったことを報告しなければ
北区に向かう
無事な建物はまだ見つからない
瓦礫にもたれかかるバードゥルを見つける
「バードゥルさん!」
{ }はこちらに見向きもせずに空を虚ろな表情で見上げている
「バ……」
右半身が無くなっていた
「……っ孤児院!」
街の中心にある教会
あの生き汚い
訂正、世渡り上手な老婆なら無事な筈だ
もう諦めろよ
どう見たって街全体が瓦礫になってるんだから
無事な場所なんてひとつもないんだから
「そんなはずない、誰かが生きてるはずだ」
1500人が一瞬で一斉に死ぬ?
そんなことあり得るはずがないだろ
「…あ、あ……あ…」
言葉も出ない
瓦礫に潰された老婆がいた
木材に突き刺さった子供がいた
木材が突き刺さった子供がいた
全身が変な方向に曲がった子供がいた
誰一人
この街の生存者は居なかった
私以外
―――
日が暮れた
雲ひとつない夜空
月明かりが街だった場所を照らす
まだ私は現実が受け入れられず
心は乱れたままだ
だがただ一つの感情が私を突き動かす
「死んでたまるか!」
死にたくない
わけもわからず
やりたいこともできずに
やりたいことも無いまま死んでたまるか
瓦礫の山から何かないかと探す
自分に覆いかぶさっていたリンハウのゴーレムが役に立つ
銀貨と銅貨を見つけそれをずた袋に詰め込む
食料も見つけた
水や泥をかぶったパンはすぐに食べてしまう
状態の良い干し肉や瓶詰めを集める
「あっ!」
そしてついにゴーレムも魔力導体が擦り切れて動かなくなってしまう
子供の私ではもう瓦礫を持ち上げることができない
探索はこれで終わりか
そう思い、安全に寝れそうな場所を探す
その途中で見つけたのは初めて触れたゴーレム
脚が壊れて放置されていた大人くらいの大きさのゴーレム
「……そうだ!」
鍛冶場のあった場所に走り向かう
瓦礫の中でも無事な鉄製の容れ物があった
「鍵が…あった!」
近くの死体に鍵がついていた
錠はそれで開いた
中にあったのは上等な魔力導体の束
魔力導体と工具を抱えてゴーレムの元へ戻る
ゴーレムの腕と脚を外す
魔力導体を握り試行錯誤を繰り返す
それは5日間続いた




