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第1章 83 襲撃

ガラガラガラガラ……


馬車は森を切り開いて作られた馬車道を音を立てて走っている。

『シセル』の村が近付いて来るにつれ、だんだん周囲の雰囲気が変わってきた。


辺りは鬱蒼と茂った木々に覆われ、太陽の光もよく届かない。


馬にまたがって先を進む『エデル』の使者達も緊張しているのか、会話をする者は誰もいない。


「一体……何でしょうか…この森、随分嫌な雰囲気が漂っていますね……先程までは鳥のさえずりや小動物たちを見かけたのに…」


流石のトマスも異変を感じているのか声が震えている。

すると今まで無言だったユダが口を開いた。


「当然だ。この辺りは『シセル』で大量発生したマンドレイクのせいで生物たちは恐れて近づかないからな」


「な、何ですって?!マ、マンドレイクッ?!まさかあの毒草ですかっ?!」


トマスは驚きの声を上げ、次に私を見た。


「王女様……ご存知でしたか……?」


「ええ……知ってたわ……だって、あの村では……」


そこまで言いかけた時、前方で悲鳴があがった。


「ウワアァァッ!!た、助けてくれっ!!」

「で、出たっ!!マンドレイクだっ!!」

「火!だっ!火を放てっ!!」


「まずいっ!!助けに行かなくてはっ!」

「行くぞっ!」


馬車の側を並走していた兵士たちが馬で駆けていく。


「うわああっ!!こ、今度は何が起きたのですか?!」


トマスが頭を抱えて叫んだ。



馬で駆けていく兵士達を見ながらユダが舌打ちした。


「チッ!!出たかっ!!やはり……あの時、処理しておけば良かったのに…っ!」


「ユダッ!!ま、まさか…マンドレイクって……」


私は声を震わせながら尋ねた。


「はい。おそらく巨大化したマンドレイクが現れたのかもしれません。前回この森を通った時、子供ほどの背丈のマンドレイクを見かけたのですが……その時は危険性は無いものとして放置してしまったのですが……」


「そ、そんな…っ!」


マンドレイクは巨大化すると意識を持つ。そして生き物を襲って生気を吸い取ると言われている、恐ろしい植物なのだ。


「姫さんっ!!」


スヴェンが馬で駆けつけてきた。


「スヴェンッ!一体何が起きているのっ?!」


「それが、いきなり茂みから人の背丈ほどもある巨大植物が現れたんだ!それで突然根を伸ばしてきて兵士たちの身体に巻き付けてきたんだよ!!」


その話にユダの顔色が変わった。


「何だとっ?!まずいっ!!マンドレイクは獲物を根で捉えて、生気を吸い取る植物なんだっ!早く助けないと死ぬまで生気を吸い取られるぞっ!!」


「何だってっ!!」


その言葉にスヴェンの顔が青ざめる。


「スヴェンッ!!貴方の剣ならマンドレイクを枯らすことが出来るはずよ!私は大丈夫だから……彼等を助けてあげてっ!」


「分かった!」


スヴェンが馬で駆けていく。



私は馬車の扉を開けて、外へ出た。


「クラウディア様っ?!どこへ行くつもりですかっ?!」


「王女様っ!出ては危険ですっ!」


ユダとトマスが青ざめた顔で呼び止める。


「ヤコブのところよっ!」


「な、何故ですかっ?!」


ユダが叫んだ。


「決まっているじゃない。貴方の足かせを外す鍵と、剣を返してもらうのよ!」


スヴェン1人ではマンドラゴラの根を絶やすことは難しい。

このままでは全員マンドラゴラに生気を吸われてしまうかもしれない!


「行っては駄目ですっ!クラウディア様っ!」

「王女様っ!」


私は2人の制止を振り切って、先頭にいるヤコブの元へ走った――。



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