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第1章 70 部外者

「尋問って…どういうことなの?!」


気づけばスヴェンに詰め寄っていた。


「それが…俺にも良く分からないんだが、あいつ等ユダのことを裏切り者だとか何とか言っていたな…」


「裏切り者…?」


ドクン


私の心臓の鼓動が大きくなった。


「裏切り者ってどういう意味ですか?」


リーシャが尋ねてきた。


「……」


一方トマスは神妙な顔つきで何やら考え込んでいる。


「わ、私…ちょっと行ってくるわ!」


「え?!姫さんっ!」

「クラウディア様!」

「王女様、やめたほうが良いのでは?」


3人の静止を振り払って、私は話し合いが行われている一軒家へと向った―。



コンコンコン


私は扉をノックするとその場で待った。


すると…。


ガチャッ


大きく扉が開け放たれて、1人の兵士が姿を見せた。その人物はライだった。


「あぁん?何だ…クラウディア様か?今大事な話し合いをしている最中なんだ。悪いが後にしてくれ」


ライはジロリと私を見下ろした。


「ユダのことで話し合いをしていると聞いたのよ。一体何の話なの?私も中に入れて話を聞かせて」


するとそこにヤコブが現れた。


「どうしたのですか?クラウディア様。何か我々に用ですか?」


「ええ、私も一緒に話し合いに混ぜて貰おうかと思って来たのよ」


ヤコブはユダの親友なのだから、きっと許してくれるだろう…そう思ったのに、彼は眉を顰めた。


「申し訳ありませんが、これは我々の問題なのです。クラウディア様は部外者なので中へ入って頂くわけには参りません。ご了承下さい」


そして頭を下げてきた。


「そんな…」


まさかヤコブに断られるとは思いもしなかった。


「ほら、だから言っただろう?話し合いの邪魔だから向こうへ行ってて下さいよ」


ライは邪険に追い払おうとする。


「やめろ、ライ。相手は王女様なんだぞ?」


ヤコブはライを注意すると、再び私の方に目を向けた。


「出発まで、どうぞクラウディア様はお休みになっていて下さい。では失礼致します」


それだけ告げられると、目の前で扉は閉められてしまった。



「ユダ…」


この様子では絶対に話し合いには混ぜてもらえることはないだろう。


「仕方ないわね…」


ため息をつくと、重い足取りでスヴェンたちの元へと戻った。



****



「お帰り、姫さん」


真っ先に声を掛けてきたのはスヴェンだった。


「クラウディア様、どうぞこちらにお掛け下さい」


スヴェンたちは倒木を椅子代わりにして座っており、リーシャが自分の隣の席に私を座らせた。


「ありがとう」


腰掛けると、すぐにスヴェンが尋ねてきた。


「姫さん、その様子だと…中に入れてもらえなかったんだろう?」


「ええ、駄目だったわ。部外者なので入れられないと言われてしまったの」


首を振るとため息を吐いた。


「それって随分な話じゃありませんか。部外者だなんて…しかもクラウディア様に失礼なことを言うなんて」


「ええ、一緒に旅をしている以上我々は仲間なのに…それを部外者だなんて…」


リーシャとトマスは悔しそうにしている。


「でも仕方がないわ…。ところでかまどを作っていたということは料理をしようと思っていたんでしょう?私が作るわ」


腕まくりをすると立ち上がった。


「私もお手伝いします」

「僕も手伝います」

「よし、それじゃ全員で姫さんを手伝おうぜ」


「ええ、それじゃお願いね」


そして皆で料理づくりを始めた―。



****



 大鍋に料理が出来上がった頃…ヤコブを先頭に『エデル』の皆が戻ってきた。


「これはいい匂いですね。まさかまた料理を用意して頂けるとは思ってもいませんでした」


ヤコブが私に声を掛けてきた。


「ええ、具沢山のスープを大鍋に作ったから皆さんでどうぞ食べて」


すると『エデル』の使者たちの間に歓声がわき…彼等は次々と鍋からスープをよそって食べ始めた。


けれど…彼等の中にユダの姿が無い。


「ねぇ、ヤコブ。ユダはどうしたの?」


近くに座っていた食事をしていたヤコブに尋ねると、彼の表情が曇った。


「…それが…実は…ユダは今監禁されているんです…」


「えっ?!」


あまりにも突然の話に私は息を呑んだ―。



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