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最終章 人への旅立ち#3

寝息をたてる二人…狩り場近くの小屋で泣き疲れて眠っていたルルカはリルティーヌに発見されて屋敷に連れられるなり、同じく道端で倒れているところを見つけられたリージャの手を強く握りしめて同じベッドでまた夢の中を漂っている…

コンコン‥控えめなノックが響いた。

「ん‥どうぞー…」

ルルカとリージャが眠るベッドの側についている僕はうまく目を開けれないまま返事をした。

ほとんど音をさせず開いた扉から闇の色に近い翠の瞳がじっと部屋をのぞいている…

「クロデア、だよね…」

「そう、…」

クロデアが着ている黒のワンピースを闇の一部を引き連れて歩くようになびかせて僕の前へ現れた。

「どうしたんだよ?」

「ウィリアン様が、見当たらないの…」

「ウィリアン様は化け物をどうにかしようと頑張ってるんだ。クロデアが出来ることはないだろ…戻れば。」

「…それだけじゃ、ない…ルルカと、リージャ、二人のお、見舞いに…」

クロデアは後ろ手に握っていた紙袋を遠慮がちに見せた。僕が言葉に詰まっていると焦ったように紙袋をガサゴソいわせて中身を見せてきた。レーズン入りのクッキーだ…。

「焼いてみたの‥今みんな、台所とかに、来ない、から空いてて…」

「…そこのベッドに座って、二人を起こしてあげなよ。」

クロデアはぎこちない動作でベッドに膝を立てて乗り上げた。

…相変わらず挙動不審だけど、つい最近までウィリアン様の後ろに隠れて泣いてばかりだったことを思うと、すごく成長したんだよな…

「ルル‥カ、リージャ、起きて…」

クロデアは二人に掛けてあった毛布をそっと剥いだ。

…ルルカはよだれを垂らして安心した顔で眠りながらもリージャの手は離そうとしない…ルルカの脚に比べてリージャの手足の傷はひどかったけど、うなされながらも何とか眠っている…

「二人とも、化け物、に襲われた…?のかな‥」

「そうだと思う…」

ふと見上げるとクロデアは泣いてた。なんで…

「起きたら、これ渡して、ほしい…私、戻る…」

「せっかくなんだから起きるまでいてやれよ。ていうかこいつらは目を離したらまたどこへ行こうとするか‥僕は少し自分の用事もしたいから、部屋へ戻ってくる。それまでお願いできないか。」

「分かった…。」

クロデアが見たことないような強い視線で僕を見つめる。

クロデア…こんな顔出来るんだな。っていうか今までちゃんと目が合ったことも無かったし…

僕は極力音を出さないように部屋を出た。

今いたルルカの部屋から僕の部屋までは少し離れてるけど考えごとをしているとすぐだ。

部屋に入ると真っ直ぐ本棚へ向かった。最近色んなことがあり過ぎてろくに本を読んでなかったけど、今はとにかく本を読み返して何か、何でもいいから作戦をたてて、ウィリアン様の役に立ちたい。

僕は自分の心に宿る精霊に問い掛けながら何かが見つかる本を探して本の背表紙から背表紙へ手のひらを走らせた‥

けど、実は本を買い過ぎて本棚に入りきらなくなっていたので隙間という隙間にねじ込んでいたせいで、一冊取っただけで小さな雪崩を起こして僕の体を襲ってきた。

「ひゃっ!」

思わず悲鳴をあげて座り込んでしまった…。

いつもならこうならないように抜き取るのに、それすら忘れてた…何をしてるんだろうと落ち込んでさらに視線を落とした時、僕の膝に乗っていた一冊の本と目が合った。


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