表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/380

第1章 89 毒に侵された村『シセル』2

「キャッ!ま、また何かあったのですかっ?!」


先程のマンドレイクの騒ぎでリーシャは大分臆病になっている。

けれどそれは無理も無い話かもしれない。

何しろ回帰前の私も『エデル』へ着くまでの旅の道中は怯えてばかりだったのだから。


「い、一体今度は何事なのでしょう…?またしてもマンドレイクが現れたのでしょうか……?」


トマスは馬車の窓から外を覗き込んでいる。


「私、馬車から降りて様子を見てくるわ。2人はここにいて頂戴」


リーシャとトマスに声を掛けると、2人は青くなって私を引き留めようとした。


「何を仰っているのですか?クラウディア様っ!外へ出たら危ないですよっ!」


「ええ、リーシャさんの言う通りです。ここは『エデル』の人達に任せて、安全が確保されてから降りた方が賢明ですよ?」


トマスは度重なる危険に見舞われ、大分度胸が据わって来たかのように感じられる。


「いいえ、大丈夫よ。ほら…その証拠に何者かと戦っている気配を感じないでしょう?」


私は耳に手を当て、外の音を聞いてみた。


「確かに……静かですね…」


「マンドレイクでは無かったのでしょうか?」


リーシャとトマスが不思議そうに私を見た。


「ええ。違うわ、恐らく‥‥」


首を振ってこたえようとしたその時――。


「クラウディア様、宜しいでしょうか?」


突然馬車の外からユダの声が聞こえ、扉が開かれた。


「どうしたの?ユダ」


「ええ。それが…この『シセル』の村人だと思うのですが、いきなり我々の前にフラフラと現れました。そして突然刃物を振りかざして襲い掛かってきたのです。何やら我々をモンスターか何かだと勘違いしているようなのですが……診て頂けますか?」


ユダの目は真剣だった。


すると猛反対したのはリーシャだった。


「ユダさんっ!本気で言ってるのですか?クラウディア様は王女様なのですよ?それなのに、そんな危険な真似をさせるおつもりですか?!大体クラウディア様はお医者さまでは無いのですよ!」


「だが、クラウディア様は自らこの村へ来ることを望まれた。我々が避けて通ろうとしたにも関わらず…。それはこの村を救う為ですよね?そしてクラウディア様はその方法をご存じでいらっしゃる。……違いますか?」


ユダは私に同意を求めて来た。


「ええ、そうよ。だからどうしても『シセル』に来たかったの」


「クラウディア様…本気ですか?」


リーシャが震えながら声を掛けてきた。


「ごめんなさい、リーシャ。貴女が心配してくれるのはすごく嬉しいわ。けど‥‥私は『レノスト』国の姫なの。この村に住む人々は大切な領民達なのよ。だから、行かないと」


「…分かりました。クラウディア様がそこまでおっしゃるなら…でも私も一緒に参ります。私はクラウディア様の専属メイドですから」


リーシャはまっすぐ私の目を見つめてくる。


「…そうね、皆の手助けがいることになると思うから…来てくれると助かるわ」


するとトマスも手を上げて来た。


「王女様。僕にも手伝わせてください。これでも僕は駆け出しの薬師ですから」


「ええ、ありがとう。リーシャ、トマス」


私は2人に頭を下げた。


「それでは参りましょう。クラウディア様」


ユダが右手を差し出してきた。

恐らく、私が馬車を降りる為に手を貸してくれているのだろう。


そこでユダの手に自分の手を置いた時、一瞬握りしめられたのは…多分気のせいだろう。


「それでは参りましょうか?クラウディア様」


「ええ」


こうして私たちは『シセル』の村人の元へ向かった――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ