コロン…………………………
石が嵌っている金属の 爪と石の隙間に
細い竹ベラのようなものを差し込み爪の位置を変える
少しずつずらして……………
1つ目
同じく少しずつずらして……………
2つ目
同じく少しずつずらして……………
3つ…………、…
4つ目に差し掛かろうとしていたら
コロン………………………………
「は、外れたーーーーーーーーー!!!!!」
黒光りする石が 床に転がった…………
床に、そこに あるだけで なんだか禍々しくも感じる………
「ポチ様ーーー!!!!」
声をかけてみる
「ポチ様 ご無事でいらっしゃるでござるか?」
板蔵も声をかけてみている
…………………しかしながら、反応はない……
黒石を拾ってみようと手を伸ばすと
するりっ!
「あれ!?」
再度手を伸ばすも
するりっっ!!
「あれれ!??」
なんだか 石が避けている気がする………
「全く、ギル殿 しっかりするでござる
耄碌するにはまだまだ早いでござるよ!!」
板蔵が ピチピチ十代なりたての姿のおいらに耄碌とかふざけた事を言ってくる………
むしろ、石鹸ローラースケートで、引退を考えた板蔵のほうが よっぽどか耄碌しているであろう………
しかし、そんな失礼な発言に 目くじらを立てるおれではない!!
おれの心は 富士六湖の赤池 程の広さがあるのだ!!
人の身体にして それだけ広い湖のような心!!
うむ。 素晴らしい寛大な心を持っている!!
ただ、
………………………………………時々 無になるがな
心に余裕のある時ならば
なんでも許してやろうではないか!!
ふはっ!!
「じゃ、板蔵やってみなよ。」
と、心の潤いがまだある おれは 普通に言う。
「ハッハッハッ!!
そんなものお茶の子さいさい 朝飯前でござるよ!!」
板蔵が 石を見すえ上から手を伸ばす………
掴む寸前 石がするっと右側へ避けた!!?
「あれっ!?
おかしいでござるな……ハハッ!間違えたでござるよ!!今、拾うでござるよ!!」
再度 石に向かって手を伸ばす……
今度は右横から………
掴む寸前 石が左へ遠ざかる………!?
「あれっ!?
ギル殿 鼻息で飛ばしたでござるか?
全く もうすぐ石が手元に………と思って 興奮したでござるな!!ハッハッハッ!!」
おれの鼻息は どんなに遠くまで飛ばせると思っているんだ?
人には限界というものがあるのだぞ!?
その後も板蔵が手を出せば石はさらに遠くへ避け 時には 軽くジャンプしていた石………、
ムキになって走り回ったり飛びついたりして石をゲットしようとする板蔵……………
もうね、
猫じゃらしに飛びついてる猫 とか
ブラックフライデーセールで取り合うマダム とか
カンガルーのボクシングバトルとかって様子だったわ!!
石の動きを目の当たりにしても
「ギル殿の 鼻息が…」とか「ギル殿 紐か何かで操っているであろう?」とか言っていた
どれだけオレを疑っているんだ!!
板蔵 まったくもって 超常現象 信じない人なのね!?
信じるか信じないかは 板蔵次第です…………




