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第1章 84 マンドレイク 1

「クラウディア様っ?!危険ですっ!どこへ行くつもりですかっ?!」


馬車を降りると、すぐ後ろの荷馬車に乗っていたリーシャの声が響き渡った。


「リーシャ…」


前方では兵士たちの悲鳴が響き渡っている。


「ヤコブにユダの足かせの鍵と剣を返してもらうのよっ!」


「ええっ?!な、何を仰っているのですかっ?!駄目ですよっ!ヤコブさんは先頭にいたのですよっ?!」


「だからこそ、尚更よっ!」


それだけ答えると、私はヤコブの元へ向って走った。

彼は魔物よけのお守りを持っている。ひょっとすると、マンドレイクからの襲撃は免れているかもしれない。


足場の悪い道を走り続けると、前方に大人の男性並みの巨大なマンドレイクが根を伸ばし、2人の兵士たちを巻き取っていた。


「うわああっ!!は、離せっ!」

「くそっ!こいつめっ!」


巻き取られてた兵士は根に剣を突き立てているが、全く効いていないようだ。

その側ではスヴェンが剣を振るっている。


「くたばれっ!!」


スヴェンが剣で根を切り落と落とすと、そこからボロボロとマンドレイクの身体が崩れていく。


「キェェェェェェェッ!!」


耳をつんざくような悲鳴に思わず耳を塞いだ。


ドサッ!!

ドサッ!!


スヴェンの手によって、助けられた兵士は次々と地面に叩きつけられた。

他にも近くで2体の巨大マンドレイクが暴れており、兵士たちは翻弄されている。


「そ、そんな…っ!1体だけじゃなかったのっ?!」


「とどめだっ!!」


スヴェンがマンドレイクの中心に剣を突き立てた。


「ギャアアアアアアア――ッ!!」


まるで人間の断末魔のような悲鳴を上げて崩れてゆくマンドレイク。


その様子を震えながら耳を抑えて立ち尽くしていると、スヴェンが私の姿に気付いた。


「姫さんっ?!な、何故出てきたんだよっ!!」


駆け寄ってくると、両肩を掴まれた。


「ヤコブを探しに来たのよっ!!ユダの足かせの鍵と剣を取り返すためにっ!ヤコブはどこっ?!」


すると1人の兵士が震えながら答えた。


「あ…や、ヤコブは…あ、あのマンドレイクに取り込まれて…」


「何ですってっ?!」

「何っ?!」



兵士が指さした先には2体のマンドレイクが兵士たちを相手に暴れている。


「早く助けないと大変だわっ!!」


マンドレイクは怖かったけれども、このままでは全滅してしまうかもしれない。


【聖水】の瓶を取り出し、マンドレイクに向買って駆け出そうとした時、スヴェンに腕を掴まれた。


「姫さん!どこへ行くんだよっ!!」


「マンドレイクのところよっ!【聖水】をかければかなりダメージを受けるはずよっ!」


「だったら俺がやるっ!」


スヴェンは私から【聖水】を奪うと、先程命を助けた2人の兵士に向って叫んだ。


「姫さんを頼むっ!」


「分かった!」

「任せろ!」


兵士たちは頷き、スヴェンはマンドレイクに向い、【聖水】の瓶を投げつけた。


「これでもくらえっ!!」


バリーンッ!!


硬い根の部分に当たった瓶は割れ、中から【聖水】が飛び散った。


「キェェェェェェェッ!!」


悲鳴とともにマンドレイクの身体からジュウジュウと煙が立ち、根がボロボロと崩れ落ち…中から人が現れて地面に倒れ込んだ。


その人物はヤコブだった。


「くっ!」


スヴェンは暴れるマンドレイクの根をかいくぐり、ヤコブの身体をこちらへ引きずってくる。

周囲の兵士たちは弱りきったマンドレイクの身体に火をつけようとした。


「駄目よっ!燃やせば有毒ガスが発生するわっ!」


「え?!」

「何っ!」


私の叫びに火をつけようとした兵士たちの動きが止まった。


「スヴェンッ!貴方の剣でしかマンドレイクは倒せないわっ!お願いっ!」


「わ、分かった!」


ヤコブを安全な場所まで引きずってくると、スヴェンは再びマンドレイクに向って駆けて行く。


「ヤコブッ!しっかりしてっ!」


ヤコブに駆け寄り、声を掛けた。


「う……」


見ると、ヤコブの身体がどす黒く変色している。マンドレイクの毒にやられたのだ。


「ヤコブ…!」


【聖水】の瓶を取り出し、ヤコブの口に含ませた。


「飲んでっ!飲まなければ死んでしまうわっ!」


「う……」


ヤコブの喉がゴクンゴクンとなって【聖水】を飲んでいく。

すると徐々に身体の色が元に戻っていった。


「ヤコブ、私の事がわかる?」


「は、はい……」


うっすら目を開けてヤコブは私を見た。


「このままでは皆危険なのよっ!ユダの足かせの鍵と剣はどこなの?!」


「あ……鍵は…こ、これです…。剣は馬に…」


ヤコブは震えながらポケットに手を入れて鍵を取り出した。


「お願いっ!ユダの足かせを外して剣を渡してっ!」


近くにいる兵士に鍵を渡した。


「分かりましたっ!」


兵士は鍵を受け取ると、駆け出した。それを見届けると、私は再びヤコブの様子をうかがった。


「貴方はかなり毒を受けてしまったわ。動けるようになるまでじっとしているのよ?」


そして私は立ち上がった。


「クラウディア様……?どちらへ。…‥?」


ヤコブが荒い息を吐きながら尋ねて来た。


「マンドレイクのところよ!皆を助けなければっ!」


「だ…駄目です…き、危険です‥‥」


「そんなことを言っていたら皆死んでしまうわっ!私には【聖水】があるから大丈夫よっ!」


「え…?【聖水】…?」


その時…。


「クラディア様っ!!」


拘束を解かれたユダが兵士と共にこちらに駆け寄ってくる姿が見えた――。




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