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丘の上で結わう花  作者: pan
第1章 退屈な日常が、変わる
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第17話 お疲れ様会

 夏休み初日、三橋駈(みつはし かける)は考査お疲れ様会と称された催しに参加するためにファミレスに来ていた。


「――せーの!」


 参加者である片桐速人(かたぎり はやと)神戸彩夏(かんべ さやか)は声を揃えて考査結果がまとれられている用紙を出した。


「おーい駈も出せよー、って順位一緒かよ!」


 速人に声をかけられた駈は二人が盛り上がっているところを見ているだけで、特に勝負しているわけでもないので出そうともしていなかった。


「……俺は一位取ってる二人に見せる勇気ないけど」


 駈たちが通っている高校では、考査結果が返される当日から廊下に総合点数と順位が掲示される。駈は下校する際、それが掲示されている廊下を通るので見せ合う前から知っていた。


「えーいいじゃん、見せろよー」


「……ほいよ」


 再度言ってくる速人に負けたのか、駈は渋々用紙を取り出した。


「……なんだかんだ成績良いよな」


「え、何、嫌味?」


 速人が駈が渡してきた考査結果に目を通しながら、独り言のようにぼそっと呟いた。それを聞いた駈は不服そうな表情を浮かべていた。


 駈は昔から速人以外に遊ぶ友人がいないため、本を読むか勉強するかの二択であった。なので勉強が苦手、ということはなくテストは常に平均より上で成績は悪くなかった。


「へー、すごいじゃん! てか廊下に名前出てるじゃん!」


「……まあお前らとは真反対にあるけどなー」


 掲載される順位は50位までで、今回駈は49位でギリギリ載っていた。毎回入れるわけでもないので駈は内心喜んでいたのだが、彩夏の言葉が皮肉に聞こえて不貞腐れていた。


「よし、とりあえずお疲れ様ってことで」


 速人が会話を切り上げるように手を叩き、(ねぎら)いの言葉を言った。連日速人の家に行って勉強会をしていたので、それに乗じて駈は不貞腐れていた顔を戻した。


「夏休みどこか行く?」


「おー、いいなー!」


 夏休みの話題になったところで二人は盛り上がった。それをよそに駈は持参していた本を取り出し読み始めた。


「……ちょ駈、本読むのはないだろ」


 駈のまさかの行動に呆れた表情を浮かべていた速人は大きく息をついた。その様子を見た駈は申し訳なく、手に取ったしおりを元に戻した。


「駈は夏休み予定とかないのか?」


「……あるにはあるけど」


「ほう……結花(ゆいか)ちゃん?」


 突然出てきた名前に不意を突かれ、思わず驚いてしまった。

 考査最終日に小春結花(こはる ゆいか)と会った時、駈は勢いで約束をしていた。すでに行先や日程は決まっている。


「……まあそうだよ」


 駈は今更否定したところで面白がって聞いてくるだけだと思い、正直に返事をした。それを聞いた二人は顔を見合わせ喜々とした表情をしていた。


「デートか! どこ行くんだ!?」


「ちょ、神戸さん近い!」


 彩夏は何だか嬉しそうな表情をしながら前のめりになって聞いてきた。それに対し駈は照れながら声を籠らせて答える。


「まあ行くのは遊園地だけど、デートとかそんなんじゃ……」


「「遊園地!?」」


 二人は声を揃えて驚いた。あまりにも大きい声だったのか、まわりから視線を感じた。速人と彩夏はその視線を感じ恥ずかしくなったのか縮こまっていた。


「遊園地ってもうデートだろ」


「んー行く目的が遊びに行くわけじゃないからデートではないと思う……」


 駈はあくまで行く目的はお化け屋敷なのでデートとは違うと思っていた。


「ちなみにどこの遊園地に?」


「……ここ」


 駈は結花との会話履歴にあるリンクからサイトに飛んで、二人に見せた。それを見た速人が何か気になるのか顎に手を当てていた。


「いつ行くんだ?」


「……来週の水曜日」


「……ほほーん」


 さらに聞いてくる速人にどこか怪しさを感じながらも駈は渋々答えた。


「てか聞きたいんだけど……女子とお出かけってどうしたらいい?」


 駈は気にしているのか柄にもない質問を二人に投げかけた。学校で根暗でぼっちな駈は今まで二人きりで異性と出かけたことなんてなかったのだ。


 駈は恥ずかしさで顔をうずめていたが、すぐ横から笑い声が聞こえてきた。突拍子もない言葉が飛んできて速人は大笑いしていた。


「……あー、別に普通にしてればいいんじゃねーの。てか、そこは気にするんだな」


「うちも別にいつも通りでいいと思うよ! ……あはは!」


「そ、そうか……って笑いすぎだろ!」


 二人は落ち着いたのか答えを返してきた。しかしまた笑い出し、それを見た駈は呆れた表情をしていた。


 ここでみんなが注文していた料理が届き、駈はほっと息をついた。


「……んじゃドリンク入れなおしてくるわ」


「おうよ」


 駈は二人に声をかけるとコップを持って席を立った。

 ドリンクを入れに行っている駈をよそに速人と彩夏は、未だに笑っていた。

今回から夏休み編です。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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― 新着の感想 ―
[一言] 本日は此処で失礼いたしますが、ここまで読んでて こんな日常を送ってみたかったなぁと 変な感傷に浸りました(笑) では、後日また来ます!
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