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石英記―泥被りの旅人―  作者: アルグレイ
幼年期の終わり
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「おまえは今日からシシールトと名乗りな」


私を助けてくれた男は私を教会に連れてきた

そしてその教会を牛耳る老婆はシシールトと私を名付けた


「泥塗れで何もないお前にはお似合いさ」


シンダー(灰)とシルト(泥)でシシールト

適当で分かりやすい名付けである

そして私は今この瞬間から5歳の少年として扱われる

身長等からの推測でそう決められた

翌朝からすぐに役目が決められた

教会の脇にはくたびれた小屋がある

孤児院だ

日の出と共に起きて小屋の掃除

小屋の周囲にある畑で様々な物を育て、売る

どれほどの価値、相場があるかは分からないが野菜1個で銅貨数枚


「おや、マルンは銀貨を貰ったんだね」


基本、男は銅貨しか老婆に渡せない

売れる物が育てた野菜や果物しかないからだ

10歳を過ぎた女達はよく銀貨を持ってくる

独自に高値で売れるモノがあるからだ

そしてよく銀貨を収める女は殆どが15歳を過ぎる前に姿を消す

たまに見目麗しい少年が消えることがあるが老婆は気にすらしない

いや、時折自分の部屋で気分よく金貨を数えているのを見る

つまりそういう事なのだろう

孤児院から出て行けなかった女は修道女として教会に住むことになる

大半は足を引きずりながら身体から酷い臭いを出していつの間にか墓地に埋められている



ここまでのことを知ったのが2カ月

推測、憶測が混じっているが大体合っているだろう

15歳を過ぎた男は孤児院を追い出される

「あとは勝手に生きろ」と

ならば15歳になるまでに私は生きるための手段を確立しなければならない

あと10年しかない

出来ることは…驚くほど少ない

文字もわからない

身体は非力

計算は…できるな

多少の知恵は前世の記憶というアドバンテージがある

断片的だが役に立つはずだ


「金を稼ぎたいだぁ?」


たまに教会に来る兵士がいる

10歳を過ぎた女達を目当てにした兵士だ

順番を待つ間に彼らと話をする


「欲しいものが沢山あります」

「何が欲しいんだよ?」

「剣とそれを振るう技術、身体と文字を覚えるための本、それから…」

「んな都合よく手に入るわけねぇだろ」


ですよね


「文字は最優先で覚えたいです」

「ふん、まぁ何かあったら持って来てやるよ」

「ありがとうございます」

「金は払ってもらうからな」

「分かりました」


とにかく自分は非力だ

なんでも利用して力を付けなければならない

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