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「持てるだけ持とうとするな、欲張ると死ぬぞ!」
大勢の女子供が北区へと走る
その中には大荷物を抱えて歩けなくなっている人もいた
「その荷物を下ろせ、走れ走れ!」
「嫌よ、このあとどうやって生きろっていうのよ!」
リンハウの警告を聞き入れずに手を離さない人もいた
「シシールト!」
「はい!」
抵抗する女性の手を掴んで無理やり荷物を引き剝がし
先に進ませる
引き剥がした荷物が散乱する
その中には金属製の鍋も入っており
それが坂道を転がり落ちていく…はずだった
グシャリ、と坂道の下側で音が聞こえる
金属がひしゃげた音だった
「うっそだろ…」
後ろを見るリンハウの顔から汗が噴き出す
私はまだ後ろを見ていなかった
後ろから声が聞こえる
鳴き声だ
山羊の鳴き声だ
だがこんな街の真ん中に山羊がいるはずがない
それに声こそ山羊だが
それは私に知る山羊とは思えない程に重く、低く、大きい声だ
そして私が後ろを向くとそこにいたのは
「バフォメット…っ!」
リンハウがその名を出す
黒毛、大角の雄山羊の頭
人の形をしているが到底人とは思えぬほどの筋肉を付けた上半身
牛馬よりもはるかに太い獣の脚
『め゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!』
更に大きく鳴いた、いやもはや咆哮だった
そしてこちらに向かってきた
「マズいマズいマズい!」
リンハウはゴーレムの制御と非難誘導で手一杯
その避難者たちはバフォメットを見て散り散りになる
このままだと誰かが狙われて死ぬ
誰が死ぬ?
「こっちだ家畜野郎!」
私は馬鹿だ
なんて馬鹿だ
「シシールト、何してる!」
リンハウのゴーレムの中で人が掴まってない1体の頭にしがみつく
人間でいう所の耳のあたりに両手を当てる
自分の鼓動をゴーレムから感じる
その鼓動に合わせて魔力を流しゴーレムに行きわたらせる
動け
動け動け
私に従え
俺の言う通りに動け!
俺の手足になれ!
『め゛ぇ゛っ!』
突撃してきたバフォメットの頭を殴る
ゴーレムの石の腕で繰り出されたソレは
雄山羊の角を砕き、肉体を吹き飛ばした
「出来た!」
だが喜んでいる暇はない
即座にゴーレムでバフォメットに駆け寄り頭を踏みつける
何度も何度も踏みつける
だがバフォメットはまだ動き抵抗する
数十回踏んだところでようやく動かなくなった
「はぁ…はぁ…はぁ………」
凄まじい疲労感が身体に襲い掛かってくる
「シシールト、無茶しやがってこの馬鹿!」
リンハウがこちらに向かってくる
だがまだだ
「リンハウさん!」
坂の下から新たな魔獣
今度は2体、いや4体
「非難を急いでください!」
「おま、この馬鹿野郎が、戻ってきたらぶん殴ってやるからな!」
魔獣に向けて俺は突貫する




