第51話 まとめ役って大変、だな②
まず、何をするべきなのか自分なりに考えてみる。
「さっきのは失敗したから、この前の秋川さんみたいに帰りのホームルームに声掛けするのはどう?」
「それもありっちゃありだな。けど、毎回やるのめんどくさくね?」
悠も同じことを思っているのか、うんうんと首を縦に振っている。
確かに、毎回教壇の上に立っては「協力お願いします」と言うのは骨が折れる。それに、誰も来なかったときの精神ダメージが大きいため、メンタルが終わってしまう可能性もある。
「それをするくらいなら、クラスのグループで言えばいいんじゃない、かな」
悠が自信なさげに言うと、隆が悠の肩に腕を乗せて賛同した。
「おお、それはいいな! グループで言えば嫌でも目に入るし、さすが悠!」
「そ、そうかな。言ってみただけなんだけど」
「確かに、それはありだな……」
その考えには駈も納得していた。直接声を掛けるよりもタイミングを気にせず、そして履歴も残るため目に付く。
そのうえ、困ったことや手伝ってほしいことが出てきた場合にも、その時にすぐグループなら言える。毎回声を掛ける手間も省けるし、駈にとっても好都合だ。
しかし、一つだけ気がかりなことがあった。
「そのグループってあるの?」
駈が危惧していたのは、そのグループがすでにあるのかどうかだ。ないのであれば作成するために声をかけなければいけない、そして駈は招待するためにクラスメイトと友だちになる必要がある。
しかし、駈が真面目な顔をして言っているのとは反対に、二人は腑抜けた表情で駈を見ていた。
すると、隆が慌てた様子でスマホを取りだしては、何かを確認するようにスマホを凝視し始めた。
「あ、駈だけいないわ……」
「え、本当じゃん……」
隆は申し訳なさそうにグループに入っているメンバーを見せてきた。一覧にはクラスメイトの名前があり、そのトップには人数が記されている。
駈が入っていないのになぜか38人となっていたため、よく確認してみたら担任がメンバーとして入っているようだ。
なんで担任がいるのかという疑問より先に招待されていないことに疑問を抱いていた。なにより、駈は速人と友だちになっているのだから招待されていてもおかしくない。
「本当だ……グループあったんだ……」
駈は軽く心臓がキュッとなるのを感じた。
進級してから速人以外のクラスメイトとろくに会話もなければ、挨拶も交わしていない。当然といえばそうなのだが、やはり自分以外が一つのグループでまとまっていると心に来るものがある。
「まあ、とりあえず招待するか……」
隆はORコードが映った画面を見せてきた。駈はスマホを取り出して読み込むと、隆のアカウントが映されそのまま追加ボタンを押す。
この時、ついでにと悠も同じように画面を差し出してきたので追加しておいた。
「よし、招待しといたぞ」
「ありがと」
「なんて送るかは駈に任せておくわ、とりあえず俺と悠は外からダンボール運ぶの手伝ってくる」
「え、僕も……?」
「そんな嫌そうな顔すんなって。ほら、行くぞ」
隆は悠の肩をポンっと叩くと、悠はだるそうに席を立った。
省エネで過ごしたい悠と、活発というか思い付いたらすぐに行動する隆のシンメトリーな関係は上手くつりあっている。
今も悠は嫌な顔はしたけれど、隆に付いて行っている。本当に嫌がっているのならここに留まっているはずだし、隆を信頼しているのだろう。
駈はそんな二人の関係を羨ましく思いながらも、手に持っているスマホに集中するため視線を落とす。
教壇に立って声を出すよりかは幾分かマシなのだが、やはり緊張はするものだ。でも、これも実行委員の仕事だと腹をくくった駈は思い付いた文章をそのまま書いて送信した。
「よし……」
クラスの代表という大役を任されたからにはやるしかない。
駈は自分もクラスの手伝いをしようと席を立った。
グループでの声かけが効果を発揮しているのか、日に日に準備を手伝う人が増えていった。
それに乗じて駈の役割も実行委員さながらのものになり、美鈴が放課後にいないときは仕切るようになっていた。
「やるじゃない、三橋くん」
「そうかな、ありがと」
普段は人を褒めている姿を見せない美鈴からお墨付きをもらった駈は照れ臭そうに頭を掻いた。
駈がグループに送信したメッセージは単純なものだ。それこそ『手伝ってほしい』という旨を伝えて、それに了承した合図としてスタンプを送ってもらう。それに、強制参加というわけでもなく、手伝える人だけ反応してくれればいいと伝えてある。
これを学校に登校してから毎日繰り返していたら一週間で10人に満たなかった人数は倍ほどまでに膨れ上がっていった。そのおかげで、お化け屋敷を作るために必要な素材は予定よりも早く集まっている。
「さて、今日はもう終わりにしようかしら」
「え、早くない?」
「予定より早く進んでいるのだし、今日は休んでもいいんじゃないかしら」
「それもそうか……」
駈は色紙が入った袋を多目的室に置いた。
文化祭準備期間は各クラスの資材や作成物置き場として一つ教室が割り振られる。駈たちのクラスは多目的室なのだが、三年生の階にあるため少し遠い。
「それじゃ、クラスに伝えて今日は解散としましょうか」
美鈴はスマホをとり、クラスのグループにメッセージを送った。もちろん、駈にその通知は来る。
クラスのグループといえど、文化祭以外の話題は出てこない。仲が悪いとかそういうことではなく、ただ話すこともないのだろう。
駈は『了解』とだけ送り、下校するために美鈴と一緒に教室に向かおうとした瞬間。
「ん……?」
美鈴が教室に向かう傍ら、駈はグループ以外に誰かからメッセージが届いていることに気づいた。
ここで確認する必要もなかったのだが、気づいてしまった以上放っておくことができない。
送り主のトーク画面を開くと、それは結花からのメッセージで『今日ってまだ学校にいますか?』とあり、20分ほど前に送られていた。
駈は『遅れてごめん、もうすぐ帰るよ』とだけ送って、多目的室を後にした。
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