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第二章 私の命の速さ #13

 魔女の森へ来て六日目の夕食時。その少し前に、食堂近くの廊下でひそひそ話をしていたミレとアイヴァンがまた目くばせをして互いにひひっ、と一人笑いをすると各自の席へ着きます。

「ではまた今日が無事に終わったことを喜んで頂きましょう。」

ウィリアンの言葉が終わると、皆が各々自分のペースで食事を進めていきます。

ミレの右隣に座るルルカが、まず大好きな野菜のテリーヌにフォークを入れると、カチ、と固い物にさえぎられてフォークが止まりました。

「あれ?フォークがうごかないよ~?」

「ふっふっふ~そういうときは周りをゆっくり崩してみてー」

「あいあいさー!」

ルルカはフォークをテリーヌから抜くと、勢いをつけて何度も突き刺して崩していきます。

「わーなになにー!」気づいたリージャもミレ越しに体を乗り出しています。

ぼろぼろになって元の形が無くなったテリーヌの緑と赤の色彩とは異質の色の輝き。

ルルカが手も汚れることも気にせずそれをつまみ上げると――手のひらに乗せて金色の硬貨(コイン)を腕を振って見せびらかしました。

「きんかー!これきんかだよね!!はじめてみたよー! ミレが入れてくれたの!?わー!!」

「よーく見てごらん?」私がアドバイスしたの。」

素早く席を立って、はしゃぐルルカの側に来ていたアイヴァンがミレの言葉に重ねてささやきます。

一気にしゃべるのを止めたルルカがアイヴァンを睨むと、手の中のテリーヌの油でつやつやに光る硬貨(コイン)をじっと見つめ直しました。

金色一辺倒に見えた硬貨(コイン)はよく見るとフォークで傷ついた何か所かが()げて、下地のくすんだ色が表れています。

「なーんーかーへーんだーよー…」

ルルカが歌のようにつぶやきながら爪でガリガリと(こす)ると、金色の小さく切り取られた紙が剥がれていき、銅貨に変わりました。

ルルカは銅貨をミレのほっぺたに押しつけるみたいに渡した後、

「がゔゔっ!!」

アイヴァンの腕に犬のごとく噛み付きました。

「きゃーっ痛ったー!!」

席を立ち間に入ろうとしたウィリアンをミレは片手でぐいと押し止めて、

「ルルカー私が考えたイタズラだからやめたげてー!」

もう一方の手でルルカの首の後ろ側の服を掴むとアイヴァンから引きはがします。

「痛ーい!私は料理に仕込むの手伝っただけなのに~痕残らないこれー!?ほんとにルルカって犬みたいよね!」

「ガルルル!!わたしをだましたら許さない!!」

歯をカチカチいわせるルルカのほっぺたをミレは左手で掴んでぐいっと自分へ振り向かせると、

「この紙金色だよ?珍しいでしょ?さらにっ!この裏に良いこと書いてあるんだよ!」

目の前に剥がれた折り紙がひっかかった銅貨を見せて、ルルカは紙だけをむしり取って、

「えっいいこと!?…″わ、た、しー‥?″分かんない!読んで!」

破れた折り紙をルルカに突き返されたミレはにやりと笑って、立ち上がっていたルルカを席に座らせました。

自分も床に座り直し、ルルカに肩を寄せて油の染みた紙を覗き込みます。

「″わたし!″でしょ、これは接続詞の、″の!″で″お菓子!″」

「お菓子!お菓子!!」

「″を!″」

「おーっ!!」

「″あげるよ!″」

「やったー!!今日のお菓子!?なにかなー!」

「まだ言葉はあるよー? ″一口だけ!″」

「…″がぶうっ!!″」

「ぎゃーっ!!!」

「わたしのひとくちは完ぺきだよ!はやく食べたいよ!″がぶうっっ!!″」

「私を食べないでーっ!!新しい金の折り紙もあげるから、許して!」

「金のおりがみはぼくにちょうだいー!」

「静かにしろよ!そんなことに使うために折り紙やったわけじゃないぞ!」

「えっ″オリガミ″てなぁに?」

「ナナヤ、君まで食事中に席を立たないでよ‥」

「ウィリアン様?」

ウィリアンはシルバの声に反応して顔を上げました。

ヘンリーとリルティーヌとクロデア以外はミレの周りに集ってわいわい騒いでいるのをただ眺めていたウィリアンの意識がシルバに移ります。

「…注意しないんですか?いつもならすぐに注意してるのに…」

ウィリアンはふっ、と視線を外しながら息を吐くと、腕同士を擦り合わせて、

「私も怒ってばかりだと疲れるのよ。そうだ、ミレも来たしあなたももういいお兄さんなんだから皆を大人しくさせてきなさい。」

口の両端を綺麗に上げて微笑み、シルバと目を合わせます。

逆にシルバはさっとウィリアンから視線を外し、少し頭を下げると騒ぐ輪の中心に入っていきました。

「…ねぇ、この騒ぎって市場に行った時の何か?」

リルティーヌが向かいで黙々と食べ続けるヘンリーに話しかけましたが、ヘンリーは聞こえない振りをして手を止めません。

リルティーヌは話しかけるのを諦め、首を傾げながら微笑むと、テーブルの下でヘンリーの脚を蹴飛ばしました。


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