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石英記―泥被りの旅人―  作者: アルグレイ
幼年期の終わり
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――寒い


「あっ、おい!こっちに生きてる奴がいるぞ!」


――寒さで震えが止まらない


「おい、聞こえるか!」


昨日は何をしていたのか思い出せない

少なくともこんな寒い思いをするはずはないのだが


「乾いた布を用意しろ、集積地の焚き火ももっと増やせ!」


そう言って誰かが私を抱き抱える

何が起きているのかわからない

冷たい風が吹きつけて身体が痛い

あまりに痛いのでようやく自分が目を閉じていることに気が付いた


「目が覚めたか!」


見知らぬ男だった

彼は私にボロ布を巻いて何処かに連れて行く




―――



古今東西

輪廻転生、生まれ変わりといった言い伝えや物語が存在する

私は、ハッキリ言ってそんなもの信用していない


「自分の名前は分かるか?」


……訂正しよう

信用していなかった


「わからない」


自分の名前が分からない

自分の過去が分からない

自分の出生が分からない

だが私の身体は『コレ』ではないことは確信できる


「お母さんやお父さん、何か覚えている名前はあるか?」


残念ながら分からない

分かる事はただ一つ

私の本来の姿はもっと大人だったはず、ということだ



―――



それから3日が経過する

その間に色々な人から話を聞く事が出来た


1つ

ここから北には巨大な山脈があり常に雪が積もっていること


2つ

今年の異常な暑さのせいかその雪が解け山の地盤が緩くなっていた事


3つ

7日前に大規模な土砂崩れが起き、山の先にある12もの村を飲み込んだこと


4つ

救助のため軍が動いたが生存者は31人しかいなかったこと

そして肝心の私は何もわからないこと


「まぁ子供には何もわからんことだろうさ」


私の寝る天幕の外で兵士達が話しをしている


「親や家族のことを覚えていないことを不憫とするか幸いとするか…」


何もわからない私にも唯一分かる事がある

私は信じていなかったはずの生まれ変わりを経験しているのだ

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