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石英記―泥被りの旅人―  作者: アルグレイ
幼年期の終わり
17/50

17

「持てるだけ持とうとするな、欲張ると死ぬぞ!」


大勢の女子供が北区へと走る

その中には大荷物を抱えて歩けなくなっている人もいた


「その荷物を下ろせ、走れ走れ!」

「嫌よ、このあとどうやって生きろっていうのよ!」


リンハウの警告を聞き入れずに手を離さない人もいた


「シシールト!」

「はい!」


抵抗する女性の手を掴んで無理やり荷物を引き剝がし

先に進ませる

引き剥がした荷物が散乱する

その中には金属製の鍋も入っており

それが坂道を転がり落ちていく…はずだった

グシャリ、と坂道の下側で音が聞こえる

金属がひしゃげた音だった


「うっそだろ…」


後ろを見るリンハウの顔から汗が噴き出す

私はまだ後ろを見ていなかった

後ろから声が聞こえる

鳴き声だ

山羊の鳴き声だ

だがこんな街の真ん中に山羊がいるはずがない

それに声こそ山羊だが

それは私に知る山羊とは思えない程に重く、低く、大きい声だ

そして私が後ろを向くとそこにいたのは


「バフォメット…っ!」


リンハウがその名を出す

黒毛、大角の雄山羊の頭

人の形をしているが到底人とは思えぬほどの筋肉を付けた上半身

牛馬よりもはるかに太い獣の脚


『め゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!』


更に大きく鳴いた、いやもはや咆哮だった

そしてこちらに向かってきた


「マズいマズいマズい!」


リンハウはゴーレムの制御と非難誘導で手一杯

その避難者たちはバフォメットを見て散り散りになる

このままだと誰かが狙われて死ぬ

誰が死ぬ?


















「こっちだ家畜野郎!」


私は馬鹿だ

なんて馬鹿だ


「シシールト、何してる!」


リンハウのゴーレムの中で人が掴まってない1体の頭にしがみつく

人間でいう所の耳のあたりに両手を当てる

自分の鼓動をゴーレムから感じる

その鼓動に合わせて魔力を流しゴーレムに行きわたらせる

動け

動け動け

私に従え

俺の言う通りに動け!

俺の手足になれ!


『め゛ぇ゛っ!』


突撃してきたバフォメットの頭を殴る

ゴーレムの石の腕で繰り出されたソレは

雄山羊の角を砕き、肉体を吹き飛ばした


「出来た!」


だが喜んでいる暇はない

即座にゴーレムでバフォメットに駆け寄り頭を踏みつける

何度も何度も踏みつける

だがバフォメットはまだ動き抵抗する

数十回踏んだところでようやく動かなくなった


「はぁ…はぁ…はぁ………」


凄まじい疲労感が身体に襲い掛かってくる


「シシールト、無茶しやがってこの馬鹿!」


リンハウがこちらに向かってくる

だがまだだ


「リンハウさん!」


坂の下から新たな魔獣

今度は2体、いや4体


「非難を急いでください!」

「おま、この馬鹿野郎が、戻ってきたらぶん殴ってやるからな!」


魔獣に向けて俺は突貫する

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